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シフォンケーキの向こう側  作者: 甘井美環
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第9章 オホーツク

もう少し彼と行動を共にしたかった私は、

思い切って打ち明けた。


(もう少し一緒にいたい…)



それは自分自身の心の中で呟いた。




「旅は人生と同じ、立ち止まってはダメ」

「常に前へ歩いていこう」

彼が最後に残した言葉だった。






彼と別れた私は、

予定通りのコースである海沿いを目指し北上した。


羅臼の町に着いたのはお昼をちょうどまわった頃だった。


日差しが強くなり、

日除けに使っていた薄手のジャンバーを腰に巻きつけ、

上半身はTシャツ一枚になった。



涼しい…



最初は気にしていた日焼けも、

今ではどうでも良くなってきた。


Tシャツの袖を肩まで捲り上げ

ノースリーブのようにした。


真っ白な肌があらわになった。


真っ赤なagvのヘルメットが目立つのか、

私のいで立ちがおかしいのか、

すれ違う車に冷やかされる。



ライダー達は相変わらずみんなサインを送ってくる。




  対向車線の車がパッシング?



ふと、気になった。



今度はバイクがパッシングだ。


「なんだろう?」



またトラックも…

運転手さんが何やら後ろを指していた。



ようやく理解できたのは

遙か先に見えてきた赤色燈だ。



検問かネズミ取り?

あーあ、

いずれにしてもうるさく質問されるに違いない。


スピードを落としメーターの針を30km/hに合わせた

法廷速度で走るのはかなりのカメ足だった。


それでもこんなところで捕まるわけにはいかないので仕方がない。




だんだんとパトカーがはっきり見えてきた。


取り締まりじゃない?



 …事故?



路肩に仰向けになった男性がいる。


側には変形した自転車だ。



さっき別れた彼のと同じ色の自転車?


まさか? 鳥肌が立った。



こんなところにいるはずはない…


 人違いだ。

  


倒れている男性を確認するようにゆっくりと横を通り過ぎた。


気づくと

速度計の針は10km/hを指していた。




ふーっ。



汗が引いていくのが分かった。


違う。


良かった。



また彼に会いたくなった。



アクセルを徐々に開いていくと、

ミラーに映る赤色燈がだんだん小さなっていた。





日差しは暖かいのに、

オホーツクの海は夏でもなぜか冷たい感じがする。

羅臼の町は忙しそうだが、

旅行者が立ち寄ることもあまりないような寂しげな漁港だ。



私はその町にバイク停めることなく知床へ向かった。


雄大で人を寄せつけないと言われる

世界遺産に私は圧倒されていた。



知床峠は何の遮蔽物もなく、ただただ長いカーブと傾斜が続いた山道だ。


摩周の坂とは違い、

周囲や次のカーブが見渡せるが、

とにかく暑い。



「あーぁ」

「これで肩は日焼けでボロボロになっちゃうなぁ」



峠の付近は沢山の人が記念写真を撮り合っていた。


ご多分に漏れず、

私も碑の前で撮ろうとしたときは

何故か誰も居なくなってしまった。


仕方がないので三脚を立て、セルフタイマーをセットした。

この10秒間だけは人に見られたくない・・



霧多布岬で以来の自分撮り。


ポーズをとるのは意外とが恥ずかしい。


髪はぐちゃぐちゃだし、

少しお化粧をした方が良かったかなぁと

あとで後悔した。



峠を越えると、後は下り坂が連続する。


ブレーキばかり掛けていると最悪な結果になる。

エンジンブレーキを使って、

まめにシフトダウン。


北海道に来てから、だいぶ運転が旨くなったような気がする。


スモークのシールドを開けると思いっきり風が頬にあたるのは


 気持ちイー


この感触はバイクの醍醐味だ。



また数台の大型バイクに抜かれていく。


















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