降臨
剣と魔法の世界、ルノン
神、ルノワールの力により存在する原子、マナ。
それを体内に取り込み、使役することによって生まれる魔法の力の強大さにより、マナを取り込む容量、それを使役する技量、そしてそれに耐えうる肉体の強さによって強者と弱者は区別され、同時に地位もそれによって決まった。
世界各地に跋扈する魔物を倒すスペシャリスト達、狩人は専用の機関、狩人協会アイゼルハイジャンに所属し、それぞれに番号が与えられている。
一から一億数千まで登るその番号は狩人の母数と同じだけあり、一に近づくほど強者とされている。
数百からなる大小国で構成されているこの世界だが、もはや協会単体の力は一小国とは比べられないほど大きく、尊重されるべき存在として特別視されている。
そしてこの世界には、裏の世界と呼ばれる場所がある。マナの著しい奔流により生み出され、無限に魔物を排出するゲートの向こう側だ。何分どこにいつゲートが現れ、どのぐらい持続するかがわからないため、ゲートをくぐるものがおらず、向こうの世界を見たものは今現在はいない。ただ、大昔に一人行って帰ってきたものがいるとされるが、裏の世界に関する文献は今のところ見つかっていない。
ゲートをくぐった先は、空だった。地上数キロはあると予想される上空だが、目下には地平線までに広がる森。おそらく人はいない。
落ちながら見を凝らしてみてみると、木の一つ一つが、相当でかい。そしてその木々では隠しきれない大きさの翼の生えたトカゲ、首が八つに岐かれた蛇、鋼のような肉体の一つ目の巨人。
義龍は落ちながら右手に力を込めた。そして体の空気抵抗を極限まで抑える体制になり、静かに目をつむった。
「ガァァァァ!!」
「シャァァァァ!」
「ォオ!オオ!」
三匹の数日にも及ぶ縄張り争いはついに終わろうとしていた。体は限界、魔力も底をつき、次の一撃にすべてをかける。そう三匹の意志が合致した瞬間、突如異変が起きる。
三匹の本能、太古の昔に忘れた、心臓の奥底の更に裏にある感情。「恐怖」
圧倒的捕食者を前に見動きが取れない、蛇に睨まれたカエルの如く、三匹は動きを止め、空を見上げた。
そこには目視すら難しい、希少な生命体がすごい速さで落ちてくる様子だけしか伺えなかったが、それを確認した瞬間、三匹はもはや決着のつこうとしていた戦いを捨て、それぞれの敵に背を向け合い、己の出せる最後の力を逃げることに使うことに決めたのだ。
「逃さんよ」
三匹を黙視した義龍の拳は、彼の体が地上に到達する前に放たれた