浦なんとか太郎
昔々、あるところに浦…………うら…………ええっと…………浦なんとか太郎というものがおりました。
あるとき、浦なんとか太郎は、浜辺で子どもたちにいじめられている…………あの…………大きな甲羅があって……浜まで産卵にやってくる…………あれを見つけました。
浦なんとか太郎があれを助けると、あれはお礼に…………その…………海の底にある……豪華できらびやかな…………あそこにご招待しますと言いました。
浦なんとか太郎は、あれに連れられてあそこへ辿り着くと……美しい姫と家来たちに手厚く歓迎され……おいしい料理とすばらしい余興を、来る日も来る日も思う存分楽しみました。
そして数十年ぶりに故郷へ帰ってきた浦なんとか太郎は…………お土産にもらった箱を開けると……中から白い煙が出てきて…………それから…………。
…………ああ、そうか…………わしは…………わしが、浦なんとか太郎じゃったのか……はは……はははは…………。
~数分前~
約40年振りの再会だったが、わしは一目見て憎き浦島だと分かった。なぜなら、老いぼれてよぼよぼになったわしと違って、奴はあのときから見た目が全く変わっておらんかったからだ。
あの日、わしは一部始終を目撃した。偽善者のあいつに向かって、信じられんことに海亀が語りかけたのだ。どうして、たかが亀を一匹助けたぐらいで、奴だけが竜宮城に招待されるんだ。
当たり前だが、わしの話を誰も信じようとしなかった。嘘つき呼ばわりされるだけでなく、危うく誘拐犯の疑いまで掛けられ捕まるところだった。わしは奴のせいで人生を無茶苦茶にされた。
一方で、奴は竜宮城で約半世紀もの間、散々愉快な思いをしたうえに、若返りの薬でも貰ったのだろう。ああ、どこまでも不公平で残酷な世の中だ。だが神は、わしのことを見捨ててなどいなかった。
わしに目もくれず寂れた村の様子を見渡した奴は、呆けたようにその場にへたりこんだ。そのとき、奴の傍にたいそう立派な手箱が無造作に転がっているのを見つけた。これこそ、天から不憫なわしへの贈り物に違いない。
竜宮城の土産なら、さぞかし高価で貴重な宝物だろう。気づかれぬよう、そっと箱を奪い……いや、譲り受けたわしは自宅に持ち帰った。待ち受ける幸せを前に、堪え切れぬ笑みを浮かべつつ、震える手でゆっくり蓋を開けると…………。




