第1話 捨てられた親子(前編)
俺は今中央大陸の西域にある中世ヨーロッパ風の国ブランク王国内の子爵領の領都に来ている。
この子爵領の産業は農産・牧畜と一般的な一次産業で成り立っていた。
そして今は冬気温も低く人々も自宅で過ごすことも多く街中も昼間は食糧の買い出しで人はいるが
夜は人通りが少なく開いているのは娼館と宿屋兼酒場位であった。
俺は宿屋の酒場でウィスキーをちびちび飲みながら周りに耳を傾けていた。
因みにツマミはソーセージにポトフとである。宿屋の主人に多めにチップをはずみ
ポトフは具だくさんである。人参・玉ねぎ・ラディッシュ・ベーコンが多めに入っていた。
塩は多めに入れてあり、普通の旅人には豪華なのは旅の中で覚えたものだ。
一般家庭や普通の酒場では塩はこの半分以下だろう。
そんな中他の客の話を聞いていた。
少しやせた男たち8人組が飲んでいた。
1人の男が言う。
「今年はライ麦が豊作で助かったよ。」
それに周りの男たちも、そうだと相づちする。
別の男も言う。
「玉ねぎも多く取れてたべ。ラディッシュも大きくて今年は安泰だ。」
続いて別の男も
「牛豚も多く出産して牧草も育ちがいい。山でのドングリが豊作だったのも良かったべ。
今年は領主様から卵の使用禁止で鶏も増えただ。まあ前の領主様が召されたので卵は領主様でも口にしちゃいけねえからな。」
これは俺も旅をして聞いた話で縁担ぎになる。
高位の者が死んだとき、動物で生まれてきたもの
を食べると死者が転生出来ないという風習であった。
別の男が言う。
「今年は餓死者がいないからいい年だべなあ。」
「うんだ、うんだ。」
結果から言うと今年は豊作と畜産の牛・豚・鶏が多く生まれ無事冬を越せるらしい。
情報からこの地方の税率は6割なので豊作だと無事すごせるのでまあマシな内政だったのであろう。
ある男がこんな話をだした。
「前領主様といやあメイドのアンナをお手付きしてたべさあ。」
それに対し隣に座っていた男が言う。
「ああ、マリーちゅう娘っ子がそうらしいなあ。子供ができたらお手付きしなかったらしいなあ。」
向かいに座ていた男が言う。
「アンナは可愛かったからなあ。前の領主様は女好きだったのが良くねえ。奥方様のお怒りはすごかったらしべ。女は嫉妬ぶけえからな。」
最初にこの話を切り出した男が言う。
「で、そのアンナが給金なしでお暇をいただくらしいべ。」
別の男が言った。
「この冬にか・・・・。大奥様もひでえ事をなさる。」
他の男が言う。
「シーッ!!大きい声で言うでねえ。」
「悪かっただ。ただ、アンナは娼館に行くしかねえが大奥様の目があるで、
この街では無理だな。他の街・村に行くにも金はねえ。実家も大奥様の怒りで助けることは出来ねえだ。かわいそうになあ。本当に女の嫉妬は怖えべ。」
他の男たちも同意してた。
その話に俺は怒りを覚えた。
そのアンナと言う女性は全領主に手籠めにされ、嫁にバレたら無視していた。その嫁も嫉妬でわざわざ冬に解雇給金なしは色々難癖を付けたのだろう。人として許される行為ではないが。
それよりも、そのアンナが屋敷から放り出されたときが問題だ。
親子凍死が確立が高いがこんな酒場で噂になるくらいだ。
良からぬものが聞けば親子共に死ぬ前に手を出すだろう。
俺は怒りを抑えながら子爵邸に子飼いの偵察用蜘蛛を放った。
蜘蛛は屋敷内を探索するがそれらしい親子はいない。
だが、屋敷内のある部屋で情報を掴んだ。
40代の女が居てブツブツと言っていた。
「やっと、やっと、あの女を追い出してやったわ。あの人を惑わせ。
子を宿した時は気が狂うたわ。」
いや、今も十分狂ってるよと心の中で突っ込む。
そして、これ以上屋敷に蜘蛛を置いても無駄だ。
街に蜘蛛を放ち探索をする。
探索しながら俺はカウンターに行き宿屋の主人を呼んだ。
「ご主人これを」と銀貨を数枚握らして話しかける。
主人は怪訝そうにして答えた。
「何が聞きたい。」
俺は言う。
「この街の顔役を知りたい。」
しばらくして主人は黙ったまま、
2枚の木の板を俺に握らせた。
そして店を出た俺は呟く
「ヒルデ、俺の位置に・・・・・・・。」