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‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
最終章 The Toboo summoner
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最終章 第二話 怪しく、優しく

『記憶が、朧げだった。


 俺の記憶は、いつも。


 心は、ここにあらず。


 気が付けば、今日も手に血が付いている。


 振るう暴力の山は、疑わしい正義の名の下に。


 ただただ、虚しいばかりだった。


 正義を否定し、悪を根絶し。


 “裁定者”として、自分は今日も生きる。


 気まぐれに書いた、こんな紙切れも精々百年やそこらで塵になってしまうのだろう。


 それでも俺は――』


「……くだらねぇな、止めだ止めだ。もう詩人の真似なんざやめるって誓ったのに」


 深夜二時。


 草木も眠る、深夜のホテルでそれはベッドに座り筆を持ち、孤独に呟く。


 何かを書いていた、白紙を握りしめると、白紙が跡形も無く消える。


 そんな、ソロムの様子を、快は眠気に支配された頭で、重い瞼の間から密かに覗いていた。


「それ、何書いてたの?」


 その様子、紙に書いていたものを、背後から見ていた快が、眠たげに問う。


「これか? あぁ……くだらない事だ。ろくでも無い事請け合いだ。さ、寝よう快、明日からきっと忙しくなるぜ――」


 それは快の旅が始まって、すぐの事だった。



(……あの紙は、もしかして……あいつの苦悩を綴っていたのか……だとしたら)


 快は、歩道を歩く、ちはを連れた黒衣の友を見て、ふと、信長の言葉がよぎる。


(自分の存在……か、難しいよな……でも)


「快、何してんだ? 置いていくぞ」


 後ろを向いて、グリードが言うと、快はグリードの背中へ駆けだす。


「力をコントロールする為の練習に恰好の場所へ向かうぞ」


「格好の場所って?」


「あぁ、恰好の場所……ホテルとかな」


 それを聞いて、ちはは急に飛び上がる。


 狙いは、至極単純だった。


「ホテル! バイキング! 凄い! うち憧れててん! ねね、グリードさん! ケーキバイキングあるとこにしない!?」


「お、いいね」


 グリードがちはに笑んで返すと、ちはもやったと言わんばかりに眩しい笑顔で迎える。


 今でこそ二人並んでいるが――ちはのその表情は、グリードの先程までの様子を忘れているように違いなかった。


「なんで、ホテルになるの? 練習するにしても、もっと人の少なそうなところのほうが――」


 快が再び、歩みながら問いかけると、グリードは答えた。


「息抜きも兼ねて、な」


 ウインクして、言う。


 快は、その様子を前に胸を撫でおろした。


 そして数歩遅れていた歩みをグリードへ合わせるように歩く。


 快は、白昼に切り替わった太陽を背に浴びながら、友と共に――進む。


 無心、無言で進んでいった先は、都会に近しい場所。


(都会、ホテル……か)


 嫌な記憶達が蘇るが、それでも快は、摩天楼の中へ入って行く。


 ビルとビル、見渡す限りの発展した建物を前にちはが目を輝かせるほどに、快の顔の影は次第に濃くなっていた。


「色々、あったもんな。この町、そして、ホテルには」


 グリードの言葉に、ただ快は頷く。


 その時だった。


「だーかーら! うちはやってねぇって! 冤罪もいいとこだろうが! ぶっ飛ばすぞ!」


 聞き馴染みのある、中性的なハスキー声が、聞こえてきたのは。

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