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灰色とシガレット

作者: 春風 月葉

 はぁ…と灰色の濁った溜め息を吐く父親の姿に憧れた。

 父の灰色は白い雪の中に濃く映り、黒ずんだ空の先へと消えた。

 父のそれを真似て、私もはぁ…と息を吐いたが何も起こらなかった。

 そんな私を見て短く笑うと、少し遊んで待っているといいと父は言った。

 言われたように自分の腰ぐらいの大きさの雪だるまを作って遊んでいると、父の呼ぶ声が聞こえ私は走った。

 父は小さな箱から一本の棒を取り出した。

 ほら、咥えてみろと父は言った。

 隣で一回り大きないつもの箱から一本の棒を取り出して咥える父の仕草を私は真似た。

 口の中で棒はゆっくりと溶け出し、甘さを残して消えていく。

 父が空を見上げ息を吐くと灰色が、私が父を見上げ息を吐くと白色が現れた。

 灰色は空へ消え、白いは雪に消えた。

 父は寂しげな表情と視線を空から私に戻した。

 さぁ、帰ろうかと笑う父の顔はいつもの顔だった。

 今となって思えば、父から受け取ったラムネ菓子のシガレットは白い吐息に全く関係がないのに、それを魔法か何かのように思っていた私を父は面白がって見ていたのだろう。

 幼き日の思い出に温もりを感じ、空にいる父を見上げた。

 はぁ、と空へ吐き出した灰色は父の元まで届くだろうか。

 じゅっと手に持った煙草を灰皿に押し付けると私は辺りを包む白の中へ帰った。

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