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こっそり守る苦労人 〜黒き死神の心〜  作者: ルド
血に塗れた冬の悲劇。
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第4話 異能者。

そろそろ冷えてきました。

夏は暑過ぎて大変でしたけど、寒過ぎるのも嫌ですね(汗)

 世界の異能使いは割と多いが、魔獣と共に世間からは隠されている。

 日本だけでなく全世界に異能者は存在して、政府機関にも似た組織が活動している。


 日本には機関があるそうだが、家族や知人絡みな俺は面識がない。

 以前、サポート系の異能者を派遣してくれる機関の存在があると知ったが、面倒ごとに巻き込まれるだけだと親父やジジィから忠告され、一度知り合いから誘われたが入らなかった。





「大丈夫かい? 零?」

「はい、お騒がせしてすみません。柊さん」


 親父の友人である(ひいらぎ)幻蔵(げんぞう)さんに謝りながら、手渡されたホットココアを飲む。馴染みのあるホッとする味だ。流石は喫茶店のマスター。


 冷え切った血液の温度が戻っていくのを感じる中、ココアを飲んでいる俺をジッと見ていた凪から安堵の息が溢れた。


「馬鹿零が……心配させ過ぎ。本当にどうしてこうなったのかな」


 どうしてと言われたら、自業自得(・・・・)としか返せない。

 軽く眠りに入っただけで『悪夢』に繋がるとは……いよいよ破滅の未来が近いのかもな。


発作(・・)が起こったのが私の店で良かったよ。もし学校や外だったら即救急車か警察沙汰だろうからね」

「念のために貸切にして本当に助かりました」


 場所は柊さんが経営している喫茶店『猫まんま』。

 無精髭を生やしてウェイターの格好をしているのを見ると、酒が美味いバーのマスターに見える。

 テーブル席を借りた俺と凪は、学校の宿題をしつつ、冬休み期間について話をしていたが……。


「もう、少しの仮眠でも油断できないか……」

「前にも言ったけど、やっぱり長期の休みを取るべきだよ。ここしばらくアップデート(・・・・・・)を繰り返してるでしょう? 反動で来る精神面の負荷が尋常じゃない」


 神妙な顔の幼馴染が口にした『アップデート』とは、俺の【黒夜】に備わっている第三の能力。

 前の二つと違い攻撃系の効果ではないのは、名前を聞けば分かると思うが、その恩恵は他の二つよりも明らかに異常であり、明らかに代償も重かった。


「情報の『供給』と『上書き』。使用者をより進化させ続ける(・・・・・・・)特性とは……詳細を聞くだけならとんでもない能力に思えるけどね」


 凪以上に俺のことを見てきた柊さんは、難しい顔をして腕を組みつつも、ココアを飲む俺を意味深な目で見つめる。……本当は凪と一緒で止めたいのだと、その視線だけでよく分かる。……けど(・・)


「けど、休むわけにはいかんだろう? もう最近は俺が中心で街の警備をしてたんだ。虚勢でも大袈裟とかでもなく、抜けたら警備の弱体化があまりにも著しい。特にこの時期は……絶対に抜けれないのはお前もよく分かってるだろう?」

「それは! ……そうだけど」

「零……」


 バッと立ち上がりかける凪だが、俺の言葉もまた事実だと理解しており、寸前で止まると暗い顔でグッタリと座り込んでしまう。そんな彼女を不憫に思ったか、普段は見守る姿勢の柊さんが話に割り込んだ。


「街を守る異能者は何も君だけじゃない。君のお父さんや親戚の人たち、それに凪くんのお兄さんだっているんだ。たとえ魔獣が大量発生したとしても、万全の態勢で対処が……」

「――王の降臨(・・・・)が近いのは知ってます」


 それ以上、言わせる前に柊さんのセリフに被せて、俺はその単語を乗せる。知られていると思っていなかったか、それとも可能性は考慮していたか、反応は薄いが柊さんの表情に僅かな緊張が俺にはハッキリと見えた。

 

「仮に俺の穴埋めをするなら、外部の異能機関を頼るしかない。けど、そうした場合、また新たなリスクを背負うことになる」


 飲み干したカップをテーブルに置く。


「長い間、隠してきた異能技術、監視しているあちら側の扉、俺たち個人個人の情報。それらが露見すれば、外部の機関に対して今まで以上に注意をしないといけなくなる」


 だから協力を求める訳にはいかない。事態が事態なら妥協も出来たかもしれないが。


「それこそ、今の俺たちに対応するだけの余裕があるように見えますか? それとも厄介ごとの全て英次(えいじ)に丸投げして招き入れますか?」

「……」


 やはり、縁を切られても息子(・・)への負担は本意ではないか。

 そこで口をつむぐ柊さんは、何か言おうとしていたが、それよりも早く学校鞄を持って出口に向かった。


「じゃあ、もう遅いんで帰ります。あと凪、決まらなかった予定はあとでメールで送るから、確認と訂正があれば連絡してくれ」

「ちょっと待ってよ零! まだ話は……!」

終わりだ(・・・・)。魔獣が出てくる可能性が1パーセントでもある限り……」


 何も言えず黙り込む柊さんを押し除けて、座り込んでいた凪が慌て出すが、振り返るとそこで立ち止まった。


「俺が異能者をやめることはない。だって俺は――俺にはもうそれしか残ってない(・・・・・・・・・)んだから」

「――っ!? れ、れい……」


 こちらの視線を受けた途端、凍り付いたように立ち尽くす凪。

 何処か泣いているようにも見えたが、俺は気にせず馴染みの店から出て行った。

テンポ良くを目指します!

……無理な気しかしないけど。

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