26話
隣に座る専務の椅子がまた一つ進んだ。今はまだ屋上の端まで距離があるが……
(クソッ! あんな奴等の為に地面のシミになってたまるか!)
手首と足首に食い込む縄の痛みに耐えながら必死に思考を巡らせる。がっちりと結ばれた拘束を解く事は今の所現実的じゃない。
- ゴクッ -
向かいのビルの惨状や(どうやったのかはよく見えなかったが)なんの躊躇もなく副頭取の耳が落とされた事を見るに、この男は拷問じみた行動にも躊躇がない。
(クソッ、あんな綺麗事ばかり吐く小娘一人の為に……今までのワシの苦労を無駄にされてたまるか! 孤児だったワシがここまで上がる為にどれだけ苦労したと……)
「そんな下らない事を考えてるなんて……余裕だな部長さん」
「ひっ?!」
隣の専務と話していた筈の男が……いつの間にか俺の背後に!
「どうもアイツらは事の責任は全てあんたに有ると言いたいらしいぜ? 俺の依頼主にしても強硬な手段をとったあんたの責任は重いと考えてるみたいだが……どうだい?」
背後から耳元に囁く男の言葉に、分かっていても怒りがこみ上げる。
「……そんな口車に乗るとでも思うか?」
奴等が部下の事を“使い捨ての道具”だと思っている事など百も承知だ。ワシとクズの頭との証拠と取られかねない会話が録画されていることも分かっている。
だが……
「何を言っている! あの会話がいったい何の証拠になるというのかね?」




