三十七話 幼馴染と林間合宿⑦
何か小分けになってすみません!それと最近読みにくいかもです!すみません!
今回は前半琴葉視点です。
「貴方が綴君を好きな気持ちと!私の綴君に対する恋心を一緒にするな!」
自分でも、響くような声量が辺りに響き渡る。それくらいには、私の怒りは大きなものだった。
許せなかった。ただの一目惚れ。そんな薄っぺらい動機を、私の恋心と同列に扱ったこと。
悔しかった。今日まで散々、こんな人間に馬鹿にされてきたことが。
だから、怒りはそれだけで収まらなくて。
「貴方が綴君の何を知っているんですか!一目惚れ!?それって、結局綴君の内面を全く知らないってことですよ!その程度の生半可な想いで、私達の恋路を邪魔するな!」
心の奥底に溜め込んでいた激情が、一気に溢れ出てくる。そして、
「手を引くのは貴方の方です!」
私はキッパリと言い切った。こちらとしては少しスッキリしたが、これじゃあ終わらない。
きっと彼女は、また何か反論してくるはずだ。
思って身構えるが、
「はぁ……。もういいわ。この下らない会話は終わり」
この言い合いは、それ以上続くことはなかった。
一条は、突如として会話を断ち切ったのだ。
すると、そう言った彼女は制服のポケットに手を伸ばして、"何か"を取り出す。
「な、何をしようと……」
何故か、嫌な予感がした。本能が危険を伝えてくるのだ。今すぐここから逃げろと。さもなければ死ぬぞと言われている様な気がした。
「決まってるじゃない……ここで、全て終わりにしようってね!」
案の定と言って良いのだろうか。彼女が取り出したものは、カッターナイフ。
「……そんな事をして、何になるんですか!」
焦った私は、どうにか宥めようとするが。
「はぁ……。貴方が消え失せれば、きっと私と佐々木さんが結ばれるはずなのよ。貴方という害虫から解放されて、ね」
私の言葉など届いていないのだろう、一条さんは私にナイフを近付けてくる。
その瞳には、私に対する憎悪が深く刻み込まれていた。
ああ、それを見て私は悟る。この人はもう、手遅れなんじゃないだろうか、と。どこか壊れてしまっている人間だと。
その狂気を目の当たりにした私は、強い恐怖を覚えた。先の怒りなど、どこかへ吹き飛んでしまったように。
だが、勿論ここで、怖じ気づいて手を引くなどあり得ない。
悲鳴の如く声をあげる心臓の鼓動を押さえつけ、なるべく平静を保って言う。
「そ、その前に普通に捕まると思いますけど……一回冷静になりましょう。」
そんな私の提案は、彼女に弾き返された。
「うるさい!……そんなの、後で隠蔽するなりすれば誤魔化せるはずよ!私は天才なの!それぐらい、出来るはずよ……!」
唖然とした。なんて高慢な人間なのだろうか、と。
どこでこの人は、狂ってしまったのだろう、と。
一条明日香は、どこまでも彼女だった。
「いや、自惚れしすぎです!今すぐ考え直してください!」
私は再度説得を試みる。ここで黙り込めば、あのカッターナイフでヅタヅタに切り裂かれるかもしれない。
綴君と幸せになる前にこの世を去る。そんな未来は絶対に嫌だ。
だから私は諦めない。凶器を突きつけられるなんて初めてだ。誰かの狂気で涙が零れそうになるなど初めてだ。
けれど望んだ未来を掴むためには、こんな所で屈してはならないのだ。
「お願いです!そんなことしたら、貴方の人生も終わってしまうんですよ!?一時的な感情に人生を振り回されるなんて、嫌でしょう!」
力一杯そう叫ぶが。
「黙れ!貴方の助言なんて、聞きたくもない!」
「ひゃっ……!」
しかし、私の説得はことごとく破り捨てられた。返されるのは、強い憎しみを含んだ怒号だけ。
「もう限界!白雪琴葉ぁ!今からお前を消す……私の幸せのために、邪魔だ!お前は邪魔すぎるんだ!」
もう、その姿は完全に狂人だった。
恐怖で足が動かない。どれだけ力を込めても無駄で、びくともしない。
その間に、彼女は瞬時に距離を詰めてきて。
「これで全ては解決よ!」
私は、振り下ろされる憎悪をただ眺めることしか出来なかった。
こんな所で死んじゃうのだろうか。彼に、想いも告げられぬまま。
もっと素直になれば良かった。もっと彼に甘えれば良かった。
「……綴君、ごめんなさい」
……彼と、幸せを共有したかった。これは、永久に叶わぬ願いとなってしまうのだろうか。
ついに私の頬から、一筋の涙が零れ落ちた。こんな所で終わりかける、自分の人生を恨んだ。
否、今更後悔なんて手遅れか。
目の前に絶望が迫りつつあった刹那、
「おい!何をやってるんだ!」
誰かの叫び声が響く。聞きなれた、優しく温かい声だ。
いつも私を助けてくれる白馬の王子様。傍で支えてくれて、私に沢山の幸せを分け与えてくれた、掛け替えのない人。
勿論、そこに現れたのは――――――
「琴葉!大丈夫か!?」
――――――私のたった一人のヒーロー、綴君だった。
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