35話
「おい! もしやワシが突き落としたとでも言いたいのか?!」
部長がダミ声で喚きながら俺を睨むが……俺と自称勇者は部長の事を完全に無視した。他の二人は……
専務は表情を白黒させながら、副頭取は痛みに顔をゆがめながら……と、その表情はまったく違うが、二人とも無言で俺を見ている。
「それで、アンタは何を見たんだ?」
異世界帰りを主張する自称勇者が俺に話の続きを促した。相変わらず不健康な顔色だが、その目に名状しがたい色が浮かんでいる様に見えるのは……俺の気の所為か?
「報酬を受け取った後、店を出た俺の目の前に……彼女が落ちてきたんだ。もちろん最初は落ちてきたのが彼女だなんて分からなかった。とにかくあわててそばに駆け寄って……」
俺はあの時の事を思い出しながら慎重に言葉を絞り出した。
「彼女は仰向けに支店の前の歩道に倒れていて……俺はそばに駆け寄って彼女の手首を取った。……落ちた直後だがその時にはもう……俺は……反射的に屋上を見た。そこには……歩道を見下ろす人影が居た。タイミング的に下の騒ぎを知って屋上に上がったとは思えない……少なくとも……あの人影は彼女が屋上から落ちた時に一緒に屋上に居たはずだ!」




