イントロダクション “呪われた祝福” ④
「……何を?」
俺は半ば男の言う事を予感しながら問う。
「あんたも薄々気づいてんだろ」
「まさか……そのスキルってのを?」
(……コイツ、マジでおかしいのか?)
俺は男の語る内容が、いよいよ酔漢の与太話から、狂人の域に片足を突っ込みはじめた事を悟った。
(だめだ、これ以上は相手にしないほうがいい)
「そ……そうか、続きは気になるが俺はそろそろ行かないと……」
「そう、慌てるなよ。まだグラスの中身は残っているじゃないか」
反射的にカウンターのグラスに目を向けた……
「!?」
俺は息を呑んだ。
そこには……たった今サーブされたとしか思えないビールが、グラスを薄く結露させてコースターの上に鎮座している!?
「……な……」
何度も目を瞬かせ、恐る恐るグラスに触れる……持ち上げた瞬間、黄金の液体を飾る豊かな泡が震えた。
俺は、確かな存在感を手の中で主張するグラスをそっとコースターの上に戻し……既にそちらに視線を向けること自体に忌避感を感じながら……男へと視線を戻した。
「まあ、慌てるなよ。……話の続きも長くかかりはしないさ。さて……ここまでは昔の俺の話、ここからは今の俺の話だ。端的に言うと、俺の持つスキルには欠陥があったのさ。それも……致命的なヤツが……な」