ф和風折衷:洋イベ 共通シナリオ
神様や天使、そして悪魔に魔女はファンタジーの中の存在で、困ったとき都合よく願いを叶えてくれるわけもなく、ただ信心深い人が拠り所にしている偶像に過ぎないのだ。
「祭林さん、来週はクリスマス、楽しみだね」
「そうだね」
どこが!?ケーキなんかクリスマスじゃなくてもお金があったらいつでも食べられるでしょ。
ただクリスマスにお金がないならどちらにせよケーキは食べられないが。
なんて台詞は飲み込んで、生クリームより生な返事を返す。
放課後早くケーキを予約しようと、洋菓子店に立ち寄った。
「ハロウィンのカボチャ売れ残りセール中でーす」
棚には橙色のクリームにスライスされたケーキのレプリカがある。
日本で主流のカボチャの皮は緑、西洋のオレンジ色のカボチャはどんな味がするのか、前から気になっていた。
これはいい機会だから買ってみよう。
「ひとつください」
「まいど」
襟足が軽く跳ねた固そうな黒髪の男性は、ケーキを二つ入れた。
「売れないからオマケした」
売れていなくても売れていると言うのが普通ではないだろうか、ただ美味しかったら二つ食べられてそうじゃなくても二倍損をしないのはありがたい。
「ハッキリ言っちゃうんですね」
なんて正直な大人だろう。
身近にはいないタイプの人で、少し笑ってしまった。
代金を払ってそのまま家へ向かう。
ひきつって変な顔をしていたらどうしよう。
見られてはいないだろうか、と悶々と悩みながら帰宅した。
「いまさらハロウィン?」
帰宅して、ケーキをテーブルに乗せると箸がころべば笑う年頃の妹が吹き出す。
「どうせならクリスマスケーキ予約してきてよ~ホワイトエンゼル!」
ついうっかり忘れていたが、あのときはケーキを予約するつもりだった。
「私はデビルチョコレートがいいの」
毎年チョコケーキかホワイトケーキかで揉める。
両親は仕事で毎年いないからケーキを自分達で選んでいるからだ。
今年は妹も少しだけ成長したのか互いの意見を尊重すべく折衷案でハーフケーキになったのだが、また争うつもりなんだろうか。
クリスマス当日になり、ケーキを取りに行くとその店には赤い服、赤い帽子でサンタの格好の少し痩せて不健康な少年がいた。
若いのに本当のサンタのような真っ白な髪をしている。
こんな私でも昔はサンタやトナカイの妖精を信じていた。
外国には本物のサンタがいると担任はいっていたが、彼等は生身の人間である。
ソリを乗って飛べるわけでもない。
「…」
今にも倒れるのではないか?
そんな不安を煽るほどに、げっそり窶れている。
「そんなに痩せてどうしたの?」
少年サンタに声をかけると、先程までだらりとしていた目を見開いて私を見る。
どうやらかなり驚いたらしい。
「ボクが…見える…の?」
「ユーレイだとでも?」
「…ううん」
少年は弱々しく首を降る。
「キミはハロウィンとクリスマスどっちが好き?」
「なにその究極の選択。お花見かひな祭りかってならまだしも季節跨いでるし…」
「直感で」
「え……」
私はひとまず保留にした。
●バレンタインとホワイトデーと
「せんぱーい!」
「バレンタインのチョコレートです!!」
「あれ今日一月…」
「先輩の前ではいつでもバレンタインです!!」
なぜかチョコレートを毎日貰う。
どうやら私には男っぽいところがあり、女子校だからか女子に好かれているようで、男子にはモテない。
顔も普通、背もそんなにあるわけでも、さぞかし家柄が素晴らしいわけでもない。
そんな普通の人がなぜモテるのか、おかしくはないだろうか。
「取りつかれてんだよ」
「うわああああ噴水のアレの奴が金髪でイケメン外人に…人間になってるうう!?」
「ちがう!!」
「なんなの!?ピラミッドの国からタイムスリップしてきたの!?」
「いやいやそっちは黒髪じゃないかな僕ほら金髪だし」
どちらにせよ半裸の変態が窓辺にいるのはまずいのではないか?
「もしもし」
警察を呼ぼうとしても繋がらない。
携帯だと思っていたらタワシだった。
「せめてタワシ型のチョコならよかったな」
今日はホワイトデー。しかし誰にもチョコをあげる相手はいなかったので、こっそり教会にそなえた。
もちろんお返しなどない。
うわあなにこの人白い。イケメンだけど。
「レディ、ボンジュール」
「ぼっぼんじゅーる」
「バレンタインの日、チョコレートをありがとう。よろしければ…」
「おい、まてよ」
「今度は墨みたいに黒いイケメンが!?」
「お前に最悪なブラックデーをお見舞いしてやる」
「ふはは!!オレンジデーを忘れるな!」
「「失せろ」」
「あーれー」
「なんなのこいつら…逃げないと」
◆決定の日-A
【ハロウィン】
【クリスマス】
【バレンタイン】
【ホワイトデー】
【ブラックデー】
【オレンジデー】