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03.誓いのガバメント


 仕事での私達の服装はセーラー服。15歳だから怪しいどころか完璧に似合う!

 小林さんの趣味(?)で事務所には数種類のものが2組セットで収納されている。

「四季、これなんかどうだ?」

「わ、私には勿体ないです。お嬢様がぜひ!」

「い、いや、私もこれは……」

「これはどうでしょう!?」

「お、いいね、それにしよう!」

 女の子らしいキャピキャピした声を飛び交わせなが選んだ今日の服は白。襟は白いラインが入った水色。スカーフの代わりに青くて細めのネクタイを締めて、スカートは青と水色と白のチェック柄。

 アニメに使われてそうな可愛い可愛いセーラー服です!

 もう6月も終わるから上には羽織らなくてよし。

 部屋から出てきた私達を小林さんは鼻息荒く興奮気味で待っていた。

「あ、相変わらず可愛いじゃねーか」

 小林豊一、自称32歳、見た目は外国人マフィア。

 その実態は、ロリコン。

「セクハラー!」

 私達は手を繋いで笑いながら小林さんの横を通り過ぎ、出口へ駆けた。

「お前ら、持ってけ!」

 小林さんは鉄の塊2つを投げてくる。

「ちゃんと生きて帰ってこいよ」

 それぞれの受け取る手にはズシッと重く冷たい感覚がのしかかる。

 それをスカートの中、太腿に装備したレッグホルスターへ収めた私達は手を振って今度こそ事務所を出た。


「で、今回の作戦は?」

 私の質問に、四季は手帳を取り出して目を通し始めた。

「この近辺に潜む連続殺人犯と思われるこの男を尾行し、犯人だと断定できたら警察に気付かれないように始末する、ということなので……どうしましょう?」

 四季から渡された一枚の写真、街中での盗撮写真と思わらるそれには、右手に髑髏(ドクロ)のタトゥーが入ったスキンヘッドで切れ長の目をした男が写っている。

「被害者の傷跡から計算するに、どの犯行でも使われたのは太刀らしいです」

 包丁やナイフとではレベルが全然違う太刀。刃長が長い分、当然その重さも増すから扱いは難しい。

 犯人が素人ならそう困る仕事ではないが、もしも刀の扱いに慣れた男だったら……厄介だな。最近の私達の仕事でも最も危ない仕事になる。

「1つ気になることがあって……」

 四季は手帳のあるページに差し掛かると歩くのを止めた。

「何だ?」

 私は横からそのページを覗く。

「犯行現場には被害者の血でメッセージが残されているんです」

 1人目の現場から順に、『keen』『I』『lacerate』『lethal』。

「……四季、英語できたよな?」

 家庭教師の努力も虚しく、私はすっかり記憶から抜けてしまっている。

「10歳の頃に英検2級の問題を解かされて一問間違えたレベルですが。意味は順にざっと『鋭い』『私は』『切り裂く』『死をもたらす』です」

 くっ、四季め! それは何の当てつけだ!? 悪かった、私が『I』の意味も分からないほどのおバカさんで!

 まぁ、和訳してもらえば文としての意味もなんとなく読み取れる。

 でも手掛かりにはなりそうも……うん?

「『I』だけ大文字なんだな」

「そうですね。……だけ…………!」

 四季は何かに気付いたように顔を上げた。

「お、お嬢様……犯人の次の狙いが分かりました」

 震える唇で四季は途切れ途切れ言葉を繋ぐ。

 私はさっきの当てつけなどすっかり忘れ、彼女の次の言葉を待った。

「この4つの単語の頭文字を順に読むと……k、I、l、l」

「『kIll』!?」

「そうです、恐らく次の狙いは……私達!」

 私は背筋に寒気を感じ、バッと来た道を振り返る。

 動物の本能とでも言うのか、反射的に何か悪い予感を感じたのだ。

 それと同時に四季の右ポケットに入っている携帯が鳴りだした。

 画面に映し出された発信者の名前は――小林さんだ!

「も、もしもし!?」

 四季は震える手で携帯を開き、耳と口にそれを押しつける。

『今回の任務は……中止だ…………しばらくは……どこかに隠れて、ぐあぁぁっ!!』

「小林さん!?」

『ツー……ツー……』

 最悪の展開が私達の脳裏を過り、通話の切れた携帯をポケットに戻したところで四季は震えながら私の手を取って走りだす。

「行きましょう!」

「あぁ!」

 私達は事務所へと疾走した。

 その方角からはうっすらと黒煙が上りだしている。


 先月改装したばかりの、殺しを仕事にする『kIll』の事務所は白塗りで落ち着いた外観の4階建て。

 1階はどこにでもあるような会社のロビーを繕っている。

 2階は小林さんの趣味(?)の数々の物置と事務用のデスクとパソコンが置かれていて、仕事の話をする個室もここにある。

 3階にあるのは武器の保管庫と金庫と小林さんの個室。

 4階は家無き子達のための部屋がいくつか。

 そんなビルが今、私達の目の前で瓦礫の山となっている。

「小林さん!? みんな!?」

 私の声は野次馬の喧騒に掻き消された。

 ところどころ、コンクリートの塊と塊の間から血が流れている。

「……隠れてろって………言っただろうが……」

 崩落した事務所の向かい側、茶色の空き家とクリーム色のビルの間の細い路地から、吐息に混ざりながら消えそうな声が聞こえてきた。

 この騒ぎに中、なぜ小林さんの声が届いたかは謎だ。

 反射的に振り返った私と四季の顔は、銃を持って焼け野原に佇む少年のように絶望に満ちていただろう。

「こ、小林さん!?」

 私達の声は重なり、すぐに駆け寄り、壁にもたれる小林と目線を合わせるように膝をついた。

「人を……幽霊、みたいに………見るなって……」

 私は小林さんの身体を見てゾッとした。

 両足は付いてるものの火傷で皮膚は剥がれ、左腕の肘より少し上のあたりには細い鉄筋が突き刺さり服はどす黒く染まっている。

 頭から流れる血で顔の左側は赤く染められた。

 口元から垂れる血が内臓の損傷も示している。

「すぐに病院に……!」

 立ち上がろうとした四季の腕を生きている右手が掴んで静止させた。

「もう無理だ! 自分の……ことだ、分かる……」

 呼吸が荒い。このままじゃ本当に危ない!

「俺達を、襲ったのは……」

「分かってます。私達の仕事の犯人ですよね」

 四季は小林さんの口数が少なくすむように続きを代わりに述べた。

「そうだ……。奴は1人だ……だが、強すぎる……」

「素人ではないんですね。それに、ビルを壊すほどの力って……」

 私は瓦礫を横目に見ながら呟いた。

「お前達は……逃げろ。敵討ちなんて、真似は、するな……」

「で、でもっ!」

 四季の右手は既にスカートの中の銃を握り締めている。

「生きてくれ!」

 小林さんは両手で私達の肩を掴んだ。鉄筋が突き刺さったままの左腕は震えている。

 ――ゴホッ!

「生きて……お前達のように……苦しんでいる奴を…………救え!」

 ――ゴホッ! ゴホッ!

 咳をする度に口からは赤い液体が流れていく。

 私達の肩を掴んでいた腕は力を失って地面に落ちた。

「その、銃はな……」

 私達が事務所を出る直前に小林さんが投げ渡してくれた2丁の拳銃。

「俺の親父から……貰ったもんだ……。背中を、預けられる仲間に……託せって………」

 私達はレッグホルスターに収まっている拳銃に目を落とした。

「俺には、相棒ができなかった……。だが、信頼できる仲間には……会えた……みたいだ」

「小林さん……」

「御凪……お前はそれを……自分の命を………任せられる、相棒に…………」

 …………。

「こ、小林さん……?」

 ……返事は、ない。

「小林さん……ぃゃ……イヤァァァァァーーーーー!!!!」

 私の叫び声は喧騒を裂いて空へ昇る小林さんの後を追った。

 初めて知った……。

 『死ぬ』ってのは、とても悲しいことなんだ……。

「四季……私達は………生きていいのかな?」

 『生きる』という価値があるのかな?

「……分かりません、でも」

 四季は俯きながらゆっくり立ち上がると小林さんの形見となった拳銃――コルトガバメント雪上迷彩モデル――を右手で抜き、左手で包むように抱きしめた。

「死んでいった仲間の分も生きることは……きっと出来ます!」

 顔を上げ、見開いたその両目からは一滴の雫が流れて消えた。

「……ごめんなさい、小林さん。私達はあなたの命令に背きます」

 徐々に冷たくなっていく彼に背を向け、私は横目で四季を見る。

 彼女は小さく頷いてくれた。私はそれに安心しながら頷き返す。

「私達は生きる為に……人を殺します」

 決して死なない。

 こんな世界でも、這いずり回ってでも、生きて、生きて、私達が生きた証を残してやる!

 必ず……この銃――コルトガバメント砂漠迷彩モデル――に誓って!

「行きましょう、お嬢様!」

「あぁ!」

 決意を胸に、歩き出そうとした時だった。

 ――バババババ!

 今の今まで気づかなかった。

 ここから北東に1000m、高度は20mくらいだろう。

 明らかに不審なヘリがこちらに近づいてきている。

「あれは……」

 四季は目を細めて機体を確認する。

「対戦車・対地攻撃用の攻撃ヘリコプター、AH-64アパッチです! 今もアメリカ陸軍の主力として現役で使われています!」

 攻撃ヘリコプターとは、武器を搭載し対地攻撃を主任務とする軍用のヘリコプターのこと。

 固定武装はM230機関砲が一門。搭載弾数は最大1200発で最大射程は約3000m。

 つまり、私達は既にアパッチの絶対半径(キリングレンジ)にいる。

 絶対半径とは、敵を確実に仕留められる距離のことだ。

「くそっ! 敵は一人じゃなかったのか!?」

 回転翼の音が大きくなるにつれ、私の心臓は鼓動を早めた。

「あのアパッチ、AGM-114ヘルファイア空対地ミサイルを装備しています! 弾数は恐らく16発です!」

「『空飛ぶ戦車』――重装備、重装甲が可能なことからそう評されることがある――相手にどうしろっていうんだ!」

 こんなガバ2丁で何ができるっていうんだ!

「お嬢様、ここはいったん引いて命を繋ぎましょう!」

「……そうだな」

 私達はガバをレッグホルスターへ戻し、『kIll』の残骸とアパッチを結んで垂直となる北西方向へ走った。

 見つからないようになるべく細い路地を進み、息が切れるまで走った。

 ――バリバリバリ!!

 背中の方で鳴った轟音は機関砲だろう。

 生き残りを消すために集まった野次馬に向けたものに違いない。

 あと少し遅ければ、今頃私達も……。

 どうやら相当ヤバイ相手らしいな、今回の目標(ターゲット)は。




今回は前作に繋がる伏線の1つ、源三のガバについて書いてみました。

そしてロリコン、小林さんの感動(?)の最期……(>_<)

ルキの特徴:すぐにキャラを殺すwww


ラストに戦闘シーンっぽいのを少しだけ挟んでみました。

アパッチについてはwiki調べです。

この後も銃や戦闘機なんかが出てくるかもしれませんが(これはまだ未定)間違いに気付くことがあったら教えてくださいm(_ _)m


これからドンドン派手なシーンを加えていきますからね!

第4話「あなたの弾丸」へ続く!!


from.ルキ



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