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【第3話】初めての魔物

読んでいただきありがとうございます。

 レオはギルとともに森へ向かって歩き出した。

 村の外へ出るのは、これが生まれて初めてだ。


 胸の奥では、誰かを助けに行くという“期待”が微かに芽を出している。

 けれど同時に、知らない世界へ踏み込む“恐怖”も確かにあった。


 その相反する気持ちを抱えながら、レオは一歩、また一歩と森に近づいていく。


 村を出てから十数分ほど歩いたころ、ふたりは森の入口へ辿り着いた。

 そこは昼間でも薄暗く、レオは思わず喉が鳴るのを感じる。


「レオ、この先には魔物がいる。戦うのは全部俺がやる。お前は――少年を守ることだけ考えろ」


 ギルの声はいつも通り穏やかだった。

 レオは小さく頷き、深く息を吸う。


 森の中を少し進むと、落ち葉の上に“片方だけの靴”が転がっているのが目に入った。

 ギルはそれを拾い、鋭い視線を周囲へ走らせる。


「……気配はないか。なら――」


 掲げた靴に手を当て、彼は小さく呟いた。


「《サーチ》」


 次の瞬間、靴が淡く光った。

 透明な糸のような魔力が、森の奥へ伸びていく。


(これが……魔法……)


 知識としては知っていた。

 だが実物は、息を吞むほど美しくて、恐ろしくて――胸の奥が熱くなる。


「こっちだ」


 ギルは迷いのない足取りで光の糸を辿り、レオは急いでその背中を追った。


 ――そして。


 太い木の根元にある空洞で、小さく震える影を見つけた。

 少年は泥だらけで、泣く力すら残っていないようだった。


「もう大丈夫だ。助けに来たぞ」


 その言葉を聞いた瞬間、少年は堰を切ったように泣き出した。


 しかし――安心も束の間。


 森の奥から低い唸り声が響いた。

 気づけば、三人を囲むように影が現れている。


「フォレストウルフか……」

 ギルが剣に手をかける。

「レオ、少年のそばを離れるな」


 レオは返事をしようとするが、喉が震え、声にならない。

 目の前の魔物は絵本とは違い、生々しく、鋭い牙を剥き、赤い目が闇に光っている。


 だが――ギルは一歩前へ踏み込んだ。


「《ウィンドカッター》」


 空気が裂け、風の刃が駆け抜ける。

 フォレストウルフの首が一瞬で飛んだ。


 残りの二体が飛びかかる。

 ギルはため息でもつくような速度で詠唱し、二つの風刃が交差した。


 敵は悲鳴ひとつ上げられずに倒れ込んだ。


 ほんの数秒の出来事だった。


「……すごい」


 レオは思わず呟き、胸を押さえた。

 恐怖で鳴っていた心臓は――今、違う理由で激しく鼓動している。


 初めて見た魔物。

 初めて目の前で見た本物の戦い。

 そして、ギルの圧倒的な強さ。


 怖いはずなのに、それ以上に――胸が熱い。


(僕も……強くなりたい。ギルさんみたいに……)


 魔物を倒し終えたギルは剣を収め、レオの方へ振り返った。

 その瞳を見て、ギルは小さく笑う。


 レオの目には、もう怯えだけではない光が宿っていた。


 少年を保護し、森を出る。

 道中、レオの心臓はずっと高鳴り続けていた。


 森を抜ける頃には、空は茜色からゆっくり群青へ変わっていった。


 村へ戻ると、少年の母親が泣き崩れながら彼を抱きしめた。

 その光景に、レオの胸がじんわりと温かくなる。


 すべてが終わり、ギルとレオは家へ帰った。


「ただいま……」


 どこか誇らしげな声。

 わずかに自信の色を帯びたレオの表情に、セレナはふわりと微笑んだ。


「おかえり、レオ」


 その一言は、今日一日の冒険を優しく包み込んだ。

初めての執筆なので誤字、脱字は大目に見てください。


感想を書いていただけると非常にうれしいです。

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