第640話 魔王城2
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願い致します(ノ*ФωФ)ノ
というわけで、目当ての宿にやってきた僕達は、そこで大きめの部屋を借りることにした。
――五人部屋である。これから五人での共同生活が始まる。
一応は、スカーレットさんの希望を聞いた形ではあるのだけれど――
「ちょっと狭くないか?」
「おぉぉ……」
スカーレットさんから五人部屋がいいと希望され、その希望を叶えたところ、そのスカーレットさんからクレームが入ってしまった……。
いやはや、さすがのスカーレットさんである。発言の自由っぷりが半端ない。
でも確かにちょっと狭いかな? 窮屈ってほどではないけれど、全員ゆったりのびのび過ごせるほどの広さはないかもしれない。
「もし本当に厳しいようでしたら、改めて二部屋借りることにしましょうか」
「そうだなぁ。やっぱり基本は部屋にずっといることになるだろうからね」
「そうですねぇ」
これから何もせず、部屋でだらける気満々の僕達である。
「ふーむ。しばらく五人で滞在ということならば、あるいは宿を借りるのではなく、別の選択肢を考えてもいいかもしれないね」
「ほう? と、言いますと?」
「うん、宿を借りるのではなくて、家自体を――」
「なるほど――家自体を買うわけですか!」
ほうほうほう。それはなかなか大胆な発想だ。さすがはスカーレットさん。
「……いや、家を借りたらどうかと」
「ふむ」
大胆なのは僕だった。スカーレットさんを超える大胆さを無駄に披露してしまった。
「別にわざわざ買うことはないだろう……」
「そうですか……。なんならいっそのこと、自分で建ててしまうのもありかと思ったのですが」
「えぇ……?」
ダンジョンの森エリアに別荘を建てたみたいに、ラフトの町に別荘を建てたらいいんじゃないかなって。
「ラフトの町にもアレクハウスを――あ、でも違うか。今回は違いますね。なにせリュミエスさんがいます。リュミエスさんが住む家となると、それはつまり――魔王城」
「魔王城……?」
「魔王城、ラフトの町支部」
魔王城カーク村支部に続き、魔王城ラフトの町支部。
カーク村支部は計画段階で頓挫してしまったが、今度こそ立派な支部をこの町に――!
――てな話をしていたら、当の魔王様がピクリと反応してこちらに視線を寄こした。
そういえば、リュミエスさん自身はどう思うのだろう……。勝手に魔王城とか建てて怒ったりしないだろうか? しかも魔王城などと謳っておきながら、おそらく実際に建てるのはただの民家で、ただの民家を勝手に魔王城と呼称することに、リュミエスさんは何を思うのか……。
そのあたりのことをまったく考えず、本人に確認もせずに計画を進めるあたり、我ながら滅茶苦茶やっているなと今更ながら思ったりも……。
「とはいえ、土地のことや建築資材のことを考えると、いろいろ大変かもですねぇ」
「それはまぁそうだろうね……」
――てな話をしていたら、『なんだ建てないのか』と興味を失ったようにリュミエスさんが視線を外した。
……どうなんだろう。なんかちょっと残念がっている様子にも見えたか? 実はちょっと建ててほしかったりしたのかな?
「まぁ土地と資材は金でなんとかなりそうですが、肝心の大工さんがいませんからね、そこがちょっと厳しいです」
「金でなぁ……ん? 大工さん? それはどういうことだ? いないってことはないんじゃないか?」
「いつもお世話になっている大工さんがメイユ村にいまして、せっかく家を建てるなら、その人以外にはあんまり頼みたくないなーってのが正直な気持ちです」
「ほー? その人はやっぱり女性なのかな?」
「……ええまぁ」
確かに女性だけれど……いやでも、違いますよ? ただ純粋に大工さんとしての腕を見込んでのことで、別に美人さんだからってわけではなくてですね……。
「さておき、その人――フルールさんという大工さんなのですが、さすがにメイユ村からここまで呼ぶこともできませんから」
なので大工さんがいないのです。僕が求める大工さんは、遠く遠く離れた地にいるのですよ。
「――呼ぼうと思えば呼べる気はするけど」
「はい?」
僕達の話をぼんやり聞いていたらしいジスレアさんから、そんな指摘が入った。
「いやでも、この距離ですよ?」
メイユ村からラフトの町まで、どんだけ掛かるんだって話だ。
僕達もここまで三ヶ月掛かった。フルールさんにも三ヶ月旅をしてもらって、ここまで来てもらうって言うの? いやいや、さすがにそれは――
「一週間もあれば、余裕を持って移動できるはず」
「…………」
あー、そうか、そんなもんか。ここまで長い時間を掛けて旅をしてきたつもりが、実際にはそんなもんなんだな……。だいぶ近場で、ただただ無駄に時間を浪費しているだけだったか……。
「でもまぁ、一週間も別に短くはないですよね」
「それは確かに」
三ヶ月に比べたら全然短いけど、普通に一週間は長いよね。一週間移動してきてくださいって、そこそこ無茶なお願いな気がする。
なので、やっぱりフルールさんにお願いするわけにはいかなくて――
「……ジェレパパさんならどうだろう」
ふとそんなことを思った。もしもフルールさん以外に頼むとしたら、ジェレパパさんにお願いしたい。
メイユ村では大きな建築物はフルールさんが担当、それ以外はジェレパパさんが担当という棲み分けがされているが、別にジェレパパさんだってやってやれないことはないだろう。たぶんジェレパパさんも頑張れば家を建てられるはず。知らんけど。
というわけで、とりあえず手紙とかで『家を建てたいのでラフトの町まで来てください』とでもお願いしたら……。
ふむ。文句を言いながらもちゃんと来てくれそうな予感がして、なんかちょっと面白い。
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