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リナルの森  作者:
【1】生まれ落ちる
10/24

誕生祭の早朝


 プァナは空が薄らと明るくなる頃に目が覚めた。隣を見ればラシュンもパワルフも眠っている。眠った二人の表情はとても良く似ていて微笑ましかった。

 

 外からは既に色々な音が聞こえており、舞台の担当者が準備を進めているのが分かる。

 

 今日はラシュンが生まれてから迎えた七日目の朝、誕生祭の日だ。

 

 「パワルフ、起きて」

 「……ん」

 「ほら、もうみんな起きて準備してるわよ? パワルフも着替えなきゃ」

 「…おはよう」

 

 ゆっくりとプァナがパワルフを揺らして優しく起こせばラシュンをベッドに残してベッドから出る。

 

 「ラシュンは?」

 「私が見ておくわ、料理は母さんたちが見てくれるし」

 「あぁ、エルフ族も手伝いに来ると言っていた」

 「軽く挨拶だけしとけばいいかしら?」

 「無理のない程度によろしくたのむ」

  それからいくらかぽんぽんと会話を繰り返して、パワルフは最後にプァナとラシュンの頬に口付けて出かけていった。

 

 プァナ緊張した顔持ちのパウルフが心配になったが今日の祭りが無事に済むと信じるしかできなかった。

 

 前回の誕生祭は、プァナの為のもので、プァナ自身は覚えていない。だからどんなものになるかというのも人伝に聞いてきたものばかりだ。

 

 「ぶーあー」

 

 ベッドに寝ていたラシュンが指をしゃぶって天井を見ていたのでプァナはゆっくりと丁寧にラシュンを抱き上げる。

 

 「おはよう、ラシュン」

 「あぶー」

 「今日の主役は貴方と貴方の父様だからね、よく見るのよ」

 柔らかなラシュンの温もりを感じながら窓の外を見る。この村の人とエルフの村の人が手を取り合い準備を執り行っていた。

 

 「ご挨拶行かなきゃ行けないわね」

 「ぶー」

 「その前にご飯にしましょう、ラシュン」

 

 プァナはふたたびベッドに腰掛け、服を捲り乳房を出してラシュンに吸わせる。ラシュンは直ぐに吸い付き、目をとろんとさせながら飲む。

 とくとくと感じる熱にプァナは擽ったい幸福に満たされた。


 ラシュンが飲み終えるとはだけた胸元を直し、ラシュンの顎を肩に乗せてその小さな背中を優しくゆっくりと叩く。小さくけふっという音が聞こえてからだき直し、また笑う。

 

 「神に感謝を……いい朝ねラシュン」

 「うあーぶ」

 

 額と額を合わせて笑うプァナにラシュンもわかっているのか笑う。まだ動きはぎこちないが、産まれたばかりの頃に比べると随分と体の動かし方も上手くなったように思えた。

 

 外から聞こえる建築の音を聴きながらプァナは子守唄を口ずさむ。

 

 「“神様、ああどうか、お聞きください”」

 

 軽やかなテンポのいい歌でそれはプァナ自身が小さい頃歌ってもらっていたものだった。

 

 「“この子は罪の子ならず、この子は祝福の子、どうかどうか神様”」

 

 とんとんと抱いたラシュンの腹を優しく叩いて、目を伏せ、歌う。建築の音がまるで祝福しているかのような気持ちにさせた。

 

 「“神様、どうかお許しください、この愛子を腕に抱くことを ”」

 「“神様どうかお叶えください、この愛子が手をはなれるまで見守る目を”」

 

 それは神に懇願する一人の母の歌。眠りに落ちる我が子が神につれてかれぬように歌う(まじな)い。

 

 「“ああ、愛しい子、祝福されし子…”」

 

 そこではて、とプァナは歌っていたのをやめる。

 

 ラシュンが眠りに落ちたのだ。

 

 「ふふ、次起きるときはお父様の晴れ舞台よ、ラシュン」

 

 優しい陽だまりのような、そんな朝の風景だった。

 

 

 

 

 

 

 

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