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署に戻ったるとすぐに工藤係長と高谷からのお怒りのメッセージかま贈られた。だがすぐにその怒りは静まり会議が始まる。この中で1番の新人である愛華が捜査会議用のホワイトボードを取り出し自分達が分かった事を書き始めた。書いているのは鈴木尚、小野寺美玲、原大雅、飛騨純子の名前と被害者江原達也の関係を書いた。
他の班は収穫は無かったらしく何も書かずにただそれを眺めているだけ。書き終わり自分の椅子に座っている愛華に4人のことをメモした手帳を借りる。僕はそれを見ながら会議に参加することにする。まず最初は高谷が話すようで立ち上がった。
「まず、俺たちの班は被害者の両親に話を聞きに行った。両親共にいたが母親の方が錯乱状態でな。まともに話を聞ける状態ではなかった。父親の方も母親ほどではなくても混乱を隠せていなかった。だから、日を改めると約束させて戻って来た。以上だ。」
言い終わるとすぐに自分の席に座った。次に立ったのは真弓でメモ帳を見ている。それを見る限りでは何か収穫があったのかどうか?僕は鼻と口に手を当て愛華の手帳から目を離した。咳払いをしてから真弓はゆっくりと口を開く。
「えっと、まず目撃情報ですがありませんでした。地元警察と連動してもう少し捜査を続けますが恐らくはこのまま収穫がないままでしょう。監査結果ですが、被害者江原達也さんの死因は溺死。溺れて死んでいました。監視官の話だと、肝臓の温度から見て、12時間たっていなかったそうです。」
「ちょっと待て!部員は江原達也がサーフィン1番上手だと言っていたぞ。そう簡単に溺れるか?しかもこの時期の海は穏やかだしな。」
「黙って聞けないのか!」
僕が真弓の説明に口を出すと高谷が大きな声で僕のことを怒鳴りつける。耳がジンジンとするような大きな声でしかも僕の耳元で。
「すみません。真弓さんどうぞ続けてください。あと体中のまぁ背中にある打撲痕のことも教えてね。」
また高谷に睨まれているのでここで話をやめた。真弓は頷くとまた咳払いをして、口を開く。
「はい、あと説明するのは北河さんの言っていた打撲痕の事です。それは死んだ後に付けられたものだと言っていました。心臓が止まった後に殴られて出来たものだと。以上て説明を終わります。」
そう言って無難に報告を真弓は終わらせて席に座った。僕のデスクにいつの間にか、メモが置かれていた。内容は貴方が説明して。恥をかくのはごめんだわという内容。相変わらずの冷たさだね、愛華さん。僕は立ち上がり、真弓のように咳払いをした。それに気づいたのか真弓はすごく嫌そうな顔をする。僕はその顔で少し笑ったが、すぐに高谷に睨まれてやめた。
「被疑者は5人でさっき連れて来たアルコール中毒のあの男とそいつがコーチしている部員4人。分かったことはなし。アリバイも聞いてない。」
「何言ってる?1番最初に聞くのがアリバイだろう。ふざけてんのか?」
「話は最後まで聞くんじゃないの、高谷さん。」
揚げ足を取るように高谷のことを指差した後に僕はまた話始める。
「でも収穫がなかったわけじゃない。今の気分の色を聞いて来た。それでかなりの事が分かるよ。後、驚いた時の顔の形や表情も。だから、高谷さんよりは情報あるよ。」
「好きな色がか?」
「違う。今の気分の色だ。好きな色とは違う。全然ね。心理学信じてない?」
「ああ、もちろん信じてない。茶番だ。」
「ははは。馬鹿だなあんた。」
「おい!」
高谷は立ち上がりなごら怒鳴りつけてくる。でも人間は慣れるもので先ほどよりは耳がジンジンと痛まないのがよかった。立ち上がりこちらに向かって来ようとするが殴るのだろうか?ここで殴れば現行犯の暴行罪だし、停職、もしくはクビだ。
「殴るの?暴行罪だよ。刑法208条に引っかかるし運がよくて停職、悪くてクビだ。」
僕がそう言うと少し落ち着いたのか、席に着いた。僕も内心では一安心していた。痛いのは嫌いだからね。
「まぁ心理学が信じられないのも無理はない。見えないからね。でもその固い考えが警察の悪い所だ直した方がいい。証明しよう。高谷がさん、僕の方を見て。するのはそれだけでいい。あとは僕が貴方の考えを読み取る。」
ふんと鼻を鳴らした後に高谷は僕の方を見ていた。だから僕も見返すように高谷の事を観察する。その様子を見て、真弓は苦笑。愛華は溜め息を、ついた。
「僕の事をうざがってる。でもそれは僕じゃなくても分かる。最近贈り物をしたでしょ、奥さんじゃなく竹林さんに。本人は気づいてないけどそれには、仕事以外の感情が入っているよね。でも奥さんがいるし堂々とは出来なくて、もどかしく思ってる。貴方は隠したりするのが嫌いだから、何とかしたがってるけど、無理だよ。そして、ちなみにもし本当に心が読めるならこの事がバレたら困ると思ってる。当たりだろ。」
僕は笑って言った。高谷の所まで歩いて近寄り、耳元で言った。
「竹林さんとは両想いだから言っとくけど浮気はダメだよ。年の差結婚はいいけどね。」
高谷に、ウインクしてから僕は大きな声で言う。
「ちよっと昼休みを取るよ。腹ペコで死にそうだ。」
「今何時だと思ってるの?許されると思う?」
竹林が久々に口を開く。だが、それを無視して僕は会議室を出た。腕時計を見ると2時16分、今から車で行けば、被害者が通っていた高校にホームルームが、終わる頃に着くはずだ。その時にアリバイや諸々事情聴取できる。学生だし任意同行は避けたいが嫌ならそうしなければならないだろうと思いつつ歩く。だが問題が1つ。移動中は寝てて場所を覚えていない事。愛華と行くのは高校に未練がありそうだから嫌だし、竹林と嫌いだし反対するから嫌だ。高谷は論外。消去法的に真弓を誘おう。高校好きそうだし、見た目と考え方が学生っぽい所もあるから話は出来そうだし。署の入り口まで来た所でポケットから電話を取ろうとすると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると立っていたのは竹林。
「何してるの?草原さんが言ってたから来たけど、今から高校へ行くの?なら連れて行きなさい。貴方が何言ったか知らないけど、あの後、意味深な目つきで高谷さんに見られて落ち着かないのよ。」
「まぁ高校行きますから、どうぞ一緒に行きましょう。でも運転してね。僕したくないから。あとドライブスルーでドーナッツ買ってから行こう。今僕、腹ペコで死にそうなんだよ。」
「抜け出す嘘じゃなかったのね。多分嘘って草原さん言ってたけど。」
「上手い嘘には少しだけ本当の事が入ってるんだ。これ、上手に嘘をつくやり方ね。じゃあ行こう。」
僕は車へ向かって歩き出した。竹林の溜め息の音が聞こえたがあえて無視する事にし、歩いた。
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「何でここに来るの?高校に行くんじゃなかったわけ?ここは私には葛西臨海公園にしか見えないんだけど。」
「そうここは葛西臨海公園だよ。逆にそれ以外に見えたらどうしようかと思っていたところだよ。」
砂浜に人気はほとんどないり監視員以外は誰もいない。あるのは、死んだ江原達也の死んだ遺体の白のマークと黄色いテープだけ。確かに凡人は何故ここにと思うだろうが僕には来て確かめなければならない事がある。歩き難い砂浜をまた歩きながら、遺体発見現場ではなく監視員がいる所に向かった。そこには数人の監視員がいて全員が若い。おそらく20代だろう。僕と竹林が近づくと嫌そうな顔をし、僕らを威嚇した。それでもあまり目力はなく、高谷よりは怖くない。
「すみません!ここで、行方不明者捜索願い出してない?多分出しているんだと思うんだけど。」
僕の発言に驚きを隠せていない若者方だが、1人の男の監視員がこちらの事をよう観察してから言った。
「ええ、捜索願いは出しましたけど、優先は殺人事件という事で後回しにされてます。貴方は警察の人ですよね?何故そんな事も知らないんですか?」
「僕は警察だよ。ここの千葉県警じゃないけど、関東全域に捜査権が認められてる警察ね。これ証拠!」
そう言いながら僕は警察手帳を見せびらかした。自分の名前と僕の顔がしっかりと載っているそれを監視員はまじまじと見ながら承諾したように頷き僕への敵対心は無くなったようだ。手帳には所属も載っているからだろうか、千葉の、警察じゃないと分かったらすぐに睨んでいた顰めっ面をやめてくれる。わかりやすい奴らと言うのが僕の第1印象。悲しいくらい頭が空っぽという事がわかる。
「何が聞きたんですか?捜索願いは千葉県警から聞けるでしょうに。」
「僕達も同じだよ。千葉とは仲が悪くてね。全然教えてくれないんだよ。だから出した本人の君達に話を聞こうと思ったわけさ。どう?僕は生きているその人の捜索をしたいと思ってるんだけど、どうかな?」
「それなら、良いですけど。その人は今日起こった事件で殺害された男とそのお友達のサーフィン仲間と仲が悪いと言うか、なんて言うか、子供が危ないから、ここでサーフィンするなって毎日言っていましてね。それに居なくなったのが今日なんです。」
「分かったもうそれだけでいい。警察はそんな些細なことでも解決の糸口に出来るんだよ。それじゃあ。」
監視員に僕は頭を下げずに帰り、竹林はきっちりと礼儀正しく頭を下げていた。監視員からしばらく離れてから竹林が俺の事を観察しているように見ていた。
「何?まぁ言わなくていい。探さないよ。ぼくがそんな事するように見える?まぁ見えないから観察してるんだろうけどね。」
「ええ。そうだと思ったわ。これでようやく高校に行けるわけ?」
「いや、やっぱりご両親の方に行こう。その方が面白い。」
電話を取って真弓にかける。何か言いたげそうな顔をする竹林だが指を立てて、静かにと合図した。恐らく高谷か係長と話すのだと思ってるのだろう。僕は2人の番号知らないけど。
「はい、草原です。」
「うん、僕だ。今から愛華と一緒に高校に行って来て欲しいんだけど、書類整理とかもしかしてしてる?」
「いえ、暇してます。佐々木さんと行けばいいんですか?」
「そうだ。あとこれだけ質問して。被害者と昨日何してか、江原達也が同好会に入って同好会かどんなふうに変わったかを。それを1人1人に個別で聞くんだ。みんな同じ事を言うと思うから、誰かしらの名前を使って、この人は違う事を言ってたけどね的な事を言って。いい?頼むよ。」
「もし、みんなバラバラの事を言ったらどうします?」
「大丈夫、言わないから。じゃあ僕の引き出しから録音機を出して、現場のことを全て録音しておいて。何時間かかっても残業してでも見るから。じゃ。」
電話を切ってから竹林を見て行こうかと言う顔をした。手を組んで、バカねと言うような顔をする竹林に今日は異常にムカついた。そんな顔をされるのはいつもの事なのに。
「報告聞いてなかった見たいね。、錯乱しててなにも聞けないし、まず第1に家に入れてくれないわ。」
「それは高谷だから。僕は違うし、入れてもらえる。これは確信してる。ちゃんと心理学に基づいて言ってるよ。」
「どうでもいい。」
「でしょうね。僕は心理学を信じてるけど。行くけどいいかな?」
車を指差して笑いながら言った。深い溜め息の後に頭を縦に振った。
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車で行っても中々の距離の所に被害者の家があった。かなりの大物であることは間違いない。一戸建てだし大きさも中々なもの。都会のしかも、千葉のど真ん中でだから、東京ほどじゃなくてもね。
扉の前にたってから竹林は警察手帳を出した。僕も出した。わざとらしい咳払いをして、
「君には警察手帳をしまってもらうよ。」
「どうして?」
「心理学を持って考えればわかる。ほら、早く。」
それを言うと同時に扉を叩いた。インターホンを、鳴らせばいいのにと叩いた後に気づく。僕ながらアホだなと反省した。仕方なく僕を信用したのか、手帳をしまった。すぐに家から物音が聞こえ始め、扉が声と同時に開いた。声は太く低い音だった。
「何でしょうか?」
「すみません、また来ました。警察です。」
手帳を見せながら、僕は微笑んだ。扉を開けたあったの後ろにはきちんと妻であり母であろう女性が立っていた。
「こんにちは、奥さん。今日の朝は申し訳ありませんでした。警察の北河と言います。僕は貴方の力になりたい。だけど貴方が話してくれないことにはどうしてあげれば、いいのか。そして犯人をどうやって探し出すかが分からず、解決が難しいでしょう。だから貴方方の力を貸して欲しい。お願いします。」
久しぶりに頭を下げた。それにつられ竹林も頭を下げる。日本のお辞儀という教育がきちんとされている証拠だ。悪徳商法の入れてくれるまで帰らないというようにずっと頭を下げた。しばらく経ってから口を鳴らす音が聞こえる。
「分かりました。お入りください。息子のことをお話しします。私は父親の者で普段の息子を見ていない。息子のことは妻から話す。それで構いませんか?」
「ええ。問題ないです。」
竹林が口を挟んできた。だが、奥さんは竹林のことを睨んでいる。ちょうど息子のことをしかる母のようだった。
「竹林さん。署に帰って。話は僕が聞くから。お疲れ様。」
察したのか竹林はすぐに引き下がる。てっきり高谷が、怖くて錯乱したのかと思ったが、どうやらただ単に竹林が、気に入らなかったらしい。普通の刑事なら捜査妨害で逮捕するけど、僕は普通じゃないからしない。
家の中に入って行くと、長い廊下の奥にリビングがあった。夫は気を使ってか扉を閉めてから、席を外した。ダイニングのある大きめのテーブルの前にある椅子に座ると、コーヒーを、出されるので礼は言わずに頭を下げて頂いた。僕の好みに近いが少し違う90点というところか。
「それで何を聞きたいんですか、刑事さん。」
「はい、正直な話、今警察は何もつかめていません。死因も溺死なもので指紋が、取れてないんです。ですので、まず容疑者がいない。」
「刑事さんの言いたいことは分かりました。息子はいい子でした。彼らとつるんでサーフィンをするまではですが。親孝行でリーダーシップもある。文句無かった。生きてさえいてくれれば。」
「なるほど、では彼のことを恨んでいる人間はいないというこでしょうか?それとも信じたく無いだけですか?」
「いい感じでガツガツ来るのね。」
「話をするのが仕事ですから。まぁ正確に言うと、話を聞くのが仕事ですから。」
奥さんはコーヒーに手を伸ばし少しだけ口をつけた。それから僕がいつもやっているように人の本質を確かめている。そんな事をすれば犯人に疑われやすくなると分かるだろうに。しかも錯乱していたようには、見えないほど落ち着いている。
そんな時僕にメールが来た。失礼と頭を下げてからメールを見ると竹林からで非通知のメールボックスに入っている。内容は泣き出して大変でしょうと。ただそれだけの内容。でもその内容と今の奥さんの現状はまったくあっていない。泣きわめくどころか錯乱すらしていない。頭に瞬間的にはてなが浮かんだがすぐに解決する。
「ここで言っていいか、わからないですが奥さん、息子さん死んで喜んでませんか。でも犯人候補から外れたい一心で錯乱している振りをして、いかにも悲しんでいるように見せている。違いますか?」
「どうして、そんな事を言えるの?」
「仕事ですから。そういう事を言うのも。」
淡々とした口調で出来るだけ私情は入れずに話を進めて行く。これが僕の仕事と自分に言い聞かせながら。
「でも、正解ですよ。うちの息子はバカ息子ですからね。人生のレールを用意してやってるのにそれには従わずに自分のしたいことばかり。サーフィンなんてやめて勉強しろと言ってもサーフィンばかり。親孝行なんて知らない子です。死んで当然ですよ。ですがやってない。」
奥さんは怒鳴りながら言った。興奮したのかとても早口で少しだけ聞き取りづらかったが、何とか聞き取れる。今の発言が自分を容疑者第1候補になったことは理解しているだろうか?
「分かりました。では最後に今の気分は色にすると何色ですか?」
「最高の気分。呪縛から解放されて本当にいいわ。」
「なるほど。」
狂気に満ちた姿で第1印象から遠く離れた姿だった。椅子から立ち上がり玄関に行く。それを奥さんは見送りにかついてきた。背中が睨まれているようで背筋が凍ったような気分だった。どうも、と頭を下げると奥さんは自分の名刺を渡してくる。
「今の発言で私が第1候補者になっただろうから渡しておきます。いつでも電話をしてくれて結構ですよ」
江原愛子と書いてある名刺を受け取り僕は署に戻るために車に戻った。そして出来ることならもうここには来たくなかった。僕は親が子供を殺すとは思いたくない。それを僕は再確認した。