二十九話 幼馴染と同居生活?④
次回から、いよいよ林間合宿関連の事が動き出します!
「琴葉様、申し訳ございませんでした!」
あれから数十分後、俺はひたすら琴葉に謝っていた。
「わ、分かりましたから!もう謝らなくてもいいです!」
土下座する勢いで謝罪していると、彼女は焦ったように言う。
ふぅ……。何とか彼女の許しを得ることができた。安堵すると、心にも下らない事を考える余裕が出てくる。琴葉の胸についてだ。
それにしても、柔らかい感触だったなぁ。けど、やっぱり琴葉は少し胸が小さ――――――
「……何か今、失礼なこと考えていませんでしたか?」
「な、何の事でしょう?」
何故か琴葉が睨んできた。おぉ……。女の子は男が失礼なことを考えてたら勘づく、やっぱりあれって本当なのかな?俺が感心していると、琴葉は鋭い視線を引っ込めて。
「……まあ良いです。」
それに続くと思っていた罵倒が来なかった。俺は少し安心する。てか、良いんだ。
「てか、良いんだ」
思わず俺が呟くと、彼女はゴミでも見るような視線を向けてきて、
「二度目はないですよ?またビンタでも味わいたいですか?」
冷めた声でそう言ってきた。俺はすぐに言葉を撤回する。
「すみませんでした何でもございません!」
いつもとは一転、何でこんなに怖がっているかって?
……実は、琴葉に叩かれた箇所、今だにヒリヒリするんだよね。手形もくっきりとついてるし。いくら琴葉のビンタとはいえ、あの激痛をもう一度味わいたいとは思わない。
ふと時計に目を移し、ハッとなる。いつの間にか、普段の就寝時間を過ぎていた。いつまでもこんな会話を続けるわけにはいかない、そう思って俺は話題を変える。
「琴葉、そろそろ寝ようか」
琴葉は、まだ何か言いたげにしていたが、
「はぁ……そうですね」
しょうがないな、という表情で納得してくれた。安堵すると同時に、違和感が体を襲ってくる。
琴葉との距離が遠い。昨日は抱き締めていたから密着するほどに近かった。しかし、今は人の体一つ分くらい離れているのだ。
……もっと傍にいたい。その思いが俺の中で膨れ上がってくる。
「琴葉。き、今日も抱き締めて寝たいんだけど……大丈夫かな?」
"胸元ダイブ事件"があった直後だし断られるだろうな。そう思い、俺はダメ元で言ってみた。すると琴葉は、
「……好きにすれば良いんじゃないですか?」
素っ気なくそう返してきた。つまり、遠回しに"大丈夫ですよ"と言ってくれた訳だ!彼女はバレていないと思っているようだが、それが照れ隠しだということに俺は気づいているぞ!琴葉からオーケーを貰った俺が上機嫌で考えていると。
「……綴君、おやすみなさい」
刹那、彼女は小さな声でそう言って、俺の胸元に飛び込んできた。甘い香りと彼女の温もりが伝わってくる。あまりにも突然の出来事に俺はドキリとした。
「いつものお返しです」
今までの表情はどこへ、彼女はいたずらっぽく微笑む。
「……お、おう……」
可愛い!可愛すぎる!その天使の笑みに見とれながら改めて思う。俺は、絶対に彼女を放さないと。絶対に彼女から離れないと。でも、今はそんな決意を伝える空気じゃない。この、甘く優しい空気を維持しようと言葉を続ける。
「おやすみ琴葉、あ~明日も一緒に寝たいなぁ」
俺が願望を垂れ流してみれば、琴葉は照れ隠しのように……。
「……!う、うっさいです!」
腕の中で、ポコポコと俺の胸板を叩いている。さっきの余裕そうな天使スマイルは退場したようだ。 琴葉の子供のように豊かな感情、それにどこか安心感を覚えながら言う。
「琴葉、本気でそろそろ寝ないと明日起きれなくなるよ?」
「う、……そうですね」
琴葉は若干不服そうにしながらも、大人しく俺の言葉に従った。
「じゃあ琴葉、おやすみ」
俺がそう告げると、琴葉は拗ねたように
「おやすみなさい、明日は一緒に寝てあげませんからね!綴君のバカ」
言って胸元に頭をグリグリと押し付けてくる。最後まで素直じゃない琴葉に苦笑いしながら、俺は彼女を優しく包み込む。このかけがえのない日常を全身で感じるために。
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