21話
(……いや、ありえない)
男の合いの手に瞬間動揺したが、それはやはりあり得ない。だいたいフィクションならいざ知らずそんな奇天烈な能力があるなら、こんな回りくどい事をする必要性が……
そうか!
必要性……そうだ。
状況から逆算すれば自明だった。
(どれほど奇天烈な状況だろうと……あの不健康そうな男にとっては、この状況が必要だからこそわざわざ手間暇を掛けて我々を拉致したはず……)
そこまで考えが及んだ瞬間、奇妙な状況に呑まれそうになっていた思考を振り払い、周りに視線を走らせる。
周囲の状況は最低限の照明だけで薄暗い。が、
「なるほど。分かったよ」
「ん? どうした? やっと赦しを乞う気になったか?」
男の声音は変わらず陰気だった。が、その言葉に焦りが滲んでいる様に感じたのは……気の所為では無いはずだ。
「いや……改めて言おう。そこに並んで居る思慮の足りん奴らが何と言おうと……私は何も知らない」
「はぁ?」
男は呆れた様に声をあげたが……
思えば……奴が見せた証拠は、半グレと部下の会合を隠し撮りしたものだけ。
アングルや画質の鮮明さからの推測だが……あれは、おそらく半グレども自身が保険の為に隠し撮りしたものだ。
なら……
「やっと君の望みが分かったよ。さんざん証拠を握っていると匂わせていたが……そんなに私達の自白が欲しかったのかね?」
「……おいおい。本当にそんな……」
「おそらく……あそこに並んでいる生首も偽物か、トリックなのだろう?それに」
「それに?」
男に動揺する様子は無い……が不自然にある方向から視線を逸らしている。
「そうでなければ、そこにセットされているカメラに説明がつかないじゃないか?」




