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あ、俺時空越えられます  作者: 月うさぎ
2/4

リアルとクレアと想像世界と

海がギュッと目を瞑る

次に目を開けた時、其処には海の何倍もある縦に大きな門が一つと

その脇に二人、白い洋服を着た少年が立っていた

年齢は、海よりも少し幼いくらいだろうか


「お帰りなさい、海さん。」


そう右に居る、黒髪に眼鏡をつけた大人な雰囲気の少年が言う


「今日はどんな世界にします⁉︎」


今度は左の、茶髪を纏った弟っぽい少年が口を開く



この二人は門番であり、

目の前にあるこの大きな門の先が想像世界となっている


現実世界と想像世界とを繋ぐ門の開閉

ワールドの設定 管理



其れ等を仕事とするのがこの門番達であった



「今日はそうだなぁ…川があって海があって森がある。そんな自然溢れるワールドがいい」


「人の配置は如何なさいます?」


「今日はいいや。あ、風強めで天気は晴れな」


「かしこまりました~‼︎」


「では…」



「「行ってらっしゃい」」




門番二人の声を合図に門の扉がゆっくりと奥に開けて行く

こんなにも大きな門が開くと言うのは、矢張りとても迫力のあるものだ。

海も毎日この光景を見ているが、この迫力だけはいつになっても慣れなかった



門の奥には何も無い。唯の“無”の空間が広がっているだけだ

海が其処に足を踏み込むと、突然“無”であった空間に命が吹き込まれた


辺り一面芝生に覆われ、遠方には堂々と構える森が見られる

その側には川が通っていて、魚やら鳥やらが楽しそうに踊っている


“無”であった空間に足をつけることで“想像した”世界が、命が吹き込まれた___


大きな扉がピシャリと閉まる

海以外の人間は見られず、吹き付ける強い風に乗って草木や太陽の匂いを感じられる


海の想像した通りの世界が広がっているのだ

これが海の持つ能力、クレア。

唯、クレアの本当の能力はこんなものでは無い

まだ自分の行きたい世界を門番に注文し、作り出して貰ったに過ぎない


クレアとはこの想像世界でのみ発動出来る、“世界の後付け”能力である



「川の上流までは車がいいな…そうだ、赤いオープンカーにしよう!」


海が頭の中で、前にテレビ番組で見た赤いオープンカーを思い浮かべる。

そして右手を何も無い平坦な場所にかざす。

するとかざした右手の延長線に、テレビ番組のオープンカーと全く同じものが現れた


海はそれに飛び乗って適当にアクセルを踏んだあと、適当にハンドルを切る

運転免許証を持ってい無い海が車を運転出来る筈がない

実際、現実世界でこれと同じ運転をさせてみたら事故になる事は、安易に想像がつくだろう


けれど今海の居る場所は想像世界

海の頭の中と言っても過言ではない


アクセルもハンドルもブレーキも適当で構わない

車の進行方向を、スピードを、全てを決めるのは海の想像なのだから


川の上流は矢張り下流よりも流れが速く、上流と下流では居る魚の種類も違ってくる

最も、其処にいる魚も一般的な食卓に並ぶ魚ではなく海が勝手に想像して作り出した産物だ。

食用と違って観賞用の魚___

ずう と眺めていても飽きない程に美しい


「テレビも無い。ゲームも無い。こんなアナログな世界なのに、この世界自体は凄く未来的だ__」


どこからか湧き上がってくるこの胸の高鳴りを、

思わず緩んでしまうこの口元を、この不思議な矛盾と一緒に噛み締めた








今度は黄色いヘリコプターを右手から出す。そして左手からはインカムを出し、何処にも繋がっていないそれを耳にあてる

勿論何の音も聞こえてはこないが、

ヘリコプターにインカムをつけて乗るのは海にとってロマンであった



今度も適当に操縦をするが、必ず思った方向へ機体が傾くのは気持ちが良い


だがヘリコプターと言う鉄の中では風を感じる事が出来なかった

大空を好きに飛び回るこの映像からは風を感じられるのに、体で感じられるものは機体の重厚感だけである


もどかしくなった海はインカムを足元へ放りハンドルから手を離す

ハンドルを握る操縦者は居ないと言うのにヘリコプターは美しい直線をなぞって飛び続ける__


現実ではあり得ない事だ


「バンッ」


重い重い鉄の扉をグッと力強く開ける



(あぁ、風だ。俺の感じたかった風だ!)



気の高まった海はその風に体を預け、重心を前に置く

無論海の足は機体から離れ、猛烈な勢いで降下して行く


海がまた想像をする

今度は自分が浮く想像だ


先程まで恐ろしいほど速いスピードで降下していた体が、まるで見えないトランポリンにでも弾き飛ばされたかの様にふわりと上昇した

海は重力に逆らってどんどん上昇する

元の場所にヘリは無い。

不必要になったものは海が想像しなくなった時点で自然消滅してしまう


下から、横から、上から、後ろから


四方八方から感じる風に揺られ、

雲の上まで飛んでみたり

逆に地面すれすれのところを飛んでみたり

思い浮かぶ“楽しいこと”を手当たり次第にやってみた


こんなに楽しい事が出来る

この世界に引きこもっていたくなるのも頷けるだろう








車やヘリだけではない

自分が空を飛ぶ想像をすれば空を飛べる。

美味しいケーキを想像すればケーキが出る。

ふかふかのベッドを想像すればそれが出る。



クレアと言う難解な能力を言葉で表すのであれば、








[想像する事で創造する能力]








と答えるのが一番適切だろう

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