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猫と横浜  作者: のらしろ
第一部 猫に引っかかれて明冶にまいる …

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第1話 現実逃避


 俺は探偵をしている金田一だ。


 ここまで話すと、御年配の方からは『あの名探偵とご関係があるのですか』と言われたり、少し違った角度からだと、『国語辞書にお名前がなんてあったりするのですか』などとあったが、残念ながらどちらも違う……というか、俺の名字から有名人を探すとなると、あの国鉄スワローズの大投手って、お前は昭和かよ……ってセルフ突込みを入れてみたりする。


 なんでこうなっているかというと、現在俺の脳みそはフリーズ中というか、全力で現実逃避に走っているのだ。

 なぜかというと、現在目の前に広がる景色がやばい。


 確かに俺は東京駅から東海道線で横浜に向かったのだが、先ほど車掌に起こされてホームに降りると、ここは確かに横浜なのだが、俺の知る横浜なんかじゃ絶対にない。


 何より、俺が乗ったのは東海道線の快速列車のそれもグリーン車だった。

 絶対にグリーンを使えと俺に仕事を持ってきた先輩から言われてあの二階建ての列車の一階に乗っていたのだが、どこかで寝落ちでもしていたのだろうか、途中経過は知らないが、起こされたここは先ほども言ったが、絶対に横浜なんかじゃない。


 何より、俺の乗っていた列車がグリーン車でなく一等車って客車の帯に書かれてあった。

 そう、橙とグリーンの二色でなく茶色のボディーに白帯があり、そこに黒字で『一等車』って書いてあるのだ。


 目の前にあるから間違いではない。

 それに何よりこの客車を引いていたのが、機関車だよ、そう蒸気機関車だ。

 それも、俺の知る蒸気機関車なんかじゃなくて、なんていえばいいのか、小さめの機関車なのだが、新橋駅前にある物よりも小さい感じだが、それに俺の知るC何某とか機関車には書かれていない。


 新橋駅前にある機関車だってはっきりと目立つ場所に『C-11』と書いてある板がついていた。

 鉄オタでない俺には機関車で知っているのは少なくて新橋駅前にあるC11や誰でもが知るD51などだが、すべて頭にCもしくはDの字が付いていたような気がする。


 しかし、今目の前にある機関車にはそれが無い、金属板に数字があるだけで、アルファベットが付いていない。

 ……そうだ、思い出したよ。

 これって昔明治村で乗ったことのある機関車だ。


 中学生の時だったか、遠足で出かけた明治村で乗ったあの蒸気機関車がこんな感じだったような気がする。

 あの時にも感じたのだが、CとかDとかが付いていない蒸気機関車があるんだと思ったくらいだ。


 ということは、昭和どころか明治時代に来たのか。


 明治で思い出してきたのだが、俺のいるところは確かに横浜と書いてはあるが、その駅舎が確か新橋から歩いてそばに昔の駅舎が復刻されていた建物と似ている。


 まさにあんな感じの建屋が目の前にあるのだ。

 しかも駅名に記されているのが横浜だ。

 そうそう、桜木町の駅に昔の写真が壁に描かれていたのだが、まさにそこに描かれているのと一緒だ。


 まさに俺は今明治時代に来ている……のか?


 ホームで一人ぽつんとしていても奇異な目で見られるので、俺はポケットからSuicaを取り出してって、明治の鉄道にSuicaなんか使えるか、ここはICOCAだろうって、もういい加減セルフ突込みを止めて……どうしよう。


 列車に乗っていたのだから昔使われていた切符なんか入っていないかな。

 俺はそう思い、ポケットの中を手で漁る。


 これも先輩から聞いた話なのだが、昔の鉄道、昭和の時代には偉く硬い切符が使われていたとかで、確か硬券とか言っていたかなって、いい加減昭和ネタから離れないとしつこいと言われそうだ。


 しかし、ポケットから出てきたのはおみくじ?って感じの紙だけだ。

 どうも書いてある字を読むと切符のようなので、これをもって改札に向かう。




 そのまま改札も通されたので、あれは切符だったのだろう。

 あれが切符って昭和を知る御年配の方でも分からないだろうが、とにかく改札を出ることだけは成功したが、この先どうしよう。


 無事に改札を出て、さらに進み駅舎からも出てきた。

 時間は昼を過ぎている。

 目の前には駅前ロータリーって、これをそう呼んでもいいのかと思うくらい閑散としている。


 人が全くいないのかというとそうでもなく、まばらにのんびりと歩いているのが見える。

 歩いている人の格好が、これまた江戸時代かって感じの和服……あれをそう呼んでいいのかわからないが、とにかく庶民が着ている和服としておこう。


 そんな人がいるかと思えば、それこそ学生時代に教科書で見たことのある挿絵に出てきた鹿鳴館の様子に描かれているような人も数人だが歩いているのが見えた。

 そのような着飾った洋服?の人は馬車の前で談笑している。

 馬車だよ、馬車だ。

 それも漆だろうか、艶のある何かで塗られているやたらと綺麗な馬車が数台止まっている。


 さらに駅舎の前には数台の人力車も止まっており、その先にはこれまた馬車だが、こちらの方は明らかに粗末というか、そんな感じの馬が荷車を引いて、のんびり進んでいた。


 俺はもう一度振り返り駅舎の方を見るとそこには『横濱駅』と書いてあった。

 な~んだ、俺の知る『横浜駅』じゃなかったよって違うだろう。

 やっぱりどう考えてもおかしいだろう。


 確かにそこに描かれている駅名には『横浜駅』とでは無く『横濱駅』とあった。

 ふつうJRの駅名表示には漢字の下にローマ字表記もあるが、それも無い。

 俺の頭がおかしくなければ、どう考えてもここは令和時代の日本ではない。


 普通じゃないから、もっと柔軟に考えるとやはりあれか、俺はあまり読んだことが無かったが最近はやりのライトノベルとかで言うタイムスリップとかいうやつか。


 俺だけが明治時代にタイムスリップしたとか。

 あ、いかん。

 また、俺の脳は現実の受け入れ意を拒否し始めた。


 俺の尊敬するフィリップ・マーロウならばこんな場合、どう考えるのか。

 そう考えていくと、気持ちも落ち着いてきた。


 そういえば、俺は先輩から仕事を依頼されて横浜で人に会うことになっていたのだ。


 さすがに明治時代ではないが、それでも赤レンガ前で落ち合うことになっていたはずで、この先どうなるかは皆目見当もつかないけど何か進展?でもあればと考え、とりあえず赤レンガ倉庫前にでも行ってみよう。


 横浜からタクシーを使えと指示もあったが、明治時代の『横濱駅』は現在の桜木町駅のあたりにあったと聞いている。

 だから、桜木町駅の構内に、開業当時の写真が描かれていたのだ。


 ここが、その桜木町駅改め明治の横濱駅ならば、俺がこれから向かう予定となっていた赤レンガ倉庫まではすぐそばだ。


 なので、気持ちを切り替えて、俺は歩いて赤レンガ倉庫の方角に向かって歩き出す。

 と言っても目の前にはすぐに海が見えるが、桜木町の駅から海までこんなに近かったっけか。


 俺は、どうにも違和感しかないが海沿いに歩けば何かわかるかもと考えて海に向かって歩き出した。

 すぐに波止場が見えてきた。


 大桟橋があるはずは無いが、船も止まっているので桟橋だろうが、そのそばに目的の赤レンガ倉庫が……無さそうだな。

 というか、波止場の周りにある倉庫はほとんどが赤レンガで作られたものか、木造の蔵のようなものしかないようで、あの観光スポットで有名な赤レンガ倉庫は無かった。


 ひょっとして明治には無かったのか、あの赤レンガ倉庫って。

 赤レンガで作られた倉庫はそれこそいたるところにありそうなのだが、俺は立ち止まりあたりを見渡すと、場違いな感じで立派なホテルが見えてきた。


 あれって横浜で有名な老舗ホテルか。

 よくは知らないが、とりあえず目の前にホテルが見えたので、ホテルに向かう。


 とにかく今は落ち着いて考えたいので、ホテルにでも入ってゆっくりしたい。

 幸いなことに、俺はかなり割の良い仕事を立て続けに受けていたので懐が温かい。

 いくら飲食品全てがホテル料金だと言っても、今の俺には払えない金額ではない。


 それに、このような時に俺がいつも利用する定番のス●バどころかド●ールすらない。


 まだ、ここが明治時代の横浜と決まったわけではないが、とりあえず明治時代として考えると、そんな店などあるはずがないのは当たり前どころか、下手をすると喫茶店すらないのだろう。


 とにかく落ち着いて考えたかった俺は、目の前の洋風ホテルに向かった。


 しかし、良かったよ。

 俺は先輩からもらった仕事途中だったこともあり、今は珍しくスーツ姿であったので、この時代でも有数の高級ホテルでも入れそうなだ。


 いつもの格好だと、下手をするとドレスコードで引っかかり、入り口でお断りされるかもしれなかった。


 ドレスコードだけは問題ない……あ、お金。

 懐があったかいと言ってもそれは令和時代のお金だ。

 クレジットカードも持っているが、そんなのは使えない。


 そう考えて俺は慌ててホテルに入る前にポケットの中を漁ってみたら小銭入れに使っているきんちゃく袋がすぐに見つかる。


 これは百均で買ったやつで、確か東京駅で缶コーヒーを買った時のおつりが百数十円しか入っていないやつのはずがやたらとぶ厚く重い。


 コイン数枚のはずなのだが、紙幣のようなものがたくさん入っている。

 そのうち一枚を取り出すとそこには『壱圓』と書かれてある。


 どうもこの時代のお金のようなので、安心してホテルの中に入っていった。

 入り口でドアマンに少し休みたいのでロビーで何か飲めるかと尋ねると、ロビー横のラウンジに案内してくれた。


 そこの座り、メイド?のような人が来たので、コーヒーを頼もうかと思ったのだが、この時代にコーヒーなんか飲めたのか心配になり、俺は紅茶を頼んでラウンジで休ませてもらった。

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