祝の席で語る
それからは宴が始まる。酒に食べ物に思い思いに歌い踊る。
「なんていうか、ほんと俺たちの村と違うんですね、長老」
セリオが注がれた酒に舌づつみを打ちながらぽつりと零せばフェレムンドはしわくちゃの顔を弛めた。
「そりゃそうじゃろう、いくら住む地がすぐそばと言えどエルフはエルフ、リナルはリナルじゃ文化も歴史も違う」
「あの、一の舞っての…本当になんか儀式って感じがしました、祭りだけど…とても大事で神聖なもので…」
温かく恐ろしい。
そう零したセリオの背中をフェルムンドは思い切り叩いてやる。すると強ばっていた力が抜けてセリオが痛みとともに息を吐いた。
「一の舞は始まりでしかならぬよ、歌でもあったろう、始まりだと…今びびっていると夜が大変だぞ」
「けほ、…二の舞いですよね、さっきの一の舞とはどう違うんです?」
ちびちびとセリオが酒を口にしながら問いかけるとフェルムンドは自分の顎を撫でながら目を細める。
「一は始まりであり忠告と祝の物じゃ、ならば二はなんだと思うかの、セリオ」
口寂しそうにキノコと肉が刺してあった串を咥えて問いかける。セリオも串に刺さって焼かれたものを食べつつ考えた。
リナル族とエルフ族はあまりに違っている。フェルムンドが言うように、歴史も、文化も。
それでもセリオは考える。エルフ族も祭りを告げる舞はある。それがリナル族にとって一の舞ならば。
「終わり、? でも祝の席で終わりってのはあまりに不吉じゃありません? ましてや子の誕生祭ですよ」
「不吉じゃろうて、だがリナル族は絶対にその舞をやらねばならぬ」
やらぬ方が子に悪いのだとフェルムンドがしわくちゃの顔を顰める。セリオや他の若いエルフはその先に語られるものを聞き逃さまいと耳を傍立てた。
「一の舞は神を下ろす」
そこにフェルムンドでは無い声が降ってくる。弾かれたように顔を上げたフェルムンド以外の面々はついで直ぐに頭を下げた。
「お邪魔しております、先程の舞は見事でしたパワルフ殿」
セリオが代表して挨拶の言葉を送ればパワルフはいつもの表情の薄い顔で軽く首を振った。
「畏まらなくていい、楽にしてくれ、祝いの席だ」
「パワルフ殿の許しだ、楽にしろお前達」
パワルフとフェルムンドにそう言われればいつまでも堅苦しい挨拶をしているわけにも行かずまた思い思いに楽しむこととなった。
「挨拶が遅れて申し訳ない、フェルムンド殿」
「いやいや、仕方なかろう、パワルフ殿も主役の一人じゃろうしな」
「そう言って頂けると助かる…所でセリオはどうやらリナル族について知りたい様だな?」
小さい頃から相手をしてもらっていたパワルフに頭が上がらないセリオはダメだったのだろうかと恐る恐るパワルフに目を向けた。実の所、パワルフに聞かれるとは思ってもいなかったのだ。本来ならエルフの里に帰った頃合を見計らってフェルムンドに教えをこえば良かったのだろう。
だがあの舞を見てからどうにも気が昂るというか、興奮しているというか、落ち着かないのだった。
「あの、一の舞は神を下ろすってどういう?」
「そのままの通りだ、一の舞で子が産まれたことを神に告げ、許しを乞う、そしてその喜びを分かってもらうために神を下ろす…一の舞はそういった意味合いの物だ」




