二話 幼馴染と初登校
小鳥のさえずりが聞こえる。
「……朝か」
時刻は06時00分。ベッドから出るのが憂鬱で仕方ないが、いつまでもうかうかしていられない。なんたって今日は高校の入学式だ。
ところで、第一印象というのは非常に大事である。琴葉と最高の高校生活を送る上で、入学式は最初の重要なポイントだ。
ここで大切なのは琴葉との仲の良さをアピールすること。"俺達に付け入る隙はないですよ"ってね。
まあ付き合ってるわけでもないからそれだけの、それも初日の印象だけの効果に頼りきることはできないだろう。少しの牽制しか意味を持たない行為かもしれないけれど、これが毎日となれば話しは違ってくる思う。
それに、ここで転んだら後々面倒なことになる可能性がある。例えば俺と琴葉が入学式会場ではぐれて一緒にいることが出来なかった場合。
勘違いしやすい空気を読むことが苦手な男子諸君、君達は思うはずだ。"あれ、あの子めっちゃ可愛い!彼氏っぽいのもいないし、俺にもチャンスあるんじゃね?"と!
これは非常に良くない事態である。勘違いした愚か者が、琴葉にアプローチを仕掛けるかもしれないんだ。
いや、俺と琴葉は運命の人であるから、別に彼女のアプローチに対する反応を心配しているわけじゃない(…多分)。俺が一番危惧することは、注意するべきは人間関係だ。
恋愛面での確執が生まれるというのは、かなり重大なことである。俺としても出来るだけ避けたい事態だ。
例えばそれのせいで、俺と琴葉が周囲から浮いてしまったら……。いや、俺が孤立する分には別にどうでもいい。問題は琴葉の方である。
"好意を持っている説"が濃厚である俺に対しては比較的素直であるが、他の人に対してはかなり塩対応。元々孤立しやすい性格な上、そこに確執が重なると……。
まあ、それこそ"俺と琴葉だけ"のイチャイチャライフが送りやすくなるかもしれないが、なるべく敵は作りたくないしそんな事態になれば間違いなく高校生活が不便になると思う。何より……。
……中学校時代のようなことを繰り返したくない。
ふと、時計に目をやると06時30分。思考に耽るあまり、いつの間にか30分も経っていた。いつもの癖なのか、どんどんネガティブな方向に突き進む思考を無理矢理断ち切り俺は洗面所へと向かった。
「琴葉、おはよう」
時は進んで07時30分。俺は今、愛しの琴葉と登校するべく白雪家の玄関前にいる。
「綴君、おはようございます」
涼やかな声で応じるその姿はとてもクール。相変わらずの美しい銀髪、宝石のような碧眼。真新しい高校の制服は、彼女のために作られたのではないかというくらい似合っている。
「琴葉、その制服似合ってるね。特にその透き通るように美しい銀髪と制服の相性は抜群だし、肌も――――」
「ーー!ま、待ってください!昨日私、褒める時は先に伝えてほしいと!言いましたよね!?」
俺がいつも通り琴葉を褒めようとした瞬間、彼女は滅茶苦茶焦った様子で俺の声を遮った。そうだった、約束はちゃんと守らないといけない。
「はい!俺、佐々木綴は、ただ今より白雪琴葉をべた褒めすることを!ここに宣言します!ってことで琴葉、その制服滅茶苦茶似合ってる。いやさ、琴葉って何着ていても似合うというか破壊力抜群なんだけど――――」
「やっぱりなしで!宣言するのも全部なしで!」
琴葉は顔を真っ赤にして叫んだ。どうしたんだ?やっぱり、宣言は止めた方がよかったのだろうか。
「じゃあ宣言は撤回するよ」
「よ、良かったです。綴君の頭がおかしいのは普段からですが、まさかここまでとは……」
「おっと、聞き捨てならないな」
「いや、事実じゃないですか。私、そうやって露骨に褒めてくる人、嫌いです。というか気気色悪いです。…………綴君は別ですけど」
「……ごめん」
うわぁぁぁぁぁ!これはもしかしなくても、琴葉の好感度が下がったのではないだろうか!?最後に何かボソッと呟いていたけど、あれってまさか俺に対する悪口か!?
あまりにも急な琴葉の攻撃に、俺の心はボロボロな状態だ。
心に深く傷を負った俺は、それを周りに覚られぬように無理矢理作った笑顔で高校に着くまで琴葉との雑談に徹した。
……俺の笑顔は、恐らくひきつっていたと思う。
今日はもう一話更新予定です。




