イントロダクション “呪われた祝福” 11
「ああ……今夜はどうも調子が良くないみたいだ。あんたの話はなかなか面白かったよ」
俺は編集長から言われた言葉を頭から追い払いながらスツールから降りた。
「チェックを……」
ドアに向ってマスターに声を掛け……
………
どうしたんだ……
身体が揺れ……
視界が……
「だから……慌てるなって言ったろう?」
▽▽▽▽▽▽
「何をお望みで?」
性別不詳のマスターが……注文を取るにはおかしな言い回しで俺に熱い手拭きを寄越した。
「……天罰を」
何でそんな言葉が口をついたのか……入り口を潜った時の事を引きずっているのか?
「ククッ……天から堕ちた奴に無茶振りするぜ」
オーナー(?)らしき男が何か呟いたが……俺には良く聞こえなかった。
「……天罰は無理ですね。うちで出せるのは……」
マスターが手際よくグラスに氷を詰め込む。そこに酒棚から手に取ったスピリタスを注ぎ、軽くステアしたあと……櫛切りにしたライムを縁に一周させたグラスが俺の前に出された。
「当店オリジナル“ルシファーズハンマー”でございます」
どうでも良いが……さっきの口調とは全然違うな!
と思っていたら、またオーナーが何かを呟いて……
「それ……“スレッジハンマー”のパクリじゃねぇか……」
……本当に大丈夫なのかこの店は?
“スレッジハンマー”はウォッカとライムジュースを5:1でシェイクして作る強いカクテルです。マスターのレシピはウォッカにアルコール度数95%のスピリタスを使い、シェイクせずにライムを絞るだけ……というほぼアルコールにライムの香りを付けただけというものです(笑)
ちなみに……名前の“ルシファーズハンマー”は往年のハーレーのワークスチームがアメリカで走らせていた伝説のバイクですが……多分皆さんにはハードラックとダンスッちまった作品の方がおなじみでしょう(笑)