二の舞いとは
「反して、二の舞は降ろした神に、天界へと帰って頂くための舞だ、神は本来天界に御座す、それは神が地上に居ては大きすぎる力が与える影響があるからだ。」
パワルフはとくとくとセリオにつがれた酒に口をつけながらリナル族が古くから大切にしている舞の説明をしていく。
「一の舞は祝いと許しと乞い願うもの。二の舞は生まれた子の祝福への感謝と生まれた子を天界に連れて行ってしまわないように乞うもの。」
「天界に連れていかれる…?」
「子は死にやすい、死ねば魂は神のみもとに帰る…だからこそ乞う、そしてその子を齎した神に感謝し、舞と祭りで楽しんでもらう」
だからリナル族にとって祭りと舞は重要な物でその意味も重いものだと、セリオにパワルフが告げるとフェルムンドがそれに補足する様に口を開いた。
「一の舞は神降ろし、二の舞は神に帰って頂くためのもの、神は地上に居すぎては良くないことが起こる、特にそれが誕生祭であったならば生まれた子を神が“気に入ってしまった”ということになるのじゃ、セリオ」
「それって…」
顔を真っ青にしたセリオにパワルフもフェルムンドも何も言わない。セリオが浮かべた想像が間違っていないのだとそれが暗に告げる。
「でも、神は…祝福をくださったのに」
「実際に二の舞いが行われなかった時、産まれた子は神に連れてかれたそうだ、たとえ嵐だとしても生まれた七日後の昼に一の舞を、夜に神を帰す舞をしなければならないんだ」
それは確かに儀式であった。セリオが感じたことは間違いではなかったのだ。
そして舞手はリナル族の長が執り行う。何故ならリナル族の長が一番神に近い存在だからだった。
「エルフ族にはそういった舞ありませんよね、長老…」
「当たり前じゃろう、エルフが例え同じように舞ったとて神降ろしなぞ出来ん」
煙管が恋しそうに串料理を食べながらそう告げるフェルムンドにセリオは益々リナル族という存在が分からなくなっていた。
古くからエルフの友だったという森と同じ名を持つ種族。何故リナル族だけが神降ろしをし、何故神はリナル族に応じるのか。
「…セリオ、お前が今持っている疑問は何れわかる時が来るじゃろう、だがそれは今ではない」
「長老、でも」
「急いだとて答えはまだわからぬ、なに、リナル族に比べては短命だがエルフ族にも時間はたっぷりとある、お前がいずれ親となり祖父となり知識を深めながらもリナル族と関わるならば答えから自ずとやってくるさ」
フェルムンドの言葉にセリオはなんとも言えない寂しさを感じながら渋々と頷いた。それをパワルフは微笑ましげに見ていた。
「セリオ、リナル族の役割を知ったならば、どう思ったのか俺に話してくれよ」
「パワルフ殿に?」
「ああ、その時を俺も心待ちにしている」
珍しく微笑んでいるパワルフにセリオが居心地悪そうに身動ぎし、それを共に来たエルフの若者が笑えばセリオもつられるように笑った。
何れリナル族について自分が知ることが出来たなら真っ先にパワルフの元に来ようとセリオは胸に深く刻み込んだのだった。




