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シフォンケーキの向こう側  作者: 甘井美環
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第2話 出会い

釧路までは約30時間。

気が遠くなるほどの距離だ。


ベッドメイクを終えると、時計の針は既に12時を回っていた。


(優雅だなぁ…)


こんなにも時間を気にしなくていいなんて、人生で最初で最後だと思った。


ガイドブックを見ながらいつしか眠りについていた。


どれくらい寝ただろう、

(誰かが私を呼んでいる?)


(いや、そんなことはない。)


一人旅で知り合いなんか居ないんだから…


「GNの彼女!起きろって!」


(GN?誰?私の愛車を呼んでいるのは?)


はっ!


その声に聞き覚えがあり飛び起きた。


「ライダースーツのVのお姉さん!?」


「あー?なによ、そのVのお姉さんって?」


眠い目をこすりながら

「す、スミマセン。」

「な、なんですか?まだ早いと思うんですけど?」


「朝日がキレイだから見せてやろうと思ってさ」


「あんたしっかりカーテン閉めてるからすぐに判ったけどね。」


「早く支度しな!、デッキに行くよ!」


言われるがままパーカーを羽織ってデッキへ出ると

太平洋から昇る日が、まだ眩しさもなく絶妙な色を醸し出していた。


「わーっ綺麗!」


「この船に乗ったらチャンスは一度キリだからね。感謝しなよ」

そういって彼女は笑った。


「次の朝日は陸の上だから、ちゃんと見ておきな」


「ありがとうございます」


「かたいね〜」


「え?」


「ライダー同士なんだからカタい挨拶はナシナシ!」


「は、はい!!」


「いい返事だ、あんた名前は?」


「いずみ。山川いずみです。」


「いずみちゃんか、可愛い名前だね。」


「若く見えるけどいくつ?」


「19です。」


「わかっ!」


「ライダースーツのVのお姉さんはおいくつなんですか?」


「あたし?年なんか聞くなよ」

「それから、その呼び方やめてくれる?」

「なんか変だよ。」


「ずるーい、私のはシッカリ聞いたくせに」


「名前くらい教えて下さいよ」



「熊乃美雪、みゆきでいいよ」



「年上ですよね?呼び捨てなんか出来ませんよ」


「じゃぁ、みゆき姉さんって呼ばせて下さいね」


「勝手にしなよ」

「それから、あたしの愛車はVじゃなくてヤマハのVmaxね」


結局、年は教えてくれなかった。




「いずみは何で一人旅なんか来たんだ?」




私が自動二輪の免許取得に反対されたこと、

ごまかしてGN50を買ったこと、この計画の目的を淡々と話した。


「へー、よくOKでたな〜」


「それがそうでもないんですよ。」


「なかなか理解ある親だよ」

「原チャで大丈夫か?」

「峠は結構きついと思うよ」


「そうですか?」


「何日の予定なのさ?」


「特に決めてないんです。」


「ほ〜っ、優雅だね〜」


「はいっ!」


「なんだよ、そのリアクションは。ハハハ」



どうやら、少々大雑把だが人は良さそうだった。


彼女は二度目の単独ツーリングで、

今回の目的は、前に出会った名前も知らない彼との待ち合わせらしいが、

連絡先も教えず、ただ翌年のラベンダー畑でと言って別れたらしい。



彼女の方がよっぽど優雅だと思った。


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