ざんねん三銃士
「足腰が…いてぇ」
昨日は空を飛び回った後も色々やっていた為に、正直歩くのも、立つのも、座るのも、横になるのも、何をしても何もしなくても筋肉痛が海を襲った
「何だ、彼女出来たのかぁ~?このこのっ」
「俺らおいて卒業すんなよな」
最初は何を言っているのか分からなかった海だが、冗談めいた口調の友を見て察した
足腰の痛みだけで“そう言った”想像をするとは…まだまだ心は子供のままだ
(何の事か分からない読者の方はそのままでいて下さい。そなたは美しい)
「ちっげぇ~よ!つーか南‼︎なぁにが“俺らおいて”だ、貴様とっくに卒業してる癖に!」
南には付き合い始めて三年も経つ彼女がいる。自分はとっくに大人の階段を登って、その上から海を見下したのだ
だが、実は南もまだ青かった。彼女と恋人らしい事はしても、その先はしていない
残念な事に彼女が極度の潔癖症なのだ。最初よりは大分マシになったが、行為は絶対に無理だと断られている
体目的でなく心から恋人を愛する南を、もっと尊敬すべきだろう
「そう言う海!お前だって彼女いないってだけで本当はモテるの知ってんだからな‼︎なんだ?〈彼女はいない。作らないだけだ〉ってか!?死ねぇぇぇ~‼︎‼︎」
海がモテるのは本当だ
誰にでも気さくで優しく、下心無くサラッとかっこの良い事が出来る。
唯、付き合わずとも優しくしてくれる海とわざわざ付き合いたいと思う者は少ない
実際海には彼女がいた事があったが、付き合う前との変化があまりにないので振られた
ドンマイとしか言いようが無い
「悠斗、俺モテねぇからな!」
海はモテる
そう確信する悠斗には、確信する理由があった
今まで何度も女子達の恋愛相談に乗って来た。それも海関連の、だ。
悠斗も大概人が良いのだが、サポート係の様な形で裏方に回ってしまい恋愛に発展しない
その代わりに異性の友人がよく出来る
話を聞いて思った者もいるだろうがこの三人、“ざんねん”なのだ
見た目も涼しく大人びた南
誰にでも気さく、リーダー気質な海
子犬の様な暖かさを持つ悠斗
この組み合わせは滅多に見られない光景だろう
特にこれと言って共通した趣味も無いのにここまで三人の仲が良いのは“ざんねん”同士だからだろうか
あーでも無いこーでも無いと下ら無い話に花を咲かせているうちに帰りのHRが終わってしまった
今日の学校終了を告げるチャイムの音。
さぁ、放課後だ
あの大きな門が、脳裏で鮮明に思い出された