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‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
双眸に映る、黎明と宵闇
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第二十六話 力

 血に染められた、前足の主。


 この世の者ならざる姿をした獣の瞳は、正面を見据えていた。


 獣が吠えると、前足で床を蹴り突進する。


 正面へ向かう、その眼に理性等無い様子だった。


 腹を抑え、倒れた麓を抱えつつ快は獣を睨む。


 部屋の蛍光灯に照らされた、先天鏡を輝かせて。


「………何があったかは分からないけど、もしこれ以上人を傷つけるなら僕は許さないぞ」


 快が獣に言うと、快の隣にいる棕が快の眼前に手を伸ばす。


「待て、快! …………ええい仕方ない! アムドゥシアス!!」


「力を使いますか!」


 棕はアムドゥシアスを召喚し、アムドゥシアスをギターへと変形させた。


 すぐにギターの弦を弾くと、音色によって獣は悶えだす。


 快は、獣の怯んだ隙を見て麓の体を少しずつ引きずり、部屋から廊下へと移動させていった。


(こんな時、指輪の鎧が使えたら………!)


 指輪の宝石を見つめ――快は、麓を廊下に寝かせると獣の元へと走る。


「棕!」


 ギターを鳴らし続ける棕に、快が叫ぶと一瞬快の方を向いた。


「ここはうちが食い止めるから、他のFencer隊員を呼ぶんだ!」


 棕が答えると、快は首を横に振り、棕の隣にまで近づいた。


「その役目は僕が引き受ける。いや、ここで止める! 棕は麓さんを運んで!」


 更に獣に向かって、快が接近すると、棕は後退する。


「ちっ………だぁもう死ぬなよ! またぼろぼろになったら、承知しねぇからな!」


「お互い様だ!」


 棕は少しずつ弦を弾きならすのを止めながら、廊下へと走り去っていく。


 その様を見届けた快は、獣へ拳を握り、指輪を向けた。


(どんな奴だか、まずは分析だ)


 しばらくすると、獣の脅威度を指輪の光は示す。


(物理力 A二 肉体 A三 瞬発力A 魔力 A 知恵 B二 知識 D 総合脅威度 A三………つまり、八岐大蛇以上ってこと?!)


 驚異的な能力値を前に、快は一瞬の戦慄を覚えた。


 しかし、無我夢中で獣が豆腐の如く周囲の壁や扉を破壊していく様を見て、快は歯を食いしばる。


「キマイラ! お前が魔王の器なのかは知らないけど、これ以上暴れるなら僕は容赦しないぞ!」


 快の声に気付いた様子で、獣は快に向かって咆哮を上げた。


 その声は、どこかうめき声にも似ていて――快に何かを伝えんとするかのようだった。


「ギシャアアアアア!!」


 獣が、快に向かって躍りかかる。


 その刹那、快は指輪を握りしめ強く念じた――。


 念じた瞬間、快の体を赤黒い鎧が包み込む。


 鎧が全身を覆いつくすと、快の手は獣の頭を鷲掴みにする。


 大きく振りかぶり、爪で引き裂こうとするが、接触した鎧の表面は火花を散らし爪を弾いた。


 獣は頭を掴まれた状態で、口を開いて炎を繰り出す。


 炎は、粉々に砕かれ、あるいは真っ二つに割られた台とフラスコごと、快の体を包んでいった。


 台とその巻き添えとなった隣の部屋に繋がる壁すら溶かすが――快の鎧は、全く焦げてすらおらず。


「そんな、ものか」


 目を出す部分が発光し、快のくぐもった声が漏れ出ると、快は獣の頭を床に叩きつけた。


 獣の頭は床にめりこみ、床の破片が周囲に散らばって行く。


 そして、床の先の地面さえも割れ軽い地響きをたてる。


 握りしめられ、叩きつけられた獣の頭からは指が食い込み血が流れ出ていた。


 その一発によって、獣の瞳は白目を向き、一切の反応を示さなくなる。


 気絶したのだ。


 獣が気絶したかに思えると、その獣は姿を――人型へと変化させていった。


 その姿は、茶色の外套を身に纏った、美女の姿。


 快が頭から手を離し、しばらくするとその獣だったものは動き出した。


「$$………uit"」


 聞きなれない言葉を漏らし、獣だったものが立ちあがる。


 獣だったものが立ちあがると、快は鎧を解除し、近づいた。


「さっきは、ごめんなさい。大丈夫……………?」


 快が手を伸ばす。


 すると、獣だったものは、笑顔を浮かべて頭を撫でた。


(赤紫色と青色の眼に、ライオンの耳………この身長、百七十くらいあるんじゃ?)


 獣だったものが、口を開こうとする。


 その瞬間、快に先天鏡をはめ込んだ眼窩から痛みが迸った。


 電撃のような痛みが迸った後、獣だったものが語りだしたのが分かる。


「――助けてくれたこと、感謝しようぞ、人間の子よ」


 開いた口から放たれた言葉は、先程まで話していた言葉とは、まるで違うもの。


 困惑していると、沢山の足音が近づいてきたのがわかった。


 後ろを向くと、武装したFencer隊員を引き連れた棕の姿があった。


「快! 怪獣を………ってあれ? 怪獣は?」


 棕が周りを見渡すが、棕の先程まで見ていた獣の姿は無く、代わりにあったのは長身の、美女の姿だった。


(わっ………すっごいナイスバディ、腹筋も割れてて………)


 棕は、その美女の姿に見とれる。


 瞬時に、我に返りふと棕が周りを見てみると――棕の周りのFencer隊員は全員、銃を構えて居た。


「総員、構え!!」


 銃口を向けた先は、快の隣の美女。


「やはり、そう来るか!!」


 快の服の裾を咥えると、快の体を壁へ放り投げる。


 壁へ軽く叩きつけられると、美女は再び獣の姿となってFencer隊員に襲い掛かった。


「撃てェ!!」


 Fencer隊員が発砲の指示を出すと同時に銃が放たれる。


 しかし、時すでに遅く――Fencer隊員の体は引き裂かれていった。


 叫び声は、身が引き裂かれた後に廊下中に響く。


 数刻の後、銃声が、快の部屋の居る外の廊下を、黒く染めていった。


「待て! 僕が相手だ!」


 再び、快は指輪に念じて獣の後を追いかけていく。


 禁忌生物研究部室の奥に、閉じ込められていた獣の正体を知る事となるのは――戦禍の灯の中に、隠された影を知ると同時であることは、快の知る由も無かった。


 ただ一人、その奥で、ひび割れた注射器を忌々し気に握る姿を除いて。

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