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序章

 幼少の頃から絵を愛し、練習してきた少年がいた、彼はただひたすらこの世界の美しいものを描いてきた。


 広大な草原と美しい山々に囲まれた清澄な土地、まるで天国を思わせるような、そんな土地。

 そこで育った彼はそこに咲く花、優雅に飛びゆく鳥、素晴らしい風景、彼が美しいと思う全てをキャンバスに描いてきた。


 彼は5歳になる頃には既に絵を描き始めていた。

 初めて描いたのは花の絵だった。

 鉛筆で画用紙に描かれたその絵は既に5歳児の描くような落書きでは無かった。

 典型的な幼児が描くようなデフォルメされた花はそこには無く、下手ではあるが、細部まできちんと描かれた紛れもない花だった。

 そこに彼の大きな才能を感じた彼の両親は、彼にキャンバスと絵の具を与え、無くなればまた補充した。

 それが彼の原点だった。

 

 彼はキャンバスを両手に抱え、色々な場所に出かけ、座り込み、絵を描いた。

 彼が絵を描いている所にたまたま通りかかり、絵を覗き込んだ数々の通行人達は皆仰天した。

 「こんな小さな子がこんなにも素晴らしい絵を?」皆こう思っただろう。

 そんな人達のおかげで、彼は地元では有名になった。

 

 彼は馴染みのキャンバスを片手に持ち、遠くまで出かけ、座り込み、絵を描いた。

 彼が絵を描いている所にたまたま通りかかり、絵を覗き込んだ数々の通行人達は皆仰天した。

 「あなたはどこの画家さんだい?素晴らしい絵を描くね、あなたが描いた最高の絵を私の美術館に展示したいのだが」

 その通行人の中の1人が、彼の山と花が描かれた絵を見てそういった。

 「画家ではありません、趣味で描いているだけです。」

 彼は答えた。

 「なんてことだ。あなたは画家になるべきだ、埋もれてはいけない。あなたの絵を買わせて欲しい」

 通行人はそう言った。

 「お金は要りませんが、美術館に出展するというのは興味があります・・・ちなみにどこの美術館でしょうか?」

 少し不安そうな顔で彼は問いを投げた。

 「それを先に言っておくべきだったね。イギリスにあるウォークアートギャラリーという美術館なんだ、君の絵は素晴らしい、ここに飾る価値があるし飾るべきだ――」

 

 ウォークアートギャラリーはイギリスでもかなり大きな美術館であり、年間の来館者数は20万人を超える。

 そこで今年、最近名が知れて来た画家達の絵を飾り、それを評論家達が批評するというイベントが行われるのだ。

 そこに彼の絵を出展させてほしいという話らしいのだ。

 彼はそれを快諾した―




 彼は5歳の頃から18歳になる今に至るまで絵を描き続けているが、「自分は画家になる」という意識が芽生え始めたのは13歳の頃だった、画家になるにあたって本物の画家の絵が見てみたいと思った彼は家から一番近い美術館に足を運び色々な絵画を見た。

 そこで出会ったのがペリエという画家が描いた絵だった。


 それは遠くから山を眺めるような風景画だった

 この世のどこかの風景なのだろうが、それはあまりにも美しすぎてこの世のものとは思えなかった。

 空に浮かぶ雲や手前に生えている草までもが美しく見え、遠くに飛んでいる鳥はあたかも歌っているかのようにも見えた。

 「絵の端や細部にも何か美しいものが描かれているかもしれない」

 そう思って嘗め回す様にこの絵に魅入ってしまう。

 そんな絵だった。


 「ペリエの絵と僕の絵の差は何なのだろう、僕は風景画を描くのも好きだし、何より美しいものを描くのが好きだ。その点で僕とこのペリエという画家は似ている。僕が目指すべきはペリエみたいな画家なのかもしれない」

 13歳の彼はそう思った。

 

 ペリエは世界でも屈指の画家であり、ペリエに憧れを持つ者もたくさんいた。

 彼もその「たくさん」の一人になると同時に、彼の絵の方向性も定まった瞬間だった。

 彼はペリエの描いた絵を調べ、探し、見た。

 ペリエが絵を出展するというのなら、どこの美術館であろうと足を運んだ。

 そして知れば知るほど、ペリエの絵の虜になった―





 彼の絵がウォークアートギャラリーに出展されてから3日が経った。

 

 「この絵はダメですね、うまいけど、それだけだ。現実の風景を模写するだけならカメラでできるんですよ」

 ある絵画の評論家が彼の絵を見てこう言った。

 それを丁度彼は聞いていた。

 大きな美術館に出展したのだ、自分の絵を見て人がどんな話をするのか、どんな人間が自分の絵を見るのか。当然気になった。

 彼は出展される当日からずっと自分の絵の前でうろうろしていたのだ。

 彼は十数年間絵を描いてきたが、周りには彼の絵を批判する人間はいなかった。

 だがここには彼の絵を批判する人と、評価してくれる人が両方存在した。

 「絵の知識を持った人間が僕の絵を批評してくれる・・・」

 彼はそう思い心が踊った。


 後日、彼の絵への評価が手紙にて送られて来た。

 あらゆる批評に少し落ち込んだものの、その評論家達の言葉は彼の燃料となった。




 僕の絵に対する様々な意見を聞いたり見たりしたが、やはり「写真みたいだ」という意見が多かった。

 画家になるには写真を、カメラを越える絵が描けなくてはならない、少なくともペリエの絵は驚く程上手いのは当たり前なのだが、その上どこか幻想的で写真よりはるかに美しい。

 

 「絵の練習がしたい、世界中の風景を描きたい、それに花や鳥も。写真を越える絵を描きたい。」

 そう思った彼は両親に相談し、1年という時間をもらった、この間彼は世界中を回って自由に絵が描けるのだ。




 

プロットはできているので続きも書いていきます。

とりあえず序章を読んでくださりありがとうございました。

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