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五十五話 帰宅後のイチャイチャ


帰宅後。


「……」


 あれから琴葉はずっと無言で、今現在も俺の背中にぴったりくっついて離れない。

 

「琴葉、もう玄関だよ。」


 俺が優しく声を掛けても彼女が離れる気配はなかった。今の琴葉が傷付いているのは勿論分かるし、彼女を元気にするのが最優先の課題なのは理解できる。


 ……けど、今はリビングに母さんがいるのだ。あれだけ親前でイチャイチャしておいてなんだが、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。

 でも琴葉を無理に引きはがす事なんて、俺に出来るはずがない。どうしたものか、解決策が見出せず悩んでいると。


「……二人とも、どうしたの?」


 遂に母さんがやってきた。しかし、その顔にいつも浮かべている生暖かい質の表情はない。ただ、普段とは似ても似つかぬ琴葉を見て訝しげに聞いてくるだけだった。だが……、


「ごめん母さん。後で話すから」


 俺は母さんの質問には答えない。いや本来なら今すぐ答えるべきなのかもしれないが……。実は母さんにエンカウントしてからずっと、琴葉が俺の服の裾を引っ張っているのだ。


 これは多分"そういう話は今はまだしたくない"という琴葉からの意思表示……だと思う。そう考えると、まずは琴葉の傷を癒すのを優先しなければならないだろう。

 俺はそう言って、琴葉の手を引き二階へと続く階段を駆け上がった。








時は少しだけ流れ、俺の部屋にて。


「うおっ!?」


 琴葉は部屋に入るなり、俺を押し倒さんばかりの勢いで抱き着いてきた。彼女固有の、柔らかくて甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 あまりに突然のことに驚くし、心拍数も跳ね上がるが。


(……ここでヘタれば男が廃る)


 俺は平静を装い、朝してやったように琴葉の頭を優しく、優しく撫でた。ただ彼女を元気にしたい、そういう願いを込めて。


「綴君……」


 琴葉は心の傷を埋めるように、俺の胸にグリグリと頭を押し付けてくる。そんな小動物のような様子の彼女を見て。


(まあ、こんなに早く傷が癒えたりはしないよなぁ……)


 ある程度元気になった、とは思ったが。平常時の琴葉はこんな甘え方をしない。まだ傷が完全には癒えていないことを再認識させられた。

 無理もないだろう、こうも典型的ないじめを受けたのは中学校以来だ。過去のトラウマがフラッシュバックしても不思議ではないし、そうでなくても精神的に参っているんだ。


「明日、学校休むか?別に無理して行く必要なんて」


庇護欲に駆られた俺がついそんな言葉を零すが、それが最後まで紡がれることはなかった。


「行きます」


 彼女が遮ったのだ。震える声で、けれど有無を言わせぬような強い口調だった。その雰囲気はこちらが気圧されるほどだ。


「ここで私が学校を休んだら、それこそ負けなんです。」


 彼女は、少し意地になっていた。ここで休んだりすれば彼女らの思う壺だと、負けたくないと。そう考えているのだろう。

 だけど、それは彼女なりの覚悟でもあるのだ。ただ甘やかすだけでは成長しないし、何よりここは琴葉の意志を尊重するべきだと思った。

 彼女との過去を考えれば尚更だった。もしかしたら、俺達を隔てる"中学校時代のトラウマ"を薙ぎ払うきっかけにもなるかもしれないと。だから、


「……分かった。じゃあ、明日も一緒に行こうか」


俺は彼女の言葉に賛同する。しばしの静寂の後、


「その代わり……」


琴葉が躊躇うように、何かを零す。


「……もう少し、このままの状態でいたいです」


 ……何故か安心した。多分、恐怖からか縋るように甘える琴葉ではなく、純粋に俺に対する好意から甘えてくれる琴葉を見れたからだと思う。

 琴葉にそう言われては、もう答えは決まっているも同然で。


「勿論、琴葉が満足するまで良いよ」


 俺は努めて優しい声で言って、琴葉の背中に手を回した。絶対に琴葉を守ってみせるという、強い決意を胸に刻んで。




最近更新が遅れがちになっています……すみません。次回はいよいよ「クー甘」の核心部分といっても過言ではない、お二人の過去、中学時代の話をしようと思っています。

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