29話
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「で……誰をぶっ殺して欲しいんだ?」
- ぶっ?! -
男の言葉に思わず噴き出しちまった。
含んだ量が僅かだったおかげでカウンタを汚さずには済んだが……
だいたいサービスカクテルのアルコール濃度が高すぎるぞ。
「ちょっと待て。なんでそんな話になる?」
オレは店に入ってから今まで……この店のオーナーらしき男やマスターに世間話一つしちゃいない。
「気にするな。うちの猫に釣られて来る客は、たいてい酒じゃ無くてオレの客だ。おっと、名刺は無いぜ。必要なヤツが多すぎるんで配るのはやめちまったんだ」
俺は改めて一番奥のカウンタ席に座る男を見た。
眼の下には濃いクマ、肌の色は白人並に白いが、それは色白というより病的なものを連想させる。
濃いネイビーのシャツとスラックスにグレーのジャケットを羽織りタイはしていない……
(……シルエットからして武器は携行してない)
体格も細身だし、万が一暴れられても取り押さえる事は容易だろう。カウンタ内のマスターが厄介だが一足飛びにカウンタの外へは来れない。
「なんだあんた。物騒な物言いだが……もしかして自分が殺し屋だとでも言いたいのか?」




