23話
副頭取の真横に座らされていた俺は確かに見た。いや、見たというのは語弊がある。
正確にはなんの前触れもなく耳が落ちたのを見せられた。
(あり得ない!!)
最初にバーに迷い込んだ時、飲み干したはずのビールが、いつの間にか注ぎたてのグラスに変わっていた。
あの時に感じた忌避感と焦燥感を併せたような感情。
それが何なのか……今は分かる。
その俺達の前に……男の手伝いをしているバーのマスターが、改めてカメラをセットした。
「あー……そこの大物ぶった副頭取が見つけたコレな、オレは別に無くても構わないんだが……状況を客観的に記録して欲しいという希望が……まあいいさ。どっちにしろお前らの残り時間には関係ないしな」
同時に……マスターが不気味なほど無表情で俺達全員の椅子を一つずつ進めた。
俺はさっきから湧き上がる感情を認めざるを得なかった。
半グレどもの惨殺死体を見せられても、軽薄に自らの死までの距離を突きつけられても……
ぼんやりとしか感じられなかったその感情が、世界の理から外れた現象を見せられた事で最大限に弾けた。
これは恐怖だ。




