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‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
双眸に映る、黎明と宵闇
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第三十二話 少年の叫び

いよいよ、物語も終盤に差し迫ってまいりました。

一度、振り返ってみるのもいいかもしれません。

 抱擁を交わしあう、人外二体を前に、快は微笑んでいた。


「良かった、ユンガさんも、キマイラさんも――家族に会えて」


 その台詞にあるのは、安堵の吐息。


「にしてもこれから、どうするおつもりですか? ユンガ様も、キマイラ様も」


 アムドゥシアスが二体に話しかけると、ユンガは憎々し気に語る。


 拳に、稲妻を纏わせて。


「決まっているだろう、後はジェネルズ――奴を葬る」


 キマイラも、それに応えて唸った。


「ジェネルズ………そうか、奴はジェネルズと言ったか、忌々しい………」


 快は、キマイラに近づく。


「あの施設に捕らえられていたみたいですが、何故、捕まっていたのですか?」


 キマイラは、目を丸くしながら答える。


「? あ、あぁ……ジェネルズは、我を滅ぼし、全種族の進化への布石とすると言っていたな……それは無謀として終えたわけだが」


 敗北を喫したという告白にも関わらず、キマイラの笑みは不敵なものであった。


 その笑みに対して、キマイラの隣でユンガは憂いに顔を曇らせる。


「キマイラ、あまり無茶しな……するな」


 咳払いは、でかかった言葉を遮った。


「何、お前を残して我は死なん。だが――ふと気になったことがある」


 キマイラは、怪訝な顔を浮かべ、快の顎を撫でる。


 快は、ただ伸ばされた手に触れていた。


「お前、古代魔界語が堪能ではないか。どこで習った? 今どき学ぶとは考え辛いが」


 突然の質問。


 その問いは、快にとってまるで理解不能だった。


 しかし、その“答え”は――すぐに知る事となる。


「何いってるんですか、僕は普通に――」


「快、さっきから、こいつらと話せてるのか?」


 再び起こった頭痛と、棕の声によって。


「いたっ………そうだけど?」


 片頭痛にも似た感覚は、先天鏡の役割を快に告げていた。


(なるほど、自動で言葉が双方の使った言葉に翻訳されるのか)


 先天鏡の機能に、驚いていると、快は周りを見渡す。


 ある影が、いないことに気付いて。


「グリードが、またいなくなってる………!?」


「まじかよ! あいつほんとどこほっつきあるいてんだ!?」


 棕と快が周りを見ていた時。


 遠方から、爆発音が鳴り響いた。


 爆発音の方向は、森の正面奥――街がある方向。


 キマイラとユンガは同時に身構えると、やがて、きのこ雲が上空に浮かび上がった。


「まさか、ジェネルズ………!? だとしたらグリードが向かったのは!」


 ユンガが言うと、棕は頷く。


「ぐずついてる場合じゃあないっしょ、行くよ!」


 各自が正面を突っ切り走ると、快は自身の指輪を覗きだした。


 その宝石に映るのは、自身の――変わり果てた姿。


 と、同時に、氷の戦友(アイネス)の姿が重なる。


 倒すべき、仇敵の――非道なる所業の数々も。


「アイネス、君の力が僕を生かしてくれている。氷は、自分が溶けるのを許さない………君だってそうだったろう」


 快が、呟きと共に宝石を取り換えようとした瞬間。


 ダーカーズデビルノコンは、風のジェダイトと炎のロードナイトを吸い込んでいく。


 すると、快の身は一瞬、氷の膜に包まれていった。


 幻覚かと思わせる事象を目の当たりにし、快は驚きの声をあげる。


 が、声を上げる間もなく、次なる映像が飛び込んできた。


「うあっ………!?」


 その映像は、かつて――ダーカーズデビルノコンの鎧に包まれた時と同じものだった。


 全身が焼け焦げる程の黒き灼熱が、自分の身を焦がし。


 混沌という言葉を具現化したかのような、光よりも鮮明に、闇より暗い“あり得るはずの無い”風景が広がる。


(――またこの感覚!! だけど――――僕は、生きなければならない理由がある! 倒すべき敵に、届きそうなところに居るんだ!)


 歯を食いしばり、形容し難き重圧を前に、快は抗った。


 足を震わせ、腕を振るわせ、精神(こころ)を――奮わせて。


(僕は、絶対に生き延びるんだッ!!)


 少年の、決死の叫び。


 それは、苦痛を与え続けていた印と灼熱を、皮膚と共に溶かし、指輪の宝石たちが融合を果たし――。


 一つの、荘厳な鎧の形へと変わって行った。


 隙間から蒸気を発し、青緑の表面を黒炎と白炎に燃やす――それは、神話に語られる英雄神すら稚拙の極みとさせる造形をし。


 その手に握られたのは、双剣の片割れ――髑髏の剣。


 力を得た、生を渇望した少年は叫んだ。


 あがき、もがいて。


 もはや、彼を止める者は――この先に待つ“討つべき者”しか居らず。


 神の如き鎧の、否、神すら超えた鎧は、今決着を付けんとしていた――。



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