20話
「なんとでも好きに呼べばいいさ。答えるとは限らんがな」
得体の知れない男の返答は素っ気ない。
思えばおかしな事だらけだ。
この場に拉致されたことは間違いない。だが、その過程がすっぽりと抜け落ちている。
私は頭取を交えた臨時取締役会が終わったあと、迎えの車に乗り込みまっすぐ自宅に向かったはずだ。
迎えの車を運転していたのは長年専属で勤めている運転手だったし、走り出してからも何かがあった記憶はない。
だが、その後の記憶かぷっつりと途切れ……気がつけばこの場に居た。
まるで気付かないうちに私という機械のスイッチを切り……この場に座らせたあとに入れ直したかの様だ。
「ならば是非もないな。君は懺悔と言うが、いったい私達に……いや私に何を言わせたいのかね?」
男は……面倒臭そうな表情をして私の方を見た。
「おいおい……この場に招待した時点で証拠は押さえてあると言ったろ。何度も言わせるなよ」
「私も言ったはずだ。君が我が社の行員とどのような関係にあったかは知らんが……さっさと復讐とやらを完遂したまえ」
これまでのやりとりからすれば……この男、復讐だなんだと言っているが、本当に事の次第を把握しているとは思えない。
そして……少なくとも私は下の者達に直接的な手段を具体的に指示したりはしていない。
「だからって罪が無いとは言わせないぜ」
………?!
バカな?! 私は口に出してなど!?!
「あんたは言質を取られるような指示を出してないのかも知れないがな……自分の思わせぶりな言動の……その結果がどうなるかをまったく想像してなかったわけじゃねぇだろ?」
バカな?! 心理状態の洞察ならいざ知らず……思考が読めるとでもいうのか?!




