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シフォンケーキの向こう側  作者: 甘井美環
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第7章 再会

開陽台はライダーで賑わっていた。


バイクを見る者、ナンパをする者、しきりに写真を撮る者。

私は、どのカテゴリーにも属さない。

いわば、外れ者かもしれない。


そう思っていても女の子。

必ず声を掛けられる。


「彼女〜ひとり?」

「ボク達と走らない?」

(めんどくさいのが来たよ〜〜)



「いえ、結構です」

きっぱりと断ると、


「なんでーせっかく誘ってやったのによー」

戻ってゆく二人の方から、そんな声が聞こえてきた。


(私は、恋いをさがしに来たの。ナンパなんて恋じゃない)

そう思いたかった。




開陽台は、360度地平線で、

まさに地球が丸く見える丘だった。



ここには、“ぬし”と呼ばれる人がいて

その時期に、一番長く滞在している人を指すらしい。

現在の主さんは、滞在約1ヶ月。


(よくまあ、同じところにそんな長くいられるなぁ)


主に話しかけられた。


「そこの彼女、一人旅かい?」


「はい、そうです。」

「スゴイですね、一ヶ月も」



「私はここが気に入って長居してます。」

そう主は続けた。


「旅とは、安住の地を探すもの」

「そして人は、安住の地とともに、そのパートナーをも捜すもの」

「私はここへ来て、色々なものを得ました。」


「さて、あなたはここで何が見えますか?」


「風の向くまま、気の向くまま」

「さあ、走りなさい!!」


そう言って、主の方は私を送り出してくれた。

なんだかよく解らなかったけど、

とにかく走れ!ってことかな?


そうだ!この道を西下って

摩周湖に向かってみよう!



今度もまた、進路を変えて走り出した。


走り出せばきっと何かが見えてくるんだ!

あの、自転車のイケメンお兄さんが言っていた。

霧の摩周湖を絶対見てやるぞ!


“晩婚”なんて怖くない!


243号を西に向かうと摩周湖を抱えるカムイヌプリが見えてきて、

とうとう弟子屈の町に入った。

久々の町らしい町だ。


今度の宿は川湯温泉だ。


温泉に入ることが何より好きな私は

この日を心待ちにしていた。


今日はここに泊まって、

明日の朝早くに摩周に上ろうと決めていた。



久々の温泉はとっても気持ちよかった。

温泉の効能はリウマチ・糖尿病・皮フ病に効くらしいが

どれも私には関係ない。


ただ、気持ちよかったのでそれはそれでokだ。


温泉を十分に堪能した私は、

髪の毛を拭きながら宿の外を歩いて公衆電話を探していた。

すると、

暗い中、自転車を磨いている男性のシルエットが目に留まった。


「ま、まさかね?」

そーっと近づいてみた。


「よく見えないなぁ」

妙にドキドキする。



「あれ?? 源チャリのおねえちゃんじゃない?」


(あれ?先に見つかった!?)


「そ、そうです。やっぱりー こんばんは。」

「もうここまで来てらしたんですか?」


「ああ、浜中から真っ直ぐ摩周湖めざしてきたからね」


「君は、どこか寄ってきたの?」



これまで走った事をとめどもなく話した。

彼は、黙って聞いてくれた。



「自転車って速いんですね〜」

「明日は摩周湖へ上るんですか?」


「ああ、でも一緒には無理だよ。ハハハ」

「源チャリとはいえ、エンジン付いているのには敵わないよ。」


(笑った顔もすごく素敵だった)





「じゃあ、私お部屋に入りますね」


「ああ、オレももう入ろうかな」


「はい!」


一緒に談話室まで戻って、しばらく話し込んでしまった。

彼は大学4年生で、医学生らしいことを言っていた。



明日のことを考えて、お互い名残惜しかったが

それぞれの部屋に戻ることにした。



その夜、私は彼のことを考えていた。

(これって、出会いかなぁ?)


私は、いつの間にか夢の中に入っていた…





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