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猫と横浜  作者: のらしろ
第一部 猫に引っかかれて明冶にまいる …

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第10話 地元経済界との付き合い



 俺の出まかせにもいよいよ拍車もかかり、老舗小妓楼の主人も信じてもらえたようで、こういう仕事柄なのか、性病に対しての食いつきが凄かった。


「明日香以外にも、他にも発病したら診てもらうことはできますか」


 なんて聞かれる始末だ。


「ええ、こちらの受け入れの準備ができたらの話になりますが」


「そうなりますと急ぎは拠点ですか。

 お屋敷に全く当てが無い訳でなありませんが、あいにく私が紹介できるのは日本家屋の屋敷ばかりでして。

 金田様は洋館の方が使い勝手のがよろしいのでしょうね」


「ええ、できましたら洋館の方が。

 山手あたりに探してみようかとは考えていたのですが」


「確かに、この近場でしたら山手には洋館が多数ありますしね……しかし、どうしましょうか。

 そうですね、地元の経済界に詳しいのがおりますので、そちらをご紹介いたします」


「え、ご紹介くださいますか」


「ええ、地元有志が協力して盛り上げております第二国立銀行が近くにございます。

 あそこは海外からの商人に対しても広く商いをしておりますから、そちらにも顔が利くでしょうし、銀行を紹介しますからそちらを訪ねてみては下さいませんか」


「それは願ったりです。

 昨日やっと第一国立銀行に口座を開いたばかりで、そういう方面には全くご縁が無い状態です。

 ご紹介くださるのでしたら、簡単に口座も開けるでしょうし。

 明日にでも早速行ってみます」


「でしたら、すぐに紹介状をご用意いたしますからお待ちください。

 それまで、ここで遊んでまいりますか」


「いえ、それは落ち着いたら是非に。

 今日のところは遠慮させてください」


 しばらく部屋で待っていると、すぐに主人が紹介状を手に戻って来た。

 それを頂いて俺は鈴屋から出て、ホテルに戻った。

 帰りの人力車で隣に座っていた明日香さんからお礼を言われた。


「楼主様は、小さなころから私たちをかわいがってくれていました。

 私が、また商売を始めた時にはとても悲しそうな顔をされており、正直私もつらくありましたが、今日の楼主様はとてもにこやかで、なんだか私もうれしくありました。

 金田様、本日はありがとうございます」


 俺は、下心満載での行為に恥ずかしくなり、そのまま黙って人力車に揺られてホテルに帰っていった。


 ホテルに着くと、既に夕方になっているので、部屋に入る前にそのまま食堂に向かい二人で夕食を取った。

 今日も、ワインなどを飲みながら横浜のトピックスなどを話題に食事をとった。


 俺は知らないことばかりなので、ほとんど聞き役だったのだが、それが良かったのか明日香さんは本当に楽し気に話してくれた。

 夕食後にバーなどには寄らずにそのまま部屋に向かい、その足で風呂場に直行した。


「これからは、とにかく体を清潔に保たないと治療の効果も期待できないので、毎日風呂に入る」


 そう言って、明日香さんの服を脱ぐように促した。

 流石に男性の前での脱衣なので、明日香さんも恥ずかしそうにしていたが、それでも治療だと割り切ってなのか、それともいままでの仕事で培った経験からなのか、俺の指示に素直に従って服を脱いでいく。


 全裸になった明日香さんの体を一通り観察して、俺は風呂場から出て行った。

 しばらくして、昨日と同じようにバスローブだけはおった姿で明日香さんが部屋に戻ってきた。


 俺は、バスローブを脱がしてベッドに寝かしてから、俺の使っていた抗生剤入りの軟膏を患部に塗っていく。

 ついでに、指に軟膏を付けて秘所と菊座にも軟膏を塗っていく。


 昨日、梅毒の治療法を調べた限り、ペニシリンを筋肉注射とあったが、あいにくそれは今できない。

 なので、少しでも抗生物質を体内に吸収できるようにと、工夫しての行為だ。


 決して……いや、やめておこう。

 俺も楽しんでいないとは言えないから、いい訳にもならない。


 明日香さんを昨日と同様に先に寝かせて、俺は明日の準備にかかる。

 また、今度は第二国立銀行に口座を作るので、第一国立銀行の時と同様に一万円を別に用意してリュックにしまう。


 その後、俺は籐でできたゲージにしまってあった、緊急救急セットの中身を確認してみた。


 確かに簡単な手術くらいはできそうなくらいの道具に薬まで揃っていたが……抗生剤もあったが、多分これを筋肉注射すれば明日香さんは治療できるだろうが、それは最後の手段だ。


 幸い、明日香さんは第一段階の状態で、症状を聞いた限りでは倦怠感なども出ていない。

 時間的に数か月の猶予はある。


 できれば、これからペニシリンを作り、それで治療していきたいので今治療と称して抗生剤入りの軟膏を使っているのは俺の趣味だ。

 あ、本音が出ていたな。


 翌朝、明日香さんはすでに起きていたが、バイタルだけを調べてから記録に付けて、食堂に向かった。 


 ゆっくりと朝食を摂ったが、それでもまだ銀行が開くには早めに思えたので、今日は二人で歩いて銀行に向かった。


 所詮貧乏探偵の性で、贅沢はどうも落ち着かない。

 昨日は演技する必要もあったので、人力車で向かったのだが、今日は昨日貰った紹介状もあるし、明日香さんも連れているので、そうそう邪険にはされないだろう。


 だいたい、桜木町から関内まで一時間はかからない。

 初日は道を知らなかったこともあるが、もう何度も通っているので、道も覚えた。

 人力車で十分くらいだったので、歩いても三十分あれば着くだろう。

 散歩がてらに出かけるつもりで、二人で第二国立銀行に向かった。


「明日香さんは第二国立銀行を知っていますか」


「ええ、関内にある立派な銀行ですよね」


「中に入ったことは」


「いえ、だいたい私のような者には縁がありませんから」


「身請けされていた時には、上流階級のご婦人たちとのお話もあったでしょう」


「ええ、数回しかありませんでしたが、そういう場面にはご一緒させてもらったことはありますが、お仕事の場には一度も……そもそも軍人でしたし」


「ああ、そうでしたね。

 昨日教えてもらいましたね」


 二人で、関内にある銀行について話をしながらゆっくりと歩いて行った。

 ほとんどデート気分だ……と言っても年齢イコール彼女無の俺だったのでデートなどしたことが無かったが。


 それだけに初デートのようで、内心楽しんでいた。



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