表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あ、俺時空越えられます  作者: 月うさぎ
4/4

門番と門番と

「おかえりなさいっ」


門番が何時もの様に暖かな笑顔で海を迎えてくれる


「前から思ってたんだけどよぉ、なんでおかえりなんだ?」


ずっとモヤモヤしていた

ここは海の家じゃない

“おかえり”と言われる様な場所じゃないはずだ


「そっ、それはぁ「「かっっこいいでしょう!?」


茶髪の声をもう一方の黒髪眼鏡が遮って言った


「かっこ…いい?」


海自身も自覚するほどに気の抜けた、何ともアホっぽい声が漏れたものだ


「いらっしゃいだと居酒屋の様で嫌なのですよ」


「そ、それにこの門は海さんの世界へ繋ぐ海さんの門ですからぁ、ここは家の様なもんなんですよっ!」


なんとなぁく納得の出来る解答ではあったが、海が気になっていたのはそこだけでは無い


「あとさ、お前らって人間じゃないの?

年はとってないみたいだし…でも」


海も最初は人間だと思っていた

一つ一つの表情や髪の靡き方に反応のとり方、眼鏡などのアイテムもそうだ。


門番二人が人間でない、仮に想像世界の見せる幻想だとしよう

そうだとしたら可笑しな点が出てくる。

髪や顔や性格や…ここまで“人型”でなくても良い筈だ



長い長い沈黙__



何か聞いてはいけない話題に触れただろうか?

このダンプカーの様に重い空気を最初に取り払ってくれたのは眼鏡だった


細い口を震わしながら、何か恐れる様一言一言慎重に言葉を選んでいる様子だ


「この…この世界を誰が作っているか…ご存知ですか?」


海は当たり前の様に


「俺じゃないのか?」


と訪ねたが、眼鏡も当たり前の様にそれを否定する


「海さんが作っているのはこの扉の向こうの世界です。…ではここは?

現実と想像の1つ手前であるこの場所は?私達門番は?この門は?」


幾度も繰り返し責め立てられる質問に頭をパンクさせた海に、優しく茶髪が語りかける


「この世界“自体”を作り上げているのはマスターなんです」


「マスター?」


初めての登場人物に驚きを隠せない海。

(本名は?年齢は?性別は?そもそも人間か…?)

溢れ出す疑問の数々を全て汲み取ったのか


「マスターも元は海さんと同じクレアを持つ人間だったのです」


「当時想像世界へ繋ぐ為の門は潜って入る程小さくて、想像世界を利用する人達もそこを 静かに昼寝・勉強をする為の部屋 位にしか思っていなかった」


「けれどマスターの想像力は人並みはずれていましたので

日頃から机やランプや布団を想像して作り出していたのですよ」


「マスターの想像力はそんな小さな空間に収まんなくて、気がつけば少しづつ少しづつ空間そのものが大きくなっていき、それで出来た空間が今目の前にあるこの想像世界なんですよ!」


長々しい説明がようやく終わった。


マスター自体の事はあまり知れなかったが、この世界の成り立ちについて少し賢くなれたといった所だろうか



(あれ、結局何の話だっけ?)


話の終わりが膨大過ぎたせいで頭の方がすっかり白紙になってしまった海は、

右手で頭を3度掻き毟った後


「ま、いいや。今日は超近未来的な遊園地で頼んだぜ!」


と気に止めない様子で言った

門番達も同じ様子で答える


ワールドの設定が完了し、ゴウンと言う重い音と共に扉の向こうの世界がやって来る

そこに溶けていく海を見送り先程と同じ速度で扉が閉じて行くと、門番2人のスイッチが切れる。


スイッチが切れると言ってもパソコンや部屋の電気のスイッチとは意味が違う


人間が最初に想像するであろう活動停止のスイッチではなく、

緊張していた人間からそれが解ける

取り繕っていた自分のキャラから抜け出す。


今回は後者のスイッチが最も近い


「お前、やっぱ頭いいよなぁ。よく俺らの話題からこの世界の話題にすり替えたよ」


あんなにもおっとりとした弟キャラであった茶髪少年が、

急に高校に入ってイキったヤンキーの様に見えてくる


「マスターの話を出すのだって一か八かだったよ…お前、ボロ出すなよな!毎度毎度フォローする俺の気持ちにもなってくれ」


黒髪眼鏡の礼儀正しい姿はなんだったのだろうか、茶髪少年程ではないがこちらも大分口が悪い


「あいつ鋭いから正直ヒヤヒヤしたんだぞ」


「流石に気づかねーだろ!…よっぽどの事が無ければ」


何か心当たりのある様な口調で語尾を弱める茶髪少年


「そのよっぽどの事を起こすのが海の十八番だろ?」


そう言った黒髪眼鏡の表情はとても青ざめており、こちらも何か心当たりのある素ぶりだ


「大丈夫。きっと大丈夫なはずだ…きっと……」



2人して肩を落としながら息を吐く






そんな事よりこの2人に名前が欲しいものだ


「門番」では2人の事を同時に指してしまう

「茶髪少年」や「黒髪眼鏡」もなんだかしっくりこない

否、黒髪眼鏡はまだ良いのだ。

まだ特徴が捉えられている


一方で茶髪少年はどうだろう

この上なくダサい


ターバンでも巻いてくれたら良いのにこれといった特徴がない

「茶色いの」にしてやろうか…カサカサしたのが脳裏に浮かぶ事が難点だが…


「ま、お前がドジ踏まない限り大丈夫だろ!気を付けろよな、悠馬」


「わぁ~ったよ!!でも…万が一の事が起こったらフォロー頼むぜ、湊」



茶髪少年は悠馬、黒髪眼鏡は湊だそうだ

自ら名乗り出るとは…悩んだ時間を返して欲しい




矢張り茶色いのにしてやるべきか____

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ