第658話 ギルドポイント、不正受給作戦――第三弾『チートアイテム』
検問を抜け、町を出発し、狩りへと繰り出した我らアルティメット・ヘズラトボンバーズ一行。
そして狩りを終え、町の検問へ戻って来ると――門の前で仁王立ちのケイトさんが立ちふさがった。
「おぉ……。この度は、誠に申し訳ございませんでした……」
「…………」
出発時にはいなかったのだけど、戻ってくる間に交代の時間になったらしい。
いろいろとやらかしただけに、ちょっと気まずいな……。
「はぁ、もういいわ。……いえ、別によくはないのだけどね」
「すみません……」
「正式にパネルの設置許可も下りたみたいだし、町のみんなも喜んでいるし、もうこの件に関してとやかく言わないけれど……今後はあんな騒動を起こさないようにね?」
「ええはい。今回の件は自分を見つめ直すきっかけになりました。もう二度と不法行為や不正行為に手を染めないと、心に固く誓いました」
「そうであることを祈るわ」
それはもう、お任せくださいケイトさん。僕の今後の活躍にご期待ください。
「しかしながら、ケイトさんには多大なるご迷惑をお掛けしてしまいました。お詫びと言ってはなんですが、次はケイトさんの顔出しパネルを――」
「やめなさい」
セリフの途中だというのに、ピシャリと断られてしまった。
……ふむ。まぁそうか。ここでそんなプレゼントをしたら、お役人さんへの賄賂と受け取られかねん。それは不正行為に該当してしまうわけで、確かに慎むべきか。
「あー、まぁアレクも反省しているみたいだしさ、そうガミガミ言ってやるな」
と、ここでクリスティーナさんからのフォロー。
なんと優しいのか。ありがとうございますクリスティーナさん。
「そうかしら? むしろアレク君にはガミガミ言った方がいいんじゃない?」
「……それもそうだな」
あれ? フォローは?
「まぁいいわ……。とりあえずギルドカードのチェックを始めるけど?」
「ああ、頼む」
「……ずいぶん可愛らしいギルドカードね」
「あー……」
クリスティーナさんのギルドカードを見て、少し皮肉げにつぶやくケイトさん。
「クリスティーナもあのパネルで写し画を撮ったのね……」
「まぁなぁ、柄じゃねぇんだけどな」
まだ言うかクリスティーナさん。楽しげにしていたじゃないか。良い写し画が撮れるまで、何度も楽しげに撮り直していたじゃないか。
「それにしても、やっぱり結構多いのか? パネルを使った写し画を持ってくる奴は」
「もうほぼ全員と言ってもいいくらいよ……」
「そんなにか……」
「もうずっとヘズラト君の格好をしたギルドカードばかり見せられていて……。身分証明を兼ねたギルドカードがこれでいいのか、甚だ疑問に思えてくるわ……」
おぉ……。これは申し訳ない……。
ちなみに我らアルティメット・ヘズラトボンバーズのメンバーも、今は全員がヘズラト君状態のギルドカードだったりする。重ね重ね申し訳ない……。
「本当にもう……あら?」
「キー」
「ふふ。これは可愛いわね」
しかしここでもヘズラト君インヘズラト君の写し画だけは好評であった。さすがヘズラト君。
◇
なんやかんやありつつも検問を抜けた僕達は、ギルドの納品所までやってきた。
「こんにちはー。買い取りお願いしまーす」
「おー。今日は狩りか?」
いつものヒゲの受付さんである。カウンターでトレイを借りて、今日の戦果であるモンスター素材を乗せていたところ、ヒゲの受付さんは少し意外そうにしていた。我らアルティメット・ヘズラトボンバーズにしては薬草がないことを珍しく思ったのだろう。
それからヒゲの受付さんによる査定を待ち、しっかり報酬を受け取ったところで――僕は自分のギルドカードを取り出した。
そうしてカードに魔力を流し、カード内容を更新してみるが――
冒険者ランク:Fランク パーティ:アルティメット・ヘズラトボンバーズ
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:20 性別:男
職業:木工師
ギルドポイント:235
更新日:0日前
――こんな結果であった。
「もうちょっとなんとかなりませんかねぇ……」
「えぇ? 今になって渋るのかよ。適正価格で買い取ったぞ?」
「いえ、買い取り額ではなく、ギルドポイントの方をもうちょっと増額していただけないでしょうか……」
「そっちか……。それこそ俺にはどうしようもないんだが……」
「うーむ……」
今回の納品で獲得したギルドポイントは18ポイントであった。18ポイント加算され、現在の累計ポイントが235ポイント。
そして目標のEランクに必要なポイントが――3000ポイント。つまり残りは2765ポイントだ。
遠いなぁ……。あまりにも遠すぎる……。
「というか、故郷からもっといろいろ持ってきたらよかったですね。エルフ界の素材でも、納品したらポイント貰えますよね?」
「まぁそうだな。ここに納品した時点でギルドポイントも加算されるはずだ」
そうかー。失敗したなー。そこまで考えてなくて、準備もしてこなかった。
なんだかんだで冒険者活動再開まで二年近くあったと思う。その間に故郷で集めた素材とか全部溜めておけばよかった。そうして溜めた素材を、全部納品所に持ち込んでやればよかった。そこまでしたら、さすがに3000ポイントくらいは貯まっていたであろうに……。
「あ、でもさすがに素材が腐ってたらポイント貰えないですかね?」
「腐った素材持ち込むなよ……」
ふーむ。買い取ってもらえなくてポイントも貰えないということも考えられるか。
さておき、なんかないかな。特に準備はしてこなかったけど、所持品の中にポイントたくさん貰えそうな物とか眠ってないものか。
そんなことを考えて、マジックバッグをあさっていると――
「――あ」
「うん?」
あるじゃないか……。何故これに気付かなかったのか。すごく貴重で高額買取間違いなしのアイテムがあったじゃないか。あまりにも貴重で、というか普通にチートで、世界を揺るがすであろうアイテム……。
そう――回復薬セットである。
これとかどうなの? 例えば蘇生薬とか納品したらどうなっちゃうの? これはもう莫大なポイントを獲得できてしまうのでは? もはやEランクどころの話ではなく、AランクとかSランクまで行っちゃうんじゃない……?
というわけで――第三弾だ!
薬草ロンダリング、密造ヒカリゴケに続いて、ギルドポイント不正受給作戦第三弾――チートアイテム転売作戦である!
……あ、でも不正受給作戦か。
不正受給作戦ってのはどうなのかな……。
「…………」
「うん? どうした?」
「もう僕は、二度と不法行為や不正行為に手を染めないと心に固く誓ったんですよ」
「……なんの話だ?」
あまりにもタイミングが悪すぎる……。何故なのか。何故僕はそんなことを誓ってしまったのか……。
……というか、むしろ作戦名だよね。『不正受給作戦』などという名前が悪い。
そもそも何故そんな名前にしてしまったのか……。普通に印象が悪すぎる作戦名だ。当時の僕は、何を思ってそんな名前を付けたのか……。
「どうしましょう。ついさっき誓ったばかりですし、いきなり誓いを破るのはまずいですよね。さすがにもうちょっと時間を置いてからじゃないと……」
「いや、破るなよ……。よくわからんが、時間を置いても破っちゃいけない誓いだろうそれは……」
でも僕としては、すでに気持ちはSランクなのだけど……。ポイント大量ゲットでSランクとかSSランクとか、なんならSSSランクまで一気に駆け上がりたい気持ちでいっぱいなのだけど……。
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