52話
「……いらっしゃいませ」
彼の葬儀から一週間後……
私は彼の遺言通り〔 bAR dANTE 〕を訪れた。
物々しい扉を開けると、カウンターにはグラスを磨くマスターが一人。そして奥の席には……
(彼の言った通りか……)
私には些か高めのスツールが並ぶ通路を奥へと進む。
「……こちらよろしいかな?」
「……どうぞ」
不健康な顔色の青年が座る席の隣へ腰掛ける。
「ご注文は?」
「……年齢確認はいいのかね?」
私の自認はさておき……客観的に私がどう見られるかは自覚している。こういうアルコールを提供する店なら尚更だ。
「そのような無粋……お客様には無用かと」
……なるほど変わった店だ。とはいえ求められてもいないのにIDを提示するのもおかしいし、実際成人している私にアルコールを提供しても彼らを咎める訳にはいかない。
「……スーパードライ。キンキンに冷え奴」
「かしこまりました」
カウンタの内側に冷蔵庫があるのだろうか……
マスターはワインクーラーへクラッシュドアイス満たし、大胆に塩を放り込みざっくりとかき混ぜ……そこへ冷蔵庫から取り出した小瓶のスーパードライを差し込むと、そのまま私の前へサーブ。
最後の仕上げに……凍らせたグラスとピカピカに磨き上げられた栓抜きがワインクーラーの横に添えられた。
「開栓はお好みのタイミングで……」
正直、こんな風に提供されるとは思わなかった。
「クククッ」
少しばかり驚いた顔をしていた私の隣……例の青年が苦笑していた。
「……いい趣味してるな二課長さん」
どうやら……店を間違った訳ではないらしい。




