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‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
双眸に映る、黎明と宵闇
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第三十一話 森の中のwedding

  鬱蒼と生い茂る森林。


 獣道と形容すべき、荒々しく風に削られた、その地面に一行は座っていた。


「意外と、うまくまけたな」


 棕は、たった一つの目を隣にいるアムドゥシアスに向ける。


 対してアムドゥシアスは、両手を地面に着け、目の前のキマイラを心配そうに見つめていた。


「ですが、キマイラ様が大変弱っています」


 アムドゥシアスが言うと――ユンガがキマイラの頭を擦りながら、アムドゥシアスに声をかける。


「アムドゥシアス、まず安全を確保しなければならない。確かお前の能力は植物の生成だったか。僕らの姿が隠れて、かつ違和感のない大きさの茂みを作ってくれ」


 ユンガの要望に頷きで返すと、体勢をそのままにアムドゥシアスは両手に強く念じ始めた。


(この能力は、ワタクシのみに備わった能力ではありますが……我々の姿があらゆる方面から隠れられる大きさとなると………)


 アムドゥシアスは周囲を見渡すと、唾を飲み干し、周囲に茂みを発生させる。


 範囲にして、半径約三十メートル、茂みと共に生成させた樹木の高さは約三メートルにもわたるものだった。


「これで、いかがでしょうかユンガ様」


 額に汗を滴らせ、アムドゥシアスが訊ねるとユンガは会釈した。


「ありがとう、でも問題は――」


あんたの奥さん(キマイラ)、だよな」


 木に寄りかかり、遠くから見ていたグリードはユンガに話しかける。


 ユンガはそれを聞いて、顔をしかめた。


 その瞳は、周りの仲間たちに、今までにない儚げな少年の面影を映していた。


 快は、一連の会話を聞き、目にしてキマイラの元へ恐る恐る立ち寄る。


 唇を嚙み締め、義足を金属の音に震わせて。


(もしかして、グリードを救ったあの剣の力なら……!)


 快は、自分の手に握られた剣を見る。


 太陽を思わせる刻印の入った、剣。


 その剣を、横たわるキマイラに剣先を向けると、神々しい光がキマイラに放たれていった。


「快! 何をするつもりだっ!! 眩しっ!」


 快以外の全員は剣から放たれる光を前に目を塞いでいると、光は一瞬で剣の中へと戻るように吸い込まれる。


 光を浴びたキマイラの腹は、段々と息が整っていったことを報せた。


 やがて、キマイラの左右に、違う色を宿した瞳は開眼していく。


 ユンガは、それを見て快を振り払い、第一声を上げる前にキマイラに抱き着いた。


「あだっ! ユンガさ………」


「キマイラ!!」


 キマイラは、反射的に人型の姿を取り、臨戦態勢に入ろうとする。


 が、それはすぐに解かれた。


 懐かしく、求めていた温もりと匂いが――自らの身を包んでいる事に気付いて。


「………ユンガ、ユンガ…………?」


 お互いの顔を、確かめ合うように顔を擦る。


 と、同時に互いの頬には、雫が零れだしていく。


「……全く、お前は泣き虫よな」


「キマイラが言えたことじゃないだろ、今は」


 会話を聞いていた、快とアムドゥシアスは無言で微笑む。


 二体の再開を、祝福するかのように。

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