初めての。
※一部過激な表現があります。
サトツさんにもたれる様にして、また他愛のない話をした。
もう何度目かな?
こうやって一緒にいるだけで楽しくて幸せな気持ちになれる。
はぁ。
やっぱり好き。
たまらなく触れたい。
そっと手を握ってみた。
顔を上げると、どちらともなく唇が近づいてキスをした。
ちゅっ。と触れるだけの軽いキス。
恥ずかしくなって目を逸らすと、頭の後ろに手を回され、もう一度キスされた。
『行こうか。』
サトツさんに手を引かれて歩き出す。
行こうか、ってどう言うこと?
この後もあるって事⁉︎
少し戸惑いながら、嫌、ではない。
サトツさんはどう思っているんだろう…。
それだけ気になった。
通りに出てタクシーに乗るとサトツさんは行き先を伝えた。
ホテルに着くと、フロントでキーを渡された。
『明日また迎えに来るから』
手を離そうとするサトツさんを引き留めて『帰らないで』と言った。
『…いいの?』
無言で頷く。
部屋に入ったとたん、靴も脱がずにキスをされた。
さっきまでの触れる様なのじゃない。
もっと激しくて、深いやつ。
腰を強く抱かれて、口を塞がれて、サトツさんの胸に必死で縋り付いた。
唇が離れ、荒い息が漏れた。
『サトツさん…好き……』
そう言うと、またキスされた。
今度は触れるだけの軽いキス。
何度も何度もキスをした。
自然と顔が緩んだ。
『がっついちゃった。』
と、少し恥ずかしそうに笑うサトツさん。
私も笑った。
恥ずかしくて、幸せで。
部屋に入って私は固まった。
最初に目に飛び込んできたのは、大きな窓から見える夜景。
さっきまで見ていたのよりも更に綺麗に見える。
窓際には景観を邪魔しない程度に、ソファとローテーブルが置かれている。
開け放たれたドアの向こうにはベッドルームが見えた。
これってスイートルームってやつ⁉︎
『疲れたでしょ?お風呂入っておいで』
そう言って反対側の白い飾りドアを視線で促された。
着替えの入ったショップバックを受け取るとバスルームへ行った。
1人になってみて、改めて恥ずかしくなってきた。
キス、しちゃったんだ…。
サトツさんと、キスしちゃったんだぁぁぁぁぁ!!
床にパタンと座り込んだ。
たぶん、顔真っ赤だ。
これからもっと凄い事するんだよね⁉︎
初めてってわけじゃないけど、過去に彼氏だっていたし。
でも、初めての時みたいに、ううん。初めての時よりも緊張する。
しばらく、そのまま動けずにいた。
あまり待たせたらいけないよね?
慌てて服を脱ぐ。
バスルームも広くて綺麗。
豪華というとり、スタイリッシュって言うのかな。
シンプルなんだけど、要所要所でセンスを感じさせる。
サトツさんみたい。
思い出して、またにやける。
お風呂あがり、悩んだ末、新品の下着をつけた。
その上からバスローブを羽織り、そっと部屋のドアを
開けるとソファでワインを飲んでいるサトツさんと目があった。
『お風呂、ありがとう。サトツさんもどうぞ』
立ち上がってこちらへ歩いてくるサトツさん。
目の前に来ると、またちゅっ。と軽くキスをされた。
『寝ないで待っててね』
そう言い残してパタンとドアを閉めた。
落ち着いていた熱が振り返す。
どうしよう。
そう言う事だよね⁉︎
覚悟していたはずなのに、また顔が赤くなる。
心臓、もたないかも…。
さっきまでサトツさんが座っていたソファに腰掛けると、薄らと体温が残っていた。
夜景が一層綺麗に見える。
心を落ち着かせるために、無心で見入った。
キラキラと煌めいていて、どこか現実離れしている。
夢なのかもしれない。
あんな素敵な人が私と、なんて。
どれくらいそうしていたのだろう。
ガチャリ、とバスルームのドアが開く音がした。
視線を向けると、私と同じバスローブを羽織ったサトツさんが真っ直ぐにこちらを見つめたまま、ゆっくりと近づいてくる。
その度に心臓の音が早くなっていく。
まるでスローモーションでも見ているみたいに、とても長い時間の事のように感じた。