27話
男が……ワシの言葉に豆鉄砲を食らった様な顔をする。
「……すげぇなあんた。あれだけ鮮明な証拠映像を見てそんなセリフが吐けるとは」
「ふん! あの映像が何なのか知らんが……ワシがいつ我が行の行員の事を話していたというんだ? 」
男はワシの顔を見て押し黙った。その表情は既に驚きから呆れへと変わっていたが……そんな事はワシの知った事では無い。
「なるほどなるほど……ククッ、あんたはあの映像での言動が死んだ栞さんの事を指していたもんじゃないと? そう言いたいわけだ?」
ワシも裏社会の人間との付き合いはそれなりに長い。会話に用心するくらいの事は当然している。
「もちろんだ! いったい君は何を勘違いしているのかね?」
言い訳としては苦しい事は百も承知だ。だが、理屈はかろうじて通っている……筈だ。
「いや……本当にすごいな。俺も悪党は色々と見て来たが、あんたほど往生際が悪いヤツは初めてだよ。とはいえ……理解力が足りて無いって点では横に並んでいる奴等と大差ないな?」
- ドンッ -
「うおっ?!」
重い音と衝撃、同時に、ワシの座る椅子が乱暴に奈落へのマス目をすすんだ?!
あわてて背後を確認する。
そこには……ワシの椅子を蹴りつけた足を引き、バーベストの首元から乱暴に蝶ネクタイを外すマスターが立っていた。




