8話
「あっ、それちょっと“待った”だマスター」
「待った無しだと言っといたのである! だいたい主は……」
重いドアを開けた所に広がっていた光景は……ある意味でしごく真っ当で、そして完全に予想外の光景だった。
内装はまさにオーセンティックバーそのもの。薄暗いが不安になるほどでは無い間接照明。何の樹木かまでは分からないが……相当な大木から荒く削り出されたカウンタテーブル。その背後には適度に綺羅びやかな酒棚……
だが、その間に立つマスタらしき人物は……何故か客らしき男と将棋盤を挟んで激しく言い争いをしていた。
客が入って来た事にも気付かずに言い争う二人に、俺は回れ右をして帰ろうか……と思ったそのタイミングで、
「何処にでも好きな所に座ると良いのである」
こちらを見もせずに……
前髪だけをパッツリと切り揃えた艷やかな黒髪に……黒いベストを羽織った女性(?)が声を掛けてきた。
「ほら、お客様であるぞ。主なら店の売り上げを邪魔する様な真似は控えるのである」
「このクソ女が……テメーとは二度と盤上遊戯はやらねぇ!」
「そう言ったのはいったい何度目であったか……だいたい殆どの盤上遊戯は神を降ろした一部の人間が世に広めたモノである。人たる主が小生にかなうはずが……」
また俺をそっちのけで言い争いを始めるマスターと……会話からするとこの店のオーナー?
他人ごとだが……この店大丈夫か?




