プロローグ
新作です!あとがきスタートではないです。
「こんにちは!私は天使です!」
…この人は中二病の罹患者かな?
ふわふわとした質感の、虹色に輝く雲が、果てしなく広がる世界。
そこには、私と、なんか地味に発光してるっぽい、男性と思われる中二病の自称天使(仮)二人だけ。
ここがどこかもわからない状況下で、中二病の自称天使(仮)は、勝手に言葉を繋げる。
「いいえ!正真正銘の天使ですよ!」
疲れているのかな?この中二病の自称天使(仮)の背中に羽が見える。頭の上には金色の輪が浮いている気がする。ついでに心が読まれている気がする。
そんな脳内が?で埋め尽くされた私を他所に、その中二病の自称天使(仮)は、またまた勝手に言葉を繋げる。
「幻覚症状でもないです!」
「じゃあ何なんですか?」
憮然として問い返せば、異様に明るい中二病の自称天使(仮)は、嬉々として、通常世界であれば頭が沸いてしまった人のような答えを返した。
「ここは死後の世界。風宮美琴さん。貴女は残念ながら、ルールを守れる酔っ払いが運転していた時速五十キロのホ○ダの軽自動車に、考え事をしていたという自業自得で轢かれてしまい、一分二十四秒前に脳死が確認済みです。付け足すならば、享年十七歳と二ヶ月十日五十二分でしたね。」
「いや、そんな詳細な説明求めてないから。あと、そこまで長い文章話すときは、結論から先に喋って下さい。」
「わかりました!では、結論からいきますね。貴女は、神様の気まぐれで転生することになりました!」
「はい?」
言っていることの意味がわからない。そして、神様の気まぐれとはこれ如何に。
神様が気まぐれって絶対アカンやつじゃん!
「転生先は、貴女が現在進行形でハマっている乙女ゲーム、‘‘庶出の薔薇に口づけを’’です。転生先でもお元気で!」
今までの流れでいくと、おそらく私の脳内に異常発生している?に気づいているはずの中二病の自称天使(仮)は、それだけ言っておいて更なる?で脳が飽和状態になった私をスルーし、いつの間にか目の前に垂れ下がっていた紐を引いた。
そのせいで、幸か不幸か我に返った。
だが、もう遅かった。
「待って下さい、これに関しては詳細な説明を求め、ぎゃああああああーーー!!!」
言いかけた言葉も届かず、成すすべもなく、私は落とされた。どこに落ちるんだ。
まさか不思議の国ということはあるまい。
私の名前はアリスではない。
となると、転生先の世界か?誰かの胎内か?
後者だったら大分生々しいな。
まあ、つまるところは、さっきの紐は落とし穴を開けるものだったわけだ。
今さら気付いたところでどうなるわけでもないが。
「お達者でー!」
やたら爽やかな顔で、私を見下ろすその中二病の自称天使(仮)
一方的に死後の世界に呼び出しといて、一方的に落とすって何よーーー!?
そんな思いと一緒に。私は、転生者恒例のチートイベントである、転生するキャラの事前説明もなく、転生先へと物理的に下って行った。