三十六話 幼馴染と林間合宿⑥
うーん……。訂正予定です。
午後18時。
昼食後の活動は本当に面倒だった……。
ひたすらに先生達の話を聞かされ、更によく分からんことをやらされて。
琴葉と一緒に過ごせる時間もほとんどなかったし……。途中、何度"琴葉成分"の不足で死にかけたことやら。
だが!これから始まるのは琴葉との夕食、キャンプファイヤーに社交ダンス!地獄を潜り抜けた先にあるのは天国だ。これから始まる楽園に、俺の気分は高揚する。
ひとまず、これからあるのは夕食だ。早く彼女を誘おう、そう思い声を掛けに行くが。
しかし、俺が彼女を誘う前に……。
「白雪さん、ちょっと良いかしら?」
一条が、琴葉に話し掛けていた。また厄介事かなぁ。このタイミングで面倒だ。
これは止めるべきなのだろうか、少し悩む。
「何ですか?私、素性も分からない様な泥棒猫と二人きりにはなりたくないですね。」
そして。一条に言われた琴葉は、警戒心を隠そうともせずそう言い放つ。しかし、忘れてはならない。
「あら、応じないようなら貴方と佐々木さんの"悪い"噂を流しても良いかもしれないわ~。どうしようかしら?」
彼女は狡猾である。今回も、非常に汚い手を使ってきた。それを聞いた琴葉の顔がぴくりとひきつる。
「……綴君に迷惑を掛けるおつもりで?」
あー、あれは多分怒ってるな。俺は思った。これ以上ヒートアップすれば何をしでかすか分からないし、もしも先生が来たりすれば問題になる、と。
俺は彼女達を止めるべく介入しようとしたが……。
「いえ、白雪さんが私の提案に応じてくれれば、その事態は避けられるのですよ?」
その前に、一条が交渉をしていた。
「はぁ……。分かりましたよ」
琴葉も仕方なくであろう、彼女の提案に同意する。
しまった、と思う。完全に介入するタイミングを見失ってしまったようだ。
こうなれば俺のする行動は決まっている。琴葉に危険があっても、すぐに助けれるよう後をこっそり追うことにした。
「単刀直入に言うわ。佐々木くんから手を引きなさい」
場所は、人気のない駐車場付近。到着すると早速一条は琴葉に仕掛けた。"色恋バトル"再びである。
「は?ちょっと何を言っているのか理解に苦しみますね。貴方こそ、私達の間に入り込む余地などありませんので。手を引いていただけると幸いです。」
一条にそう言われた琴葉は。勿論、一歩も譲る意志はないようだ。
きっと、またいつもの様な、ヘンテコバトルが始まるんだろうな。そう思ったが……
そんな俺の予測は見事に外れた。
「……どうしてよ」
琴葉の返答に、突如として彼女の様子が豹変した。いつもの余裕など、どこ吹く風。
それは初めて見る彼女の激情だった。
「どうしてよ!どうして貴方なの!私は貴方と同じくらい容姿も優れていて!勉強だってこの学校で一番なのに!何で貴方なのよ!」
怒り、憎しみ、貯めこんできた負の感情を、一条はこれでもかという勢いでぶちまけていた。
それを聞いた琴葉は……。
「……。」
黙ったままである。きっと、唐突すぎる一条の豹変ぶりにどう反応すれば良いのか困っているのだろう。
それを沈黙と受け取った一条は、なおも言葉を続ける。
「何よ……。私こそ相応しいでしょう!?何で貴方が、彼の傍に立つ人間なの!?私は彼が好き、貴方と同じくらい、いえそれよりももっと佐々木さんを愛している!それなら、私に少しくらい振り向いてくれても良いのに!」
しかし、そう彼女が言った途端に空気が凍りついた。琴葉を纏う空気が、明らかに変わったからである。
「……じゃあ、綴君を好きになったきっかけは、好きな理由は何ですか」
その空気に、一条は若干気圧されつつも続けて話す。が、
「えっと……。そ、それは一目惚れよ!けど、そこから始まる恋もあるし、私はこれでも真面目に考えて――――――」
彼女の言葉は、最後まで続かなかった。
「ふざけないで」
それを琴葉が遮ったからである。彼女は、顔にハッキリとした怒りの表情を浮かべて、
「ふざけるな!」
刹那、彼女の怒号が響き渡る。
「貴方が綴君を好きな気持ちと!私の綴君に対する恋心を一緒にするな!そんな薄っぺらい理由で、私達の邪魔をしないで!何も知らないくせに……!何も分かっていないくせに……!」
その鋭い怒声は、ハッキリと俺の鼓膜を叩いた。臆病で、小さな一歩を踏み出せない、そんな愚かな俺の。
――――――恐らく。否、これは確信だ。琴葉は俺の事が……。
好きなのだろう。異性として、恋する対象としてだ。
こうして前から抱いていた疑念は確信へと変わり、同時に。心の中に、ある決意が生まれたのだった。
もしよろしければブックマーク・感想・評価ポイント等いただければ幸いです!作者のモチベーションが爆上がりするでしょう!




