第21話 お互いの富良野
このあと私は彼と一緒に走ることを決めて富良野へ向かった。
もちろん、みゆきさんと会えることを期待してだが、
まさかそんな事が起こるなんて夢にも思わなかった。
「何で富良野に拘るの?」彼が聞く。
「友達が数日前向かったので、また会えるかと思って」
「あっ、女の子だけどね」
「別に構わないよ。」
「いずみならこの旅でモテモテだろうから、
男友達の一人や二人いてあたりまえだろ?」
彼はやきもちを焼かないどころか、余裕すら感じられる。
というか、大人なのだ。
「ま、オレが先に自慢しちゃうけどな」
こどもだった。。
「私も友達に紹介したいなぁ」
実は、みゆきさんに会って自慢したかったのだ。
「紹介してくれるの!?」
「彼氏としてか?」
彼が乗り出してきた。
「うーん。どーしょっかなぁー」
私はものすごく嬉しいくせに、もったいぶって見せた。
「誠さんは周遊プラン変更して良かったの?」
「あぁ、オレは特別予定はないんだ」
「ただ…」
言葉を濁した。
「ただ?」
「いや、いいんだ」
彼は何かを打ち消そうとした。
「なによー、途中でやめたら気になるじゃない」
「そうだね。」
「いずみには隠し事ナシだよな、やっぱり」
そう言って彼の事情を話してくれた。
「うん。ありがとっ」
「実は、いずみに会ってからというもの、不思議と予定のコースがピッタリ同じなんだ」
「あのバンガローで泊まると聞いてい以来、少しビックリしている」
「豊富からいずみは南下していくものだと別行動を覚悟していたのに、
急にいずみの気が変わって」
「いや、それはそれで嬉しかったし、願ったり叶ったりだと思ったよ」
「しかし、その行き先が、オレの予定コースの富良野だもん。そりゃ驚いたさ」
「運命感じた?」
「確かに私のプランに富良野は、行けたら行く程度だったけど、
なんとなく行ってみたくなってあなたに頼んだの」
「そしたらいいよって言ってくれたから…」
「いいって言うわけだね、最初から予定だったんなら…」
「ちょっと残念だな〜」
「おいおい、富良野じゃなくても予定がなくても一緒に行ったぜ」
彼が慌てて弁解した。
「ホント〜〜??」
私はちょっといたずらな表情を見せた。
「いずみ、ラベンダーは一月前に終わってるからあまり期待しない方が良いぞ」
「でも、富良野は感動するよ、きっと」
「誠さん行ったことあるんだ?」
私は誰と?女の人?と聞きたかったが、その時は我慢した。
「あぁ、少し前にね」
このとき、彼の表情が曇った。
(嫉妬しちゃダメ、人にはそれそれ過去がある…)
自分にそう言い聞かせていた。
以前にも、この悪い癖が原因で終わったことがあった。
そういったしがらみから開放されるためにも、この旅の意味があった。
「ゴメン。暗くなっちゃったね」
「ところで、友達って女の子でしょ?可愛いの?」
「だったらな〜に?」
また嫉妬してしまった。
「いずみ〜そんな怖い顔するなよ〜」
「わりぃ、わりぃ、もう聞かないよ」
「そうでしょ!」
「もー会わせるの止めよっかなー」
「私より美人で、モデルさんみたいって聞いたら…」
ニコニコしながら彼が私の話を聞いている。
「もーー、やっぱり期待してるでしょ〜」
「ちがうよ!いずみの喋ってる顔見て」
「満足してるの!」
「誰も、この笑顔は出せないよ!」
「ホント?」
「信じちゃうからね!」
「ハイ、ハイ」
「またこども扱いだ・・・」