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猫と横浜  作者: のらしろ
第一部 猫に引っかかれて明冶にまいる …

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第16話 煮沸消毒器



 見つけたよ、昭和の病院、これは歯医者の写真にあったのだが、昭和の時代でも使っていたようだ。


 最も目の前にあるものよりはより洗練されて入るが、少なくとも俺の生きた平成や令和ではとんと見なくなったものだ。


 なら俺はどこでこれを見たのかな……あ、そうだ。

 限界集落での仕事で村の診療所の片付けの手伝いをしたことがあった。

 とっくに閉鎖された診療所を集会場として使うのだとかで、機材一切を売り払うとかで、診療所から運び出す時に俺は見たのだ。

 結構見た目異常に重たかったのを覚えている。


 何でも中では水を沸かした状態になっており、水蒸気で殺菌をしていたそうだ。

 80歳になろうかという村の長老から教えてもらった。

 中に入れたものは当然殺菌のために高温になるので、ガラス製品か金属製品に限られて、取り出すときにも注意がいるとか。

 確かハサミのようなものを使っていたように記憶しているが、そんなものは個々にあるのかと周りを探すと、しっかり目の前の煮沸消毒器の中に無造作に放り込まれていた。


 金属製で、一部に錆も出ており、使うには少々手入れが必要になりそうだが十分に使えそうだ。

 しかし、これどうやって使うのだ。

 中に水をいれるのは判っているが、俺は目の前の煮沸消毒器をくまなく調べてみた。

 すると、俺は以前に限界集落では見なかったのだが、目の前の煮沸消毒器の底の部分にガスコンロのようなものがある。

 早い話が、ガスを使って下からヤカンを温めるようにこの煮沸消毒器を熱する仕組みのようだ。

 となると、ガスがいる。


 でも、ここに前に住んでいたオランダ医師はこれらを使っていたのだし、ここで使えるはずなのだ。

 要は、昨日にも確認した電灯やこれらを使うのに、ガスに電気が……あ、肝心の水がいるが、水はどうなっている。


 俺は外に出て家の周りをうろつくと、この家はすぐ外にある井戸を使っているようなのだが、母屋になる屋敷には水道が通じているようだ。


 電気にガス、それに水道がここでの生活には必要になることが判ったが、それらをここでは以前に使っても居たはずだ。

 ならば俺のすることは、それらの手続きになるが……どうしよう。


 明日香さん二でも相談するか。

 最悪、第二国立銀行に言って話をしてみる。

 前にあった時に何でも相談にのると言ってくれたしな。


 俺は掃除中の明日香さんを捕まえて、このことを相談してみた。


「そうですか。

 ここではそれらが使えるのですよね」


 明日香さんは山手に住んでいたこともあり、水道など使っていたことがあった。


「手続きをしないと、まだ使えないようなのだが、明日香さんはそれらについてなにか知っているのかな」


「申し訳ありません、一様。

 確かに、私がこのあたりに住んでいた時には使っておりましたが、旦那様がすでに全部の手続きをされていたようでして……あ、そうですわ、ここを仲介してくれたヨトレリヒ商店のヨハンさんに聞いてみませんか」


 確かに明日香さんの言う通りだ。

 ここを仲介してくれている以上、この屋敷には詳しいはずだ。

 ひょっとしたら前の住人であるオランダ人医師二この屋敷を売ったのもヨハンさんかも知れない。


 まあ、そのあたりを聞いてみて、わからなければ第二国立銀行まで行くだけだ。

 この家からの距離ならば第二国立銀行のほうが近いが、流石に直接の業務に関係しないことまで相談ともなると、八方手を尽くしたのならば背に腹は代えられないが、簡単にわかりそうなことまでを聞くのは気が引けた。


 明日香さんの方も、屋敷の掃除に目処がついたようで、ちょうど昼に近いこともあったので、昼食を取るついでにヨトレリヒ商店に行くことにした。


 あの長い坂を降りて関内の街をゆっくりと眺めながらヨトレリヒ商店に向かう。

 途中、オランダ人以外の店主と思われる商店の間を通り過ぎる。

 店前に国旗を掲げているので、おおよその出身国がわかる店が多かった。


 アメリカ人商店やイギリス人商店は判ったのだが、それ以外の国旗は俺にはすぐに判別がつかなかった。

 そういえば、明治となれば、ドイツは当然俺の知る国ではない。

 まだ、王政だったような。

 ビスマルクなんかこの時代だったような気がする。

 オランダやベルギーなどの国などそもそも国旗を覚えていないので、たとえここが令和の時代でも判別がつかないだろうし、何よりヨーロッパのいくつかの国はこのあとに続く二回の大戦で国そのものが変わったと記憶している。


 俺達は途中にあったカフェで少しおしゃれな昼食を頂いた後にヨトレリヒ商店についた。

 店の中に入ると主人でヨハンが出迎えてくれた。


「これは、金田様。

 家の様子はいかがでしょうか」


「ああ、とても良い屋敷で気に入ったよ」


「それは何よりでした。

 今日は、生活用品の買い出しでも」


「いや、いずれ必要にはなるが。それ以前の話だ」


「それ以前とは」


 俺は、屋敷に通じる電気ガス、それに水道について手続きが取れないかを店主に聞いてみた。


「これは大変失礼しました」


 店主は俺に詫びた後店の奥に入っていく。

 すぐに奥から出てくるといくつかの書類を手にしていた。


「これを金田様にお渡しするのを忘れていました」


 そう言って差し出されたのは、、電気にガス、それに水道の使用申し込みに関する書類だ。

 俺はその場で、店主に色々と聞きながら書類を書き込んでいく。

 

「これは、私の方で会社に提出しておきます。

 今日にはとは行きますまいが、すぐにでも会社の方からお屋敷に人が行くかと思います」


「ありがとう。

 あそこに住むのは、それらの処理が済んでからかな」


「ああ、そういえばこれもお渡ししておきます」


 店主はそう言ってからメモ紙一枚と鍵を俺に渡してきた。


「これは……」


「書斎に据え置きの金庫の鍵とダイヤルの番号です」


「金庫までは気が付かなかったな」


「ええ、わかりにくくしてあるようですね。

 私は直接見たことはありませんが、前の人がそう言って私にこれらを渡してきましたから、探してみてください」


「ああ、ありがとう」


「それで、布団なども私どもで扱っておりますが」


「それはまだいいか。

 いずれ、色々とお願いするから今日はいいか」


「はい、ではその時をお待ちしております」


 良かった。

 ヨトレリヒ商店だけで、当面抱えていた問題は片がついた。



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