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リナルの森  作者:
【1】生まれ落ちる
13/24

生まれた喜び


 

 ポンッ

 

 パワルフを囲むように背筋を伸ばし四方にいる顔を隠した男女。そしてパワルフ自身も顔を隠して高い櫓の上にいる。見上げる形で柵もないその場所でゆっくりとパワルフは顔を上げ太陽を見上げる。

 

 目を塞いでいるというのにまるで見えてるかのように。

 

 いくつもの太鼓を周りに置くもの。スピツアと呼ばれる横笛を持つ者。小さな弦楽器を持つ者。そして何も持たぬ者。

 

 それらに囲われるように空を見上げる双剣を手にしたパワルフ。

 

 ポンッ─ポンッ─

 跳ねるようなけれど胸に響く太鼓の音がする。次いで弦楽器の弦が弾かれ、安定感のある音が広がり、スピツアも高い音色で奏で始める。

 

 空を見上げたままパワルフが一歩踏み出す。パワルフの足に付けられたアンクレットが鳴らした音は小さな音だったはずなのに、それも一つの楽器のように音を響かせる。

 

 「“はじまり を 告げるのはだれだ”」

 

 溶け消えそうな声で、聞いた人は気のせいだったかと首を傾げるほどほかの音に比べてその歌はとても小さかった。

 音に合わせた歌はやがて周りに響き出す。元からそう決まっていたのだと言うように。

 「“それは この世に生まれたことを喜ぶ言葉か”」

 

 

 

 パワルフが剣を構え、太鼓が止まり、弦も止まる。スピツアの音がその歌を肯定するように少し音が大きくなる。

 

 「“それは 苦しみも 喜びも 悲しみも 幸福も すべてが始まるということ”」

 

 双剣を持ったパワルフが舞う。アンクレットの音を奏でながら。

 

 「“それでも いいと言うならば”」

 

 村人達が口を開く。慣れたように開かれた彼らの口は慣れぬように開かれたプァナの口は同じことを告げる

 

 「「「神へ許しをこいましよう」」」

 

 それは歌だったのかも怪しい声色でただ楽しげなようで真剣な様でいろんな思いを乗せていた。

 

 シャラン!と一際大きなアンクレットの音が響く。まるで魔法でもかかったようにその音は大きくて、双剣が太陽の光を反射してキラキラと光る。

 

 「“歌えや 踊れや 泣けや 叫べや ”」

 ダダンと太鼓が響く。優しい弦の音が慰めるように鳴る。スピツアの音が楽しそうに跳ねて。

 

 「“神よ 我らに名を与えし神々よ 新たな門出を迎えし子に許しを”」

 

 エルフ族の長老を除いた若者たちは目の前で奏でられる音と舞と歌に唖然とする。

 

 何もかもが違った。エルフ族にも祭りがある。祭りはあるが、あまりにも違ったのだ。楽器も舞も、歌も。

 

 「“許しは 得た 生まれた子 新たな子 許された子”」

 

 「“名はラシュン 雷を越えて生まれた 勇敢なる花の娘”」

 

 まるでリナル族の者のみに違う物が見えているかのような、何かの契約のような。

 

 「“神の祝福があらんことを”」

 

 太鼓も弦もスピツアも奏でるのをやめて、最後に舞手が大きく空に飛び地に降り立つ、まるで初めて降り立った神のように。

 

 着地とともにアンクレットが大きく跳ねて音を奏で終えると、再び静寂が訪れる。

 美しい双剣が鞘に収められると、人々は堰を切ったように歓声を上げた。

 

 「おめでとうううう!」

 「パワルフ! 最高だったぜ!」

 

 櫓から降りてきて汗だくのまま目元を隠していた布をそれぞれが外して息を着くとわっと周りに人が駆け寄り口々に褒め肩を叩く。

 

 「みんなもありがとう」

 少し照れたようにパワルフは笑いつつもプァナを探し、そして目当ての存在を見つけるとすぐに駆け寄る。

 

 「プァナ!」

 「パワルフ…素敵だったわ! とても、とてもよ!」


 感極まって泣き出すプァナの肩を優しく抱いてプァナの腕の中できゃっきゃと笑う今回の主役…ラシュンに周りに集まった者は例外なく頬を緩ませた。

 

 

 

 

 

 

 

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