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こっそり守る苦労人 〜黒き死神の心〜  作者: ルド
血に塗れた冬の悲劇。
6/33

第5話 私生活。

冷えると眠気が増します。

 静かに雨の音が木霊(こだま)する。

 視界も雨で暗く遮られ、僅かな明かりしかない。


 呼吸が落ち着かせて、黒刀を構えると意識を集中させる。

 雨の中から聞こえる。異物な雑音を、紛れている気配を、探るように意識を向けると……。

 


 真っ直ぐに駆け出すと同時に伸ばすように突き刺す刃。

 バシャバシャ! と水が弾く音が耳に響くが、確かな手応えを感じた俺は、突き刺した刃の先をさらに深く飲み込ませていく。


 ジタバタと暴れ出す相手。俺は空いている手首を首に回して、横に折り曲げようとする。同時に締めていくと呻き声を漏らし、相手は空気を求めようと、足掻く勢いがさらに増したが……。




 ゴキっと鈍く重い音と共に、俺はその細い首をへし折った。

 瞬間、全身の筋肉が走り抜く激痛にピクピクと痙攣を起こしていたが、俺は突き刺していた刃を動かして、その女の心臓を(・・・・・)――




 目を見開いたまま光を失った幼馴染……九条(くじょう)(なぎ)の最後を見て…………。



 


「おはよう。母さん、(あおい)……」


 そうして悪夢から覚めた俺は、吐きそうな気持ちを抑えつつ、冬用の学ランに着替えるとリビングにいた母と妹に挨拶した。


 母の方は微笑んでいるが、妹の葵はパンを咥えて固まる。……俯くとノロノロとした食べ方でパンを食し始めた。


「おはよーう。時間は大丈夫みたいだけど、朝食は食べていくの?」

「……軽くでもいい?」

「いいよ、ちょっと待てねー」


 いつもの軽い調子で挨拶を返す母がキッチンへ向かう。

 母も元異能者だったので、こちらの事情も当然知って、妹にバレないようフォローしてくれて助かるが、肝心の私生活を疎かにすると結構容赦ない。


 ……ヘタすると反対派な母なので強引に休まされるか、最悪辞めさせられる可能性もあるから十分な注意が必要だ。


 現在の状態を考えると本来ならアウトに近いと思うが、朝食を取れるくらいならギリギリセーフなのだろう。


「ふぅ」

「――っ」


 テーブル席に座ると隣に座っている葵の緊張感が急激に上がった。

 視線は顔ごと下を向いてしまい、モソモソと隠れて食すことに集中する。




 兄妹同士の会話なんてない。

 これがいつもの朝の景色であった。





「いってらっしゃーい!」

「「行ってきまーす」」


 朝食を終えて身支度を済ませると、母に声をかけて妹と一緒に家を出る。妹は小学5年生なので学校は別々であるが、途中までは一緒に通学路を歩いている。

 すっかり寒くなって学ランだけだと結構辛く、上に黒のジャンパーを着て妹も厚めの上着を身に付けていた。


「「……」」


 会話はなんてない。こちらを見ない葵は俯くように歩く。さすがにずっとそれだと危ないような気がするが、しばらく歩いていると、その重い空気を吹き飛ばしてくれるのがやって来た。


「おはよう。葵ちゃん、零」

「あ、なぎおねぇちゃん!」


 冬用のセーラ服を来た凪の登場である。上に茶色のコートとマフラーを身に付けて、白い息を吐きながら、こちらに手を振って待っていた。



 これはイブの1週間ほど前。

 今にも雪が降りそうな曇りが続く天気の中、『悪夢の真実』が着実と現実へと近づこうとしていた。


自分は朝はご飯派です。

パンは時間がない時とかですね。

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