エルフの長老
────雷雨の後に生まれた子。エルフの長老はプァナの腕に抱かれた小さな存在に思わず笑みを浮かべた。
「来て下さってありがとうございます、フェレムンド様」
「様付けなんてよしてくれ、ただの老耄じゃ、それに友の子を見れたこと…本当に感謝しておるよプァナ殿」
プァナはその言葉に目を細め微笑んだ、しわくちゃの笑顔で返し、フェレムンドは改めてラシュンの顔を見る。
──持ってきた品を受け取ってもらい村をみて回ったあとプァナに呼ばれエルフ族一行はプァナ達の家へと招かれた。
静かにするようにと注意はされたものの、六人ともが通され、こうして念願の子供へと会うことが出来た。
「ふぁー! かわいいなぁっ」
にやにやと頬を赤らめながらセリオがプァナを遠目に見る。リナル族は特別美しい容姿をしてはいない。醜くもなく美しくもなく、よく言えば程よく整った顔立ちをしている。
それに反しラシュンは不思議と感じる美しさがあった。
フェレムンドはただただ目の前の存在が奇跡のようだと感じていて、リナル族とエルフ族では流れる時が異なることを誰よりも理解してるからこそ友人の子を見れるという喜びを感じていた。
「パワルフ殿は?」
「剣舞の支度をしております、お昼頃に一度目の舞が、月が真上に来た頃に二度目の舞がありますので…皆さんもどうか泊まっていってくださいね」
通常の四季の舞は朝に行う。日が明けたばかりの薄暗い中、舞い始め、太陽が上がった頃にそれが終わる。
誕生祭は異なり、昼に一度目の舞を、夜に二度目の舞をする。一度目は祝うための舞い、二度目は乞うための舞。
産まれたことを喜び、長い命を下さるようにと神に祈る。夜に亡くなる子が多かったと言われるはるか昔からこの決まりができた。
「ありがとう、プァナ殿」
フェレムンドはこの誕生祭に来る際は若いエルフを連れてくることにしている。誕生祭が彼らの成長に大きく関わりがあるからだ。この祭りはただの祭りでは終わらず、見たもの全てに関わりのあるものになる。
ポンッ
外から軽い太鼓の音がする。プァナとフェレムンドはそれに顔を上げセリオ達も二人につられ顔を上げる。
「一度目の舞の支度ができたようです」
プァナが眠ったままのラシュンを起こさないように抱き上げると先導するように先に家を出た。
大きな櫓の上で真っ青にスピツが刺された衣裳を来たパワルフが膝をつき太陽に頭を垂れている。その脇に雲を表す絵が描かれた布を顔の前に垂らした数人の男女が背筋を伸ばし正座をしている。
「はじまるわよ…ラシュン」
プァナが胸の中で眠るラシュンに目を向けずただ櫓上のパワルフに目を向け続ける。
一の舞が、はじまる───。




